【キッチン特集】前編:「これだけあれば」で厳選。柳沢小実さんのおすすめ料理道具(と失敗談)
ライター 長谷川賢人
忙しくてもちゃんと続く、料理がしやすいキッチンをつくろう。
進学や就職といった大きな変化を迎える人が多い季節ですね。どうも体を動かすのが億劫で、部屋の中に「もやもやした空気」を溜めこみやすい時期ではないでしょうか。
まずは、窓を開けましょう。新生活に、そして気分転換に。ちょっと心が軽くなったら、暮らしの中心でもあるキッチンを点検してみませんか?
今回はエッセイストや整理収納アドバイザーとして、心地よい暮らしの提案をなさっている柳沢小実さんに聞いた、「キッチンの見直し方」を前後編にわけてお届けします。
近著のタイトルが『土曜の朝だけ!「きちんと」 が続く週末家事』であることからも伝わるように、柳沢小実さんが大切に考えるのは「ラクになる」という観点です。生活感は消しすぎず、ざっくりしているくらいでもいい。だけど、暮らしやすいように。
そんなふうに考える柳沢さんのキッチンには、肩の力が抜け、ぽんと膝を打つような学びがいっぱいでした。
前編では「ライフスタイル別、キッチン道具の選び方」を紹介していきます。まずは必要なものをそろえて、忙しくても料理がしやすくなるための方法を、教わりましょう。
家庭用品は、うっかり一生ものになるから気をつけて。
▲お茶をいただきながら、まずは打ち合わせ(と称しておしゃべり)。お菓子は、九谷焼作家の中町いずみさん作の小皿に。柳沢さんの軽やかなお出迎えでした。
わたしたちが伺った柳沢小実さんのご自宅は、20畳ほどのリビングを持つ2LDKの間取り。部屋にはソファがないこともあって、すっきりと広く感じられます。
さて、具体的な道具選びの前に、柳沢さんが話した、ひとつのルールを紹介しましょう。
「家庭用品は傷みにくいので、ひょっとすると、一生ものになるから慎重に」
間に合わせで買った道具を「ちょっと不便だなぁ……」と思いつつ、壊れないからずっと使ってしまうことって、誰しもあるのではないでしょうか。でも、不便には変わりません。
ちいさな不便は心に積もる。ちりも積もれば山となる。道具はデザインだけでなく、使いやすさも吟味したいものです。
「いま、ネットや雑誌を含めて、たくさんの情報がありますよね。それらは必ず自分の生活に置き換えて考えるクセをつけると、失敗しにくくなると思いますよ。必要なお鍋のサイズだって、毎回食べきるタイプの方と作り置きするタイプの方で違います」
まずはここから。一人暮らしの、これだけあれば。
「一人暮らしなら、まずはこれ!」という道具を選抜していただきました。中には当店でも不動の人気、アラビアの「ブラックパラティッシ」の小皿も見えますね。
ただ、さきほどの柳沢さんの言葉どおり、チョイスは生活に合わせてご検討を。
・包丁:吉田金属工業の「GLOBAL」シリーズ。オールステンレスで一体構造のため、継ぎ目がなく洗いやすくて清潔。
・まな板:「クロワッサンの店」のまな板。ゆるやかにアールがついており、濡れていても底面がべったりつかない!
