【スタッフコラム】これだから買い物はやめられない。
商品プランナー 斉木
その日わたしは、駅から少し離れた古着屋に行って、目覚めたまま夢を見ているような、美しいワンピースを買いました。
素材は、多分シフォンで、ちょっとでも何かに引っ掛けたら、すぐに裂けてしまいそう。一枚では絶対に着られない、インナーを念入りに考えないといけない透け感。丈は、身長164cmのわたしが着ても、地面を擦ってしまうくらい。
それはつまり、実用にまったく向かないワンピースです。
でも、淡いアイボリーが裾にかけてブルーに変わっていくグラデーションとか、幽玄な花模様とか、何度も言いますが、夢みたいに美しいんです。ならばわたしは、どうにかしてこの服を現実の世界に溶け込ませてみせる。そんな勇ましい気持ちをくれる一枚でした。
そもそもの買い物のきっかけは、天気です。
今年の梅雨には、本当にまいりました。今日も明日も明後日も、もうこのまま一生夏なんてこないんじゃないか。何事も極端に捉えすぎるきらいのあるわたしは、うらめしく窓の外を眺めながら、鬱屈とするばかり。
洗濯とか、水回りの掃除とか、やらないといけないことが頭を占拠して、でもそのどれもに手をつける気力がない。何があったわけでもないけれど、ここ数日家族との仲もいまいち噛み合っていないような気がする。空気が悪い。でも、窓は開けられない、雨が降りそうだから。螺旋階段のように、グルグルと思考が下降していきます。
そんな気持ちを断ち切りたくて、街に出ました。目的地は、できるだけカラフルな場所。
行きたいお店や気になるイベントに脳内で検索をかけて、はじき出されたのが、件の古着屋さんでした。
オーナーの女性は、数ヶ月に1度海外に買い付けに行き、土産話をたっぷり携えて帰国する。ハンガーラックに所狭しとかけられるそれらの洋服は、ジャンルもテイストも様々で、さながら子どものおもちゃ箱みたいなんです。
オーナーの方のコーディネートや、ディスプレイ、どれをとってもとびきり自由で、斬新で、何より楽しそうで!
洋服が好き、自分のお店が好き、通ってくれるお客さんが好き、そんな気持ちで空間が満たされているように感じました。この場所の空気を、うちにも持って帰りたい。ワンピースを買ったのは、もちろん欲しかったからもあるけれど、そんな気持ちもあったのです。
思えば、わたしは元気がないときほど買い物に行きます。密かに憧れている古道具屋の店主さんを棚の陰からこっそり観察したり、競うようにオシャレを楽しんでいるティーンエイジャーばかりの路地裏に足を踏み入れてみたり。
引っ込み思案なので、その中の誰とも直接言葉を交わすことはありません。でも、今日も好きなもので埋め尽くされたお店が開いていて、その場所を守っている店主やお客さんがいるということ、足を運べば自分だってそこに行けるという事実に、なんだかホッとするんです。
何も買わなくても、その場にいるだけで身体があったまってくる。そしてたまに、理屈では到底説明できないような衝動買いをする。
これだから、お買い物ってやめられません。
「今夜はシンクを磨かなくちゃ」。どこまでも非現実的なワンピースを買った帰り道、どこまでも地に足のついたTO DOリストを反芻している自分を滑稽に感じながら、おそらくこの7月最大であろう元気がみなぎってくるのを感じていました。
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