【スタッフコラム】スタイリストという職業のこと、愛用の仕事道具、佐藤かなさんに聞きました!
編集スタッフ 田中
写真 鈴木公平
気になっていたことを聞きました!
現在連載中の明日使える着まわしアイデアを教わっているスタイリスト・佐藤かなさんに、気になっていたことを聞きました。
さまざまな方とお仕事させていただく中で、私がいつも興味津々なのが「今のお仕事にどうやってたどり着いたのかな?」ということなんです。
ファッション誌が大好きな方にも、「どんな職業なのかな?」という方にも楽しんでいただけるのではと、撮影が終わったあとのお時間をいただいて、佐藤かなさんに質問をぶつけてみました。
結果、憧れの師匠についたアシスタント時代、お仕事の必須アイテムなど、たくさんのお話を聞かせていただき、グッときてしまったんです。そんなわけで今日のスタッフコラムは少し真面目ですが、読んでいただけると嬉しいです!
ファッションが大好きなオリーブ少女が、最初にめざしたのは編集者?!
中高生時代から、雑誌『オリーブ』(現在は休刊)を愛読していたという佐藤さん。雑誌に載っているコーディネートをわくわくしながら真似していたのだとか。
佐藤かなさん:
「大学を卒業する前、就職活動中にめざしていたのはファッション誌でした。出版社を受けていましたが、編集者での採用はすべて落ちてしまって。
ほかの職種での内定をいただいてはいたのですが、迷いがありました。そんなときに、スタイリストの梅山弘子さんがアシスタントを募集していると知ったんです。
音楽がすごく好きで、そのミュージシャンたちのスタイリングを手がけていたのが梅山さんだということを知っていたので、声をかけてもらったときはすごく嬉しくて。未経験でしたがスタイリストの世界に飛び込みました」
厳しくも優しい師匠のもとで、スタイリストの修行!
すてきなお洋服をミュージシャンやモデルさんのために集めて、コーディネートする。わたしには華やかなイメージがありました。けれど実際は、服を用意する以外の仕事量がとても多く、裏方なのだと言います。
佐藤かなさん:
「厳しくも優しい師匠のもとでアシスンタントをした4年間は、師匠の仕事の準備や、現場でのアシスンタント、後片付け・・・とにかく忙しい日々でしたが、スタイリストとしての基礎を培いました。
当時は、ミュージシャンがCDジャケットの写真を撮るときに着る服、ライブ、テレビ番組に出演、インタビューに応えるときの服などを揃えるために走り回って。
こんな衣装がほしいと言われて、売っていないものもありました。どうするかというと特別にあつらえたり、予算次第では自分で作ったりもしましたね」
そんなアシスタント時代のある行動が、独立後の仕事につながっていたようなんです。
佐藤かなさん:
「裁縫は得意だったので、自分用のバッグを作って使っていたんです。それを師匠やほかの方に『わたしにも作って』と言われて、材料費代をいただき、お小遣い稼ぎをしていました(笑)。
そのバッグを雑誌『mini*』の編集者の方にもお渡ししていたので、顔見知りになっていたんですね。それで独立後に声をかけてもらったんです。それまでは広告やCDジャケットなどの仕事が多かったので、仕事の仕方はガラリと変わりましたが、試行錯誤しながらやってきました。今は雑誌でのスタイリングが多めですね」
佐藤さんの近著にはお裁縫の本がいくつも。いまもお仕事にしっかりと活きているんだなと思いました。
*mini…宝島社発行の女性ファッション誌。20代中心、ボーイッシュ・ストリートスタイルが豊富。
ファッションに携わっていたい、という思いをずっと持ち続けて。
スタイリストという仕事、やりがいや大変さはどんなところにあるのでしょうか。
佐藤かなさん:
「大変だなとも思うけれど、いま自分には『これで食べていけてるし、これしかない』という思いがつよいです。
スタイリストは本当に雑務が多いんです。撮影前に、服や靴、かばんなどのリース(お店から借りること)から始まり、撮影日にモデルさんに着せ、撮影中に服が乱れたらすぐ直す。撮影後は、借りた服の情報を雑誌に載せてもらったときの原稿チェックもあります。
それが報われるのは、雑誌が出た後。出版社の方にアンケートの内容を教えていただいて『あのコーディネートよかったです!』という読者の声を聞いたときですね。
撮影現場でも、服を着なれているモデルさんが『この組み合わせいいな』と言ってくださったときは、とても嬉しいです」
佐藤かなさんのお仕事を支える三つの道具。
撮影中、ずっと気になっていたのは佐藤さんが肩から下げていたポーチ。パンツのサイズが合わなかったら、このポーチからクリップを取り出して後ろで留めたりなど、小さな道具がちょこちょこと出てきました。
スタイリストさんのお仕事道具って興味あるなあ・・と、ちょっとだけ見せていただきました!
[1]肩かけポーチ
佐藤かなさん:
「このポーチは仕事道具いれです。中身は安全ピン、クリップ、ガムテープ、両面テープ、はさみ、テグス、フェイスカバー、マスキングテープ、ハンカチ、靴べら・・・取り出したらキリがないくらい(笑)。どれも現場で使うものですね」
私が不思議に思ったのは、両面テープ。使い道は、「胸元が空きすぎているブラウスの前を留めるため」なのだとか。
[2]ミニアイロン
撮影現場で、洋服のシワをとっておくための小さなアイロンが大活躍していました。
佐藤かなさん:
「このアイロンは服をハンガーにかけたままかけられるので便利ですよ。ちなみにこだわりは、コードレスではないところ。熱さが持続する方が好きなんです」
[3]30分刻みで書きこめる手帳
細かな時間で区切られた手帳も、持ち歩く仕事道具だと言います。
ノーリツの手帳で30分刻みのものを10年以上使っているそうで、リース(服を借りること)をするときに、たくさんのお店を効率良くまわるため、細かく書き込めるこの手帳が重宝するんだとか。
▲かなさんのお仕事道具の一部。(ハンカチ、フェイスカバー、靴べら、はさみ)
好きなことであるファッションに携わっている佐藤さんの働き方、決して就職してすぐにそうなったわけではないというところに興味を持ち、撮影のあとに少しお時間をいただいて聞きました。
ファッション誌をキラキラした目で見つめていた学生時代を経て、いま雑誌に佐藤さんがスタイリングした服を着たモデルさんたちが掲載されるというのは、本当にすごい巡り合わせだなあと思います。
しかし撮影で目にした佐藤さんのお仕事には裏方の作業がとても多く、驚きました。
多くの職業は、他人の目に触れる部分はごくわずか、大方が地味な作業なのではないかと思います。それでも、報われて続けられると思う一瞬があるから、がんばれるんだよなあと自分自身のことも振り返る時間になりました。
すてきなコーディネートをたくさん生み出すお仕事を、これからも楽しみに待っていたいですね。佐藤かなさん、ありがとうございました!
▽連載中の佐藤かなさんの記事はこちら。
佐藤かな(スタイリスト)
スタイリスト。雑誌、カタログ、広告、書籍などを中心に活躍中。ナチュラルでシンプルな装いに、ほんのりガーリー、ボーイズライクな雰囲気をミックスしたスタイリングが人気。趣味は手芸、日頃から自身の洋服や小物なども手作り。パターン付きの裁縫の著書もある。
↓佐藤かなさんの著書はこちら。
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