・鍋:まずは片手鍋、あるいは雪平鍋を。サイズは16cm、18cm、20cmのいずれかで十分。
・フライパン:錦見鋳造の「魔法のフライパン」は鉄なのに軽いところがお気に入り。お弁当をつくるなら、フライパンは小さいサイズもあると便利。
・おたま:小さめサイズで、楕円形がおすすめ。柳宗理は使いやすい。無印良品のシリコンヘラも重宝します。
・お皿:和物を中心に、海外ものを少し入れると組み合わせやすい。最初のオススメはいろいろなものに使いやすいフラットな7寸皿。ふちの立ち上がりはないほうが広くお皿を使えます。写真は山田隆太郎さん作。
・お椀:丼とスープ用がひとつずつあれば十分。写真の丼は沖縄の民芸品と、吉村和美さんのお椀。
今回選んだ中では、野田琺瑯の「持ち手付ストッカー 丸型S」が柳沢さんのイチ押し。
「お味噌汁の残りなどを入れて、そのまま直火にもかけられるから便利なんです。おたまが動かしやすいので、角形より丸型がおすすめ」
煮物などを多めに作って「保存+温め直し」がこれひとつでOK。見た目もよく、お鍋代わりにも使える……小回りの効く良い道具ですね。
さらにそろえる。二人暮らしも、ここまであれば。
同棲や結婚、あるいはルームシェアなど、一緒に暮らす人数が増えたら、合わせて道具もパワーアップ。柳沢さんに買い足しアイテムを選んでもらいました。
・タッパーウェア/保存容器:できるだけスタッキングできるものがいい。電子レンジに対応したiwakiの「パック&レンジ」や、食べ物が長持ちするエンバランスのチャック袋や保存容器を。
・フライパン:お弁当用に小さめのものがほしい。
・両手鍋:煮物などをつくるのに、大きめの24cmをプラス。柳沢さんは京都の老舗「有次」の鍋に、自分の名前を入れてもらったものを愛用。
・お皿:一品ものの盛り付けにも便利なオーバルと、ひとりずつの角皿を追加。
・やかん:「質の良いやかんを買うとお茶が美味しくなるからおすすめです!」と柳沢さん。お茶やコーヒーが好きならぜひ。ちなみに、柳沢さんは新潟にある「玉川堂」の銅やかんを「一生モノ」の買い物で手に。
そして、わたしたちも「知らなかった!便利そう!」と、つい欲しくなってしまったのが、「盆ざる」。
柳沢さんも和食料理人に教わって使ってみたところ、取り回しの良さから定番になったとか。平たいのでかけておいてもスペースを取らない上に……
ボウルのサイズを選ばず、重ねて使えるのも嬉しいところ。洗った青菜をあげておくもよし、麺類の湯切りによしと、オールマイティーに使えます。柳沢さんは調理器具の問屋街であるかっぱ橋道具街で購入。
「もの選びが上手な柳沢小実さんも、失敗って、するんですか?」
どれも使いやすそうな道具を紹介してくれた柳沢さん。そこで、あえてこんな質問もしてみました。「柳沢さんも道具選びで失敗したなって思うこと、ありますか?」
「そうだなぁ……重い鍋は、今はあまり使わなくなっちゃっいましたね。食材を入れた時に重くなるのは、上げ下ろしも大変ですから」と弱り顔。同様に、使わなくなる候補として「洗うのが面倒なもの」や「用途が限られる家電」も要注意だそう。
「でも、家事はトライアンドエラーで、やりながら変えていくものです。住んでいる年代や家族構成で生活も変わっていきます。だから道具は、その前提があっても使い続けられるという視点で選んでいくといいと思いますよ」
「わたしって、めんどくさがりのきれい好き、なんです(笑)。あまり手をかけずに、でも持っているものはきれいでいてほしい。だからお皿も油や水が染みやすい土物とか木製ではなくて、つるっとしている陶器が好きなんです」
「ラクをする」という観点を持っているからこその道具選び。その視線は、収納の仕方にも表れていました。続きは、後編で。
【写真】鈴木静華
もくじ
柳沢小実
エッセイスト・整理収納コーディネーター。ファッションと美味しいものが好きで、収納好きが高じて、整理収納アドバイザー1級の資格を取得。手間をかけずにすっきり見える収納法を日々研究中。暮らしにまつわる著書、雑誌への連載など多数。http://www.furarifurari.com/
ライター 長谷川賢人
1986年生まれの編集者、ライター、スピーカー。
▽柳沢さんの書籍はこちらからご覧いただけます。
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