【バイヤーのコラム】忙しいときにこそ読みたい、肩の力が抜ける本。
バイヤー 郡
▲野菜に味がしみるのを待ちながら。
秋の夜長は、まったりと読書をして過ごしたいものですよね。
読書は好きな方なのですが、ここ最近、日々の慌ただしさにかまけて「活字」から遠ざかっていたような気がします。
考え事があれこれ泉のように湧き出て頭の中が満水状態のときは、どうしても活字を追う余裕がなくなってしまうのです。そして、そんな自分のキャパシティの少なさをいつも情けなく思っていました。
行き詰まったときにこそ、読みたい一冊。
ある日の夜、考え事が煮詰まりすぎて思考が停止してしまった時のこと。
ふと「何か読みたいな」と思い、本棚から手に取ったのが、石田千さんの「役立たず、」というエッセイ集でした。
石田さんの、どこか古風で下町の雰囲気漂う語り口と、日常や自分自身を淡々と捉えるフラットな視点が大好きです。石田さんの作品は他にも沢山読みましたが、その中でもこの「役立たず、」が特にお気に入り。
この本の中でも特に好きな「レバニラ炒めとタラ入りスープ」のページを開き、何も考えずに読んでみました。石田さんの気持ちの良い飲みっぷりと、どこまでも「男前」な考え方に改めて心を掴まれ、頭の中の鬱々とした霧がサーッと晴れたような気分に。「役に立つことばかりが全てじゃないよ。まぁお酒でも飲もうよ。」と優しく肩を叩いてくれたような気がしました。
煮詰まったおみそ汁にお湯を足すように。考え事が行き詰まったときは、何も考えず、何かを受け入れてみることも大切なのだと思いました。「忙しい」「いっぱいいっぱい」と感じている時こそ、一旦立ち止まって、好きな本を開いてみる。好きな人の文章なら、意外とすんなり入り込めるものです。私には石田さんのゆるりとした文章がちょうどよく、凝り固まった頭をほぐしてくれたのでした。
プチ現実逃避がしたい時に…
もう一冊、私の好きな本を紹介させてください。檀一雄氏の料理指南書、「檀流クッキング」です。
目次を開くと、季節ごとに国際色豊かな料理名がずらっと並び、本編に入る前からお腹が空いてきます。この本を読むと、食欲と料理欲が刺激され、とにかくキッチンへ走り出したくなるのです。
私もこの本を読んで、「クラムチャウダー」や、「鶏のタゴス」などに挑戦してみました。いわゆる「レシピ本」ではないので調味料などの分量はとってもアバウトですが、そのざっくりとした男の料理を無性に作ってみたくなるのです。また、独特の語り口がクセになり、読むだけでも楽しめます。
ついつい考えすぎてしまう私の頭のスイッチを切り替えてくれる、頼もしい一冊です。
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