【愛すべきマンネリ】第2話:主婦歴40年。毎日が繰り返し、それが心地いい(坂井より子さん)

編集スタッフ 齋藤

主婦歴40年。坂井より子さんの「愛すべきマンネリ」

「マンネリ」と聞いて、何を思い浮かべますか。

代わり映えもなく、変化もしない、お決まりごと。そうしたネガティブな印象を抱きがちかもしれません。

でも、こんなふうにも考えました。

人生に寄り添ったあらゆる大波小波、変化のなかでも変わらずに、「なぜか続いてしまっている」ことこそがマンネリなんだと。

削ぎ落とされずに残った理由は何だろう? それを知れば、マンネリって、自分の大切なものを象徴するものだと言えるのでは。そんな思いから、この特集「愛すべきマンネリ」は始まりました。

連載第2回目は、主婦歴40年の経験を生かし、家庭料理や暮らしの知恵を著書やお話会を通して伝えている、坂井より子さんにお話を伺いました。

わたしが坂井さんを知ったのは、当店が発行するリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト vol.13」にご登場いただいたことがきっかけ。

昨年、長年住んでいた家を建て替え、娘家族、息子家族と3世帯で同居をスタートし、3人の孫に囲まれながら暮らす坂井さん。

現在71歳。いまこの暮らしの形となるまでも、家族4人の暮らしから、子どもが独立しての夫婦2人暮らし、そして娘家族との2世帯暮らし……と様々な家族形態を経験してきたといいます。

家族の形が変わりながら人生を歩んでこられた坂井さんの、マンネリってなんだろう? 変化とともに、マンネリやその捉え方も変わっていったのかな。そんな思いを抱えながら、坂井さんのご自宅を訪ねました。

 


愛すべき、我が家のマンネリ
「決まった家事を、順番通りに淡々と」


▲坂井さんご夫婦のこの日のお昼ごはん。焼きおにぎりと前日の夕飯の残りが定番。外で食べたほうが美味しいものは、家では作らないのだそう。

坂井さん:
「我が家ってね、『3チャンネルの家』って言われていたくらい、昔から規則正しい普通の家だったんですよ。

その言葉に始まり、主婦を40年していますけれど、もう朝起きてから夜寝るまで、ぜんぶマンネリで回っていますね。

一緒に暮らす家族の人数や世代が変わっても、やっていることの中身はいつもいつもずっと同じ。でもね、それに飽きたり、変えたいな〜と思ったことはほとんどありません。

やることも順番も、同じでないと自分が落ち着かないんです」

▲洗濯物は夜のうちに洗濯機を回して室内干し。早朝に畳んで仕舞う。

 

これが私の落ち着くかたちだから、続いています。

▲若い頃に通った料理教室でいただいたレシピは、何十年間、なんども作りながら我が家の味に。

坂井さん:
「作るご飯は繰り返し作っている定番のものが多いし、身支度も長年ほぼ一緒。(外出時はワンピースか上下おそろいのスーツなんだとか)

毎日決まった家事を順番通りに繰り返して、それを退屈と感じないのは『誰のためでもなく、自分のため』ということが分かってきたからかも。

ちょっと冒険して格好を変えてみてもしっくり来なくて落ち着かなかったり。よし、家で新しいレシピを!と息巻いて作っても『外で食べたほうが美味しい』となったり」

▲この日は雨だったため、お孫さんが作った「てるてる坊主」が家のいたるところに。

坂井さん:
「そうやって失敗やソワソワを繰り返して『これが私の落ち着くかたち』と腹をくくったら急に、自分の時間が確保できたり、暮らしのなかに『楽チン』と感じられることが増えました。

その過程にはやっぱり、わたしの “年齢” も関係しているのでしょうけれどね」

 

日々更新しなくてもいい。マンネリがあるから、暮らしの形が変わっても「私はわたし」

▲リビングの水屋箪笥の引き出しには孫のためのお菓子が。食べ切りやすいよう袋で準備してるそう。

坂井さん:
「長い人生のなかで、やっていることはほとんど変わらないけれど、とくに子どもが小さかったときには、家事の仕方や普段の過ごし方に悩んだことがありました。

でも、わたしがラクになるように、わたしが心地良いようにって、『わたし』を基準に何をするか決めていったら、結果的に家族の変化にも強く、自分の時間は変わらずに持てるようになりましたね」

情報が溢れ、魅了的な暮らしを紹介する本があって、身の回りでもキラリと輝くひとがいると、真似したい。坂井さんにお会いするまで、そんな「更新しなくっちゃ」という焦りに近い思いを抱えていたわたし。

でも、今の状態や更新した先に「自分にとっての心地よさ」や「自分にとってのラクさ」があるのか。それを意識することは普段からできると背中を押してもらえました。

▲キッチンやお風呂はそれぞれの家庭にあるけれど、時々は孫たちが坂井さんのお風呂にも。そんな日の翌日は、孫の洗濯物は箪笥のこの位置にポン。持って帰ってねのサインです。

私自身、暮らし方は、きっとこれからも変わっていくでしょう。起きてから寝るまでのマンネリを肯定できるような日が、いつ来るかも分かりません。

でも、意識はいつか軸になって、それが愛すべきものになっていくかも。

71歳の人生の大先輩にお話を聞いた帰り道から、とにかく、今の自分をシンプルに、見つめ直してみようと決めました。これからの人生をポジティブに、マンネリに愛をもっていくために。

 

【写真】鈴木静華


もくじ

坂井より子(主婦)

1946年生まれ。神奈川県葉山在住。自宅で料理教室を主宰。主婦歴40年の経歴を生かし、やさしい家庭料理の伝授と暮らしの知恵を交えた語りが好評を博し、さまざまな世代の女性から人気を集める。近年、お話し会を開催し、若いお母さんの支えとなる活動も行っている。www.motherdictionary.com/sakaiyoriko


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