【クラシコムのしごと】「北欧、暮らしの道具店」の商品や世界観ができるまで。当店のデザイン室に密着しました

編集スタッフ 寿山

開店15年目を迎える「北欧、暮らしの道具店」。徐々にはたらくスタッフも、チームも増えて、2年前からはリモートワークが中心に。日々それぞれのチームごとに、お客さまのことを想像しながら奮闘しつつ、お店を営んでいます。

新しいお客さまも増えるなか、改めて当店で働くスタッフたちの現場をご紹介できればと、新連載「クラシコムのしごと」をスタートします。

初回は、当店のオリジナルアイテム「KURASHI&Trips PUBLISHING」シリーズの商品デザインやお店のビジュアル、ブランディングなどを手掛けているコーポレートクリエイティブ室(以下CC室)に密着。

ふだん、どんなことを大切にしながらお店のアイテムや世界観をデザインしているのでしょうか。それぞれの案件ごとに話を聞いていきます。

 

秋冬コーデの「ちょうどいい」アクセントって、どんな小物だろう?

まずは11月に発売されたジャガード織のバッグを担当した田野井(たのい)に開発時のエピソードを聞いてみました。

デザイナー田野井:
「秋冬は落ち着いたトーンの服が増えるので、何かアクセントになるような小物が欲しいなあと思って企画しました。

とはいえ当店のお洋服を好きでいてくれるお客さまなら、あまり派手なものや目立ちすぎるものは落ち着かないかもしれないと思って、控えめだけど愛らしい柄をジャガード織で表現しました。北欧の森をイメージしています」

「大きさやディティールにも悩んで、最初はタッセルをつけたり、もう少し大きいサイズのものを作ったり、試作を繰り返しながら “ちょうどいい存在感” を探っていって。最後はお客さまが持ったときに『あ、かわいい』と気分が上がる小ぶりさを優先して今の形に落ち着きました」

▲デザイナー田野井

「私はまだ入社して間もないのですが、どの案件も自由度が高くて、積極的にやりたいことをやらせていただける環境なので楽しいです。お客さまのことをどこまで理解できているだろうという不安もありますが、スタッフとコミュニケーションをとりつつ取り組んでいけたらと思っています」

 

クリスマス気分を楽しんで欲しくて

次に、クリスマス限定のギフトバッグをデザインした佐藤に話を聞きます。

デザイナー佐藤:
「クリスマスのワクワク感を出したくて、イラストレーターのMiltataさんにモミの葉と実を描いてもらい、バッグの真ん中にその絵の刺繍をあしらいました。手元に届いたときに『わあ〜』と気持ちが華やぐようなラッピングになればいいなと思って」

「もらったあとも、違和感なく部屋に置いておけたり、ちょっとした小物入れとして使えたり。そんなイメージもあったので、赤や緑などわかりやすいクリスマスカラーではなく、少し大人っぽいグレーのリボンを選びました。ユニセックスに楽しんでいただけるようなニュートラルさも意識しています」

▲デザイナー佐藤

「他に企業とのタイアップ案件などもあって、今年はロッテ『キシリトール ガム』とコラボして、オリジナルのボトルをつくりました。

キシリトールは、じつはフィンランドで研究が進む甘味料で、当店と “北欧” という共通点がありました。企業の担当者と打ち合わせする中で、『暮らしに取り入れたくなるマイボトル』を作りたいというご要望をいただき、北欧の自然をモチーフにしたデザインを提案することに。

それで北欧の景色からヒントを得て、白樺、サンシャイン(日光浴)、海(波)をイメージした3つの柄をご提案しました」

「もともとスタッフが旅コラムでアップしていた北欧の風景写真を参考にしています。スタッフがいいなあと思ったシーンは、お客さまの心にも響くかもしれないなあと思ったんです」

「ギフトラッピングもオリジナルボトルも、暮らしの中でなじむかどうか、部屋に置いて『いいな』と思えるかどうかを大切にしています」

 

バナーで伝えたい、ワクワクや特別感って?

CC室では、トップページに使う商品や読み物のバナー(トップページに並ぶ、コンテンツの入り口となる画像)もデザインしています。9月から始まったツレヅレハナコさんの新連載「我がままな晩酌」のビジュアルを担当した波々伯部(ほほかべ)に話を聞いてみました。

スタッフ波々伯部:
「新しい連載が始まった!というワクワク感と、ツレヅレハナコさんという私たちも大好きな書き手のエッセイという特別感や、贅沢さも出せたらいいなあと思いながらデザインしていました」

▲デザイナー波々伯部

「晩酌がテーマの連載ですが、しっとりしすぎず、ツレヅレハナコさんのポップなキャラクターも出せたらと思って、文字に角度をつけたりしています。とはいえトップページに置いたときお店の世界観にフィットすることが大事なので、悪目立ちしないよう、クドくなりすぎないように気をつけました。

デザインしようと思えばいくらでも出来たりしますが、あまりデザインしたことが表に見えすぎないのも、当店の特徴かなあと思っています。価値観を押しつけたくないというか。お客さまに喜ばれる余白感とか抜け感みたいなものは大事にしたいなあと思いながらやっています」

 

「北欧、暮らしの道具店」の世界観のひみつ

最後に、CC室で担当する各案件をディレクションしている、マネージャーの佐藤に話を聞きました。ふだん、どんなことを意識しながら1つ1つのプロジェクトを進めているのでしょうか?

マネージャー佐藤:
「お客さまのなかには、年代も暮らしぶりもバックボーンもさまざまな方がいらっしゃると思うので、プロジェクトを進めるときは、敢えてこの企画はこんな状況の方に〜、こっちの企画はこんな悩みを抱えてる方に〜と、少しバラつきを持たせながらディレクションしています。

置いてきぼりになる人がいないように、点をたくさん打つようなイメージです。それでも1個1個の企画を結んでいくと『北欧、暮らしの道具店』という輪郭が浮かんでくるような。一定の世界観からズレないように意識しています」

▲マネージャー佐藤

「商品に限らず、歳を重ねながら、自分たちもお客さまも変化していくので、それに伴ってお店の方向性やテイストが多少変わっていくこともあると思うんです。

それでも、お客さまがどんなことに悩んでいて、どうしたら心地よく暮らしていけるのか。フィットする、暮らしが送れるだろうか。そこに軸足を置くことは変わらないと思います。これからも、お客さまに親しみやワクワクを感じてもらえるようなお店であれるように、デザイナーとして出来ることを続けていけたらと思っています」

 

チームは違っても、同じようなことを考えている?

当店のデザイナーたちの話を聞きながら、不思議な感覚をおぼえました。「読みものを作っている私たちも、同じことをやっているなあ」と。

お客さまのことを思い浮かべて、行動を想像して、自分ごととして分析しながら、企画の骨組みを考えて、肉付けしていく。最後に何を残すべきかは、自分軸ではなくお客さまを思い浮かべて判断する。

デザインと編集とで手段は違うけれど、軸足は一緒なんだなあと、改めて気づいた取材となりました。もしかしたら、クラシコムのスタッフは、それぞれに手段は違えど、同じようなことをしている人の集まりかもしれない。そんな風にも思えるのです。

さて、次回はどんなチームの仕事に密着しましょうか。不定期の更新となりますが、また読んでもらえたら嬉しいです。

クラシコムのしごとphoto:清水奈緒(2〜4枚目)、市原慶子(9枚目)、桒原さやか(10枚目)


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