【考えたい、お金のこと】第1話:お金の不安をなくすために今すぐできること
ライター 長谷川未緒
お金についてまったく心配していない、という人は少ないはず。かくいう私も、いつも頭の片隅に漠然とした不安があります。
とはいえ家計簿をつけるでもなく、赤字じゃないからまぁいいか。老後についても、そのうち考えればいいや、となぜか楽天的です。
そのくせ周りから、マンションを買った、投資を始めた、なんていう話を聞くと、焦ってお金の本を買っては積読しています。
このままではいつまで経ってもお金の不安沼から抜け出せず、ずっとモヤモヤしたままかも……。
そこで一念発起し、ファイナンシャルプランナーの大竹のり子さんに、お金と上手に付き合い、人生をより充実したものにするヒントを伺いました。
第1話では、お金の不安解消法とラクに続ける節約術を、第2話では、お金の貯め方・増やし方を紹介します。
お金の不安は暗闇と同じ?
ファイナンシャルプランナーとして、お金に悩む多くの人の相談に乗ってきた大竹さん。不安を抱えてしまうのは、お金について”見える化”できていないからだと言います。
大竹さん:
「たとえば部屋に入ったとき、電気がついていないと怖いけれど、電気がついて見えてしまえばもう怖くないですよね。
お金もこの暗闇と同じです。
見えていないと不安がつきまといますが、現状を把握し、未来を描いて、お金のことが具体的に見えてくれば、怖くなくなると思います」
お金の不安を解消するために必要なことは、まずは自分が何にいくら使っているのか、家計を数値化して把握すること。それにはやはり、家計簿をつけることがおすすめなのだとか。
大竹さん:
「家計簿って、大半の人は苦手ですよね。でも一生続ける必要はないので、まずはひと月、理想は3か月、試してみてほしいんです。
大きな出費は記憶に残っていると思いますが、日々の小さな支出については覚えていられません。家計簿をつけることで、たとえば食費は5万円くらいだろうと思っていたのが、じつは6万円使っていたといった具合に、感覚と現実のギャップが数字で見えてきます」
ざっくり家計簿が、不安をなくす第1歩
家計簿を付けるとなると、つい完璧主義に陥ってしまいますが……。
大竹さん:
「お金の流れをざっくりつかむことが目的なので、1円単位でつけようとがんばらなくて大丈夫です。とくに1か月めは、ただ記録するだけでいいですよ。
手書きでメモしても、レシート読み取り機能付きなどの便利なアプリを使ってもいいでしょう。苦手な方は、買い物をしたらレシートをもらい、費目ごとにファイル分けするだけでも役立ちます」
1か月が終わって、手取りの2割程度の黒字があれば、それを貯蓄に回せば大丈夫。もしも赤字になってしまった、少ししか黒字が出なかったといったときは、それぞれの支出について、自分なりの評価をすることが大切と大竹さん。
大竹さん:
「○、×、△で振り返ります。
たとえば食費ならば、適正価格で買って使い切った野菜は○、使いきれずに腐らせてしまった野菜は×、使い切ったけれど、もっと安く買えた野菜は△といった具合です。
自分基準でいいので、時間をかけずに支出を見直してみてください。
×がついた支出は、使わなくてもよかったお金になります。1か月めの結果を元に、×を差し引いて2か月めの予算を立てます」
2か月めも同じように○、×、△で振り返り、予算通りに過ごせたか、無理がなかったかどうかをチェック。家計管理が苦手な人でも、3か月を過ぎたころには、自分なりの家計バランスができあがります。
大竹さん:
「お金をどういうバランスで使うかは、人それぞれです。たとえば健康志向の強い人は食費が多かったり、おしゃれにこだわりが強い人は被服費が高かったり。
意識してメリハリの効いたお金の使い方をしていて、全体で収支が合っていれば、何も問題はありません。
自分らしい人生を送れる、お金の価値を最大化できるバランスを心がけるといいと思います」
理想の家計バランスをつくる節約のヒント
3か月の家計簿づけの結果、ちっとも無駄遣いはしていないのにどうしても赤字が続いてしまったり、貯蓄ができなかったり。理想の家計バランスまで辿り着けない……。そんなときはどうしたらいいのでしょう?
