【店長コラム】「すること」じゃなくて「しないこと」を決める。
店長 佐藤
読書欲にはたいてい波があって、やたらと本を買う時期もあれば、そうでなくなる時期もある。(洋服への物欲もこれと似ている)
読書に関してここのところ私にやって来ている波は、完全に前者のほう。考えてみたら、それもそうだと。だって、「読書の秋」ではないですか!
そんなわけで、今日は最近読んだ本のなかから一冊の本に刺激されて考えたことについて書いてみようかなと思います。
「する」家事じゃなくて「しない」家事?
一冊の本とは、マキさん著の『しない家事』。
ふたりの娘さんをもつお母さんでもあり、『エコナセイカツ』というブログで日々の暮らしぶりを発信していることでも知られている方です。(当店の読みものにご登場いただいたこともありました)
本屋さんに並ぶこの本をひと目みたとき、「え?しない家事?」と興味をそそられました。「する家事じゃなくって?」と。
ほぼ立ち読みもせず、そのままレジに持っていきました。
そうして、読了した感想はというと……。
お風呂上りか美容院に行った後のような、なんともサッパリとした気分になることができました。
そういう気分を読者のわたしが得られたのは、おそらく著者の、ある潔さなんだと思います。
そのときどきで「しないこと」を決める潔さ。それは、今の自分と向き合うということなんじゃないかと。
「ああもしたい、こうもしたい」「あの人はこうしているらしいから、私だってこうすべきなんじゃないか」そういう心に湧き上がってくる声ひとつひとつに対して「じゃあ、今の自分にそれはできるのか」「ほんとうに必要か?」と優先順位や自分が願っていることそのものを問うていく作業。正直になる作業。
もちろん、本のなかで紹介されているさまざまな家事の工夫もとても良質なインプットだったのですが、なんというか、わたしは読了後に得られた”サッパリ気分”の正体ばかりが気になって仕方ありませんでした。
「しない」を決める勇気。
大好きなTVドラマに『パンとスープとネコ日和』があります。DVDボックスを買って、何度も観ているほど。
そういえば、主人公のアキコさんは「しない」をちゃんと決めている人だなぁと思い出しました。例えば……
・パンとスープ以外のメニューは増やさない。
・コーヒーは出さない。
・その日の材料がなくなったら店じまい。追加の仕入れはしない。
はっきりと「したい」ことがあるから、今は「しない」ことを決める。アキコさんからもそういう潔さを感じたのでした。
でも、その決めたことにだって迷い揺れている様子もドラマのなかでは描かれていました。「ほんとうに、これでいいんだろうか」と。だからこそ、「しない」を決めるは勇気なんだなぁと感じます。
きっと、人それぞれに決めている「しない」があるのだろうと思います。
日々の家事にだってそれはあるだろうし、仕事の進め方や段取りのなかにだってその人・その会社独特の「しない」があるはず。
家庭や育児とのバランスを考えたとき仕事をするかしないかを悩み、「今はしない」だったり「今は残業はしない」と決めることに勇気やエネルギーが求められることもあります。
自分の胸に手を当てて考えてみても、やっぱり「しない」と決めていることがあるような気がします。
「している」ことは表から見えやすいけれど、「しない」と決めていることにも一人ひとりの価値観や美意識が表れていそうで、今わたしは、誰かがしていることではなくて「していない」ことは何なのか?もっともっと知ってみたくなりました。
していないことはなかなか目には見えないから、写真に撮ったり簡単にSNSでシェアしたりすることはできないけれど、だからこそ知ってみたい。
マキさん著の『しない家事』を読んで得た”サッパリ気分”は、そんな新たな視点を与えてくれました。
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