【ケの日のこと】花屋がなくても。移住して変わった、花との付き合い方

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第5話:ケの日の花


 

花が部屋にあるってしあわせなことです。

朝テーブルに一輪飾ってあるだけで、パンとりんごと紅茶だけの朝食もいつもより美味しそうに見えたりして。そのせいか、長年わたしは、花を「ちゃんとした暮らし」のバロメーターにしてきたことに気がつきました。日々の隙間に花屋さんに行き、並んだきれいな花々から吟味して選び、そっと持って帰っては部屋に生ける。でも、それが出来るだけの心と時間の余裕がない時もあるんですよね。せっかく花を飾るなら、散らかった部屋ではなく、整った部屋に飾りたい。だからこそ、部屋に花がある時は、こまごました雑事も家事も子どもの世話もある程度ちゃんと出来ていて、なおかつ自分の気分がポジティブな時だったよなあ、と思ったんです。

そう気付いたきっかけは、暮らしの変化にありました。昨年の春に神奈川のはしっこの里山に、家族で引っ越したんです。自転車をぴゅーっと走らせれば、大好きな花屋さんが数軒あった生活は一転。お気に入りどころか花屋さんなんてどこにもない、そんな場所です。でも、そんなここでの暮らしが、わたしと花との関係を変えてくれることになりました。

越してきたのは3月の終わり。朝晩はまだまだ冷え込みが厳しい中で、霜の降りた地面からひっそりと、いろいろな植物の芽が姿を現していました。新居の片付けやら新生活の手続きやらでせわしなく時間に追われ、ふっと気づけば、もうあたりはそこらじゅう、春の花、花、花でいっぱい。毎日のように学校帰りや帰宅後の散歩で娘が摘んできてくれる花を、キッチンでコップにちょこんと生けたりしているうちに、花ってこんなにも気軽に飾っていいものだったんだなあと思えるようになったのです。

東京に暮らしていた頃から道端に咲いていたはずのヒメジョオンってこんなに可愛い花だったんだ、なんて改めて気付いたり。春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が来て、季節とともに景色も咲く花も変わっていき、見つける花も変わり。今は、杉の葉っぱやモミの葉をリースのように飾ったりしています。花屋さんはなくても、身近にある花や枝のかわいらしさや美しさに気付けた半年でした。

今でも特別な日に好きなお花屋さんに行って、きれいに育てられたお花を買うのは楽しいです。でも、ぜんぜん「ちゃんと」出来ないひっちゃかめっちゃかな「ケの日」にもそっと寄り添ってくれる、野花との暮らしもまた、楽しいのです。

 

【写真】馬場わかな(1枚目)、中村暁野(2枚目)

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、0歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com

 


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