大竹さん:
「先ほど意識してメリハリの効いたお金の使い方をしている分には、何も問題はないとお伝えしましたが、無意識に使いすぎている項目があったら、削れる可能性があります。
下図の理想の家計バランスに照らし合わせてみましょう。そのつもりがないのに突出して高い項目があったら、その項目は節約できる可能性が高いので、もう一度、◯、×、△で見直してみてください」
▲シングル世帯、ファミリー世帯、手取り収入別の理想の家系バランス(FPウーマン作成)
さらに節約のポイントを教えてもらったところ……。
大竹さん:
「まず節約のカギになるのは、毎月一定額支出する固定費です。とくに、次の3つの条件を満たすものを見直してみると、ストレスなく支出を減らすことができます。
①月の支出に占める金額が大きいもの
②我慢がいらないもの
③効果が持続するもの
家計簿の中から、当てはまる項目を探してみましょう。
たとえば家賃を10万円から8万円にできれば、年間24万円の節約です。携帯電話を格安SIMに変えれば、月々数千円は浮くはず。保険の見直しや、住宅ローンの借り換えも検討してみてください」
大竹さん:
「節約というと、つい食費を切り詰めたり、交際費を削ったりしがちですが、それでは生活の質に影響を及ぼしますし、がまんが必要で、続けにくいですよね。でも同じ保障内容で、掛け金の安い保険に切り替える、金利の低いローンに借り換えるといったことで節約するならば、生活は何も変わりませんし、意識せずとも効果が長続きします。特に保険は、「安かろう、悪かろう」ではないので、見直し対象として最適です。
大きな支出を見直したら、次に使っていないサブスクリプションや年会費を払っているカードなど、小さな支出も見直してみると、驚くほど大きな節約になりますよ」
こうした手続きは、書類を取り寄せたり、比較検討したりと、面倒なので腰が重くなりがち。ですが、思い切って1日有給休暇を取得して、1度に片づけてしまうのもおすすめだそう。
ふるさと納税でうれしい節約も
応援したい自治体に寄付する「ふるさと納税」。
所定の手続きが必要なので大変そうと尻込みしている人もいるかもしれませんが、節約効果があるので、余裕のある人はトライしてみては、と大竹さん。
大竹さん:
「ふるさと納税は、地方自治体に寄付をしながら節約もできる、うれしい制度です。
節約の効果はふたつ。
ひとつめは、ふるさと納税は寄付金のうち2000円を超える部分について、所得税や住民税から控除を受けることができます。控除額の上限は、その方の所得金額によりますので、ふるさと納税のポータルサイトなどでシミュレーションするといいですよ」
ふたつめは、ふるさと納税は返礼品が用意されていることが多いので、ふだん買っている食品や日用品を選ぶことで、節約につながります」
お金の使い方は、自分を映す鏡
お金に悩む大勢の家計簿を見てきた経験から、大竹さんはよく当たると評判の占いよりも、その人のことがわかる自信があるのだとか。
大竹さん:
「家計簿には、食べたもの、行った場所、趣味や習い事まで、全部が記録されています。その人自身が、ありのまま映し出されているんです。
やみくもに貯金するのではなくて、毎日を楽しく、自分らしく生きるためにも、お金とどう付き合うか。改めて考えてみることで、人生がより充実してくると思います」
私は自分らしいお金の使い方ができているんだろうか。そもそも何に価値を置いて生きているんだろう。そんな問いがぐるぐると頭の中をめぐりつつ、まずは家計簿アプリをダウンロードして、つけはじめました。
大竹さんによると、お金を貯めて上手に増やせれば、選択肢が広がり、将来の不安をぐんと減らせるのだとも。そこで第2話では、「お金の貯め方・増やし方」を教えてもらいます。
【写真】鍵岡龍門
もくじ
大竹のり子
ファイナンシャルプランナー。出版社勤務を経て、2005年に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。メディア出演やセミナーを通じて、正しいお金の知識を学ぶことの大切さを伝えている。『オトナ女子のお金の貯め方増やし方BOOK』(新星出版社)ほか、著書多数。https://www.fpwoman.co.jp
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