【親子で取りくむ収納】第1話:自分や家族の心身が最優先。たどり着いたのは「無理をしない収納」
ライター 嶌陽子
気づくと、子どものものが散らかってしまう
「おもちゃを片づけて〜」「出しっ放しにしないの!」
毎日のように子どもにかけている言葉です。子ども自身も「あれはどこ?」とよく探しものをしている日々……。
春から小学校入学を控え、管理するものの量はさらに増えそうです。子どもも親も無理なく、ラクに過ごせる整理収納の方法が知りたい!との思いは日に日に増すばかり。
そこで今回、整理収納アドバイザーの水谷妙子(みずたに・たえこ)さんに、そんな悩みをぶつけてみることに。
小2の長女、5歳の長男、3歳の次男の母親である水谷さん。取材してみたいと思ったきっかけは、とある雑誌で水谷さん宅の収納を紹介しているのを読んだことでした。
「マスキングテープにペンで手書きしてラベリング」といった気張らない収納法になんだかほっとしたのと、「収納に子どもの意見やアイデアをできるだけ生かす」という話に興味を持ったのです。
以前は大の片づけ下手だったという水谷さん。取材時に聞いたお話は単なる収納術にとどまらず、子どもや暮らしとの向き合い方についても考えさせられるものでした。
第1話は、水谷さんが整理収納のプロになる以前のことや、その過程で感じたことなどを聞きました。
産後の経験から心に決めた「大事なのは自分の心身を守ること」
もともとは片づけが大の苦手だったという水谷さん。結婚してからは仕事をしながら「家事も自分がやらなければ」と一人で家のことを背負い込み、整理収納や片づけのことまで気が回らなかったといいます。
水谷さん:
「長女を出産後、産後ノイローゼ気味になってしまって。それを見た夫が家事育児を一人で抱え込まなくていいと言ってくれた。その言葉ですごくラクになりました。
自分の心身を守ることが一番大事で、そのためには家事を手放してもいいんだと気づきました。この考えは、今も変わっていません」
いつも自分に問いかける、「無理なく暮らしに取り入れられる?」
2番目の子が生まれてから少し余裕ができ、ようやく散らかった部屋に目が向くようになったという水谷さん。勇気を出して片づけのプロに依頼して、まずはものの量を減らしました。
水谷さん:
「その時に思ったんです。今まではテレビや雑誌で見た “こうあるべき” というイメージにとらわれ過ぎていたなって。
たとえば缶詰などの食品ストック。ふつうの家だったらこれくらいあるかなと思う量を揃えていたけれど、気づくと賞味期限を切らして捨てていて、そんな自分がすごく嫌だった。要するに私のライフスタイルに合っておらず、自分の管理能力を超える量だったんですよね。
それ以来、自分が本当にそれをしたいか、得意かどうか、無理なくできるか、一つひとつについて真剣に考えるようになりました。
水谷さん:
「整理収納も同じだと思うんです。雑誌やSNSで見る収納術は美しく整ったものが多いですが、大事なのは自分の暮らしに無理なく取り入れられるかどうかということ。
理想が高すぎると苦しいし実現できない。いろいろ試しながら、少しずつ自分や家族にとって心地よい収納を作っていけばいいのではないでしょうか」
肩の荷が下りるような言葉をくれた水谷さん。その言葉には、失敗を含めさまざまな経験をしてきたからこその説得力がありました。
次回から3回にわたり、おもちゃ、衣類、学用品の整理収納に関するノウハウを聞いていきます。
【写真】大森忠明
もくじ
水谷 妙子
整理収納アドバイザー。夫、8歳の娘、5歳と3歳の息子の5人暮らし。無印良品で生活雑貨の商品企画・デザインを13年間務める。手がけた商品は500点超、調べた他社商品は5000 点超。2018 年に起業し、雑誌やテレビなどで活躍中。著書に「水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び」(主婦の友社)など。WEBサイト:「ものとかぞく」http://taekomizutani.com/ Instagram:@monotokazoku
ライター 嶌陽子
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『天然生活』『クロワッサン』『日経ウーマン』など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
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