【夏の大掃除レッスン】第3話:今日から覚えたい!キッチンの油汚れには「キッチンペーパー湿布」

ライター 大野麻里

家事・住宅・掃除アドバイザーの藤原千秋(ふじわら・ちあき)さんに監修していただきながら、夏にしたい大掃除のコツをお届けしています。

全4話の、夏の大掃除レッスン。第3話はキッチン編(前編)です。

大掃除を年末にするのではなく、汚れが落としやすい夏にしてしまおうという今回の特集。とりわけ油汚れの多いキッチンは、気温や水温の高い夏に掃除する方が、するりと汚れが落ちるようです。

「水を使った掃除は、暖かい季節に行いましょう!」と話すのは、藤原さん。

夏ならば水しごとをしても手が冷たくならず、水道から出る水もぬるま湯状態なので経済的。たとえエアコンを効かせた部屋で掃除したとしても、室温は25〜28度あるのです。0度近くまで気温が下がる冬と比べたら、どちらが大掃除に向いているかは一目瞭然ですね。

第3話では、シンクやコンロ周りを中心に、キッチンの大掃除の方法を紹介します。

 

たっぷりの泡がポイント。シンクは食器用中性洗剤で丸洗い

藤原さん:
「じつはシンクは汚れがややこしいエリア。食器の油汚れ、野菜についていた泥、魚や肉から出るタンパク質系の汚れ……。複合的な汚れが出やすく、細菌がそれらの汚れと水を餌にして、カビの繁殖につながります。飛び散った洗剤さえも、細菌の餌になってしまうんです」

つまり油汚れに強いアルカリ性洗剤だけでは落としきれず、タンパク質系の汚れを分解するためには強酸性、水アカには酸性……と、洗剤を目的に応じて使い分ける必要があるというのです。

そんな複雑な汚れをまとめて撃退するのに藤原さんがおすすめするのは、意外にも食器用中性洗剤。ふだんから使っている食器用洗剤をスポンジにつけて泡を立てるようにシンク全体を丸洗いしたあと、水ですすがず、放置しておけばいいそうです。

藤原さん:
「シンクの中は水が流れるように傾斜がかかっているので、泡は自重でどんどん排水口の方へ流れます。泡が汚れを押し流して、シンクがきれいになりますよ。この方法は、日常的に夜寝る前にするのもおすすめです」

ぬめりがつきやすい排水口周りは、バスケットやフタなどを外してビニール袋の中に。キッチン用の塩素系漂白剤(泡タイプ)を吹きつけて、20分ほど放置してからすすぎます。この方法なら、うっかり水で流してしまうこともありません。

※塩素系漂白剤とクエン酸を同時に使うと、有毒ガスが出て大変危険です。キッチンで塩素系漂白剤を使う掃除をしたら、しっかり成分をすすぎ流して、1週間以上あけてからクエン酸を使うようにしましょう。

 

水栓金具の水アカはクエン酸ですっきり

水道水に含まれるカルシウムなどのミネラル分が蓄積してできた汚れ、いわゆる「水アカ」にはクエン酸スプレーが効果的。酸性のクエン酸にはカルシウムを溶かす働きがあるからです。

スプレーボトルに水を入れ、クエン酸を溶かすだけ。水100mlに対してクエン酸小さじ1の割合でつくります。

▲水栓金具の付け根は汚れがたまりやすい場所。濡れたままの手で触ることも多く、手アカや水アカ、雑菌などがつきやすい

中性洗剤で洗っても落としきれなかった汚れは、水アカが固まって「石化」した証拠。ここにクエン酸水をたっぷりシュッシュとスプレーして、汚れをゆるめてから歯ブラシなどでこするとよく落ちます。

最後にしっかり水ですすぎ流し、やわらかい乾いたウエスでゴシゴシと磨くように拭き上げます。水気を完全に拭きとれば、輝くようなピカピカな仕上がりに。水栓金具が輝いていると、キッチン全体がパッと明るくなる感じがしました。

 

コンロの油汚れは
キッチンペーパーで「湿布作戦」!

毎日料理をすると、あっという間に汚れてしまうコンロ周り。

「掃除をしても翌日また汚れてしまう場所だから、完ぺきにピカピカにしようと気負わない方がいいですよ」と、藤原さん。汚れをためると大掃除のときに大がかりになるので、日ごろからほどほどにきれいな状態をキープしておくのがいいそうです。

藤原さんに教えていただいたのは、キッチンペーパーに洗剤を含ませて湿布のように貼りつける方法。

ボウルに800mlの水をはり、小さじ1/2の食器用中性洗剤を入れて浸し液をつくります(泡立たない程度でOK)。1枚ずつ切り離したキッチンペーパーを10枚ほど入れて、液に浸します。

軽く絞ったキッチンペーパーを、コンロやコンロ周辺の天板や壁などに貼りつけていきます。汚れがこびりつきやすいバーナー周りは、ぐるりと囲むように。

そんなに汚れが強くなければ、このまま15分くらい放置します。汚れがガチガチになっていたら、1時間程度。キッチンペーパーを事前に浸し液にしっかり浸しておけば、1時間ぐらいは乾かないそう。

▲15分経ったので、そのままキッチンペーパーで拭き取り。拭き取ったペーパーはそのままゴミ箱へ

汚れがきちんとゆるんだおかげで、力を加えなくてもするすると取れてびっくり。キッチンペーパーにはところどころ茶色いシミができていて、汚れが浮き出ているのがわかりました。バーナー周りの汚れが固まっていたところや、天板や壁のベタベタもすっきり落ちて、達成感があります。

身近な道具だけでできるので、日常の掃除にも取り入れられそうですね。

最後に五徳の汚れ落としについても聞いてみました。

藤原さん:
「五徳の汚れはコゲ由来のものも多いので、こちらも100%落とすのは難題。塗装やステンレスなどいろいろな素材があり、クレンザーやスチールタワシなどで力まかせにすると傷がついてしまうので、食器用中性洗剤とスポンジで洗えば十分です」

食器洗い乾燥機がある家庭なら、その日の終わりに五徳も放り込んで習慣的に洗浄するのも手だそうです。

ここまで掃除を終えてみると、ほとんど食器用中性洗剤1本で掃除していたことに気づいてスタッフ一同驚きでした。

「たくさんある専用洗剤の中からどれを買えばいいの?」「使いこなせているの?」という迷いや疑問がなくなり、大掃除に対する心構えが少し軽くなった気がしました。

最終話の第4話では、レンジフードや冷蔵庫を中心としたキッチン編(後編)をお届けします。

(つづく)

【写真】北原 千恵美

もくじ

 

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藤原千秋

住まいや家事のライター&アドバイザー。大手住宅メーカー営業職を経て主に住まい・暮らしまわりの記事を専門に執筆する。現在はライティングの傍ら関連の企画広告商品開発アドバイザリー等多様な業務に携わっている。プライベートでは三児の母。著書に『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)など。


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