【ケの日のこと】できないことばかり数えていたけど。わたしを変えた、娘のひと言
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第10話:斜め上いく娘
もうすぐ娘が小学2年生になります。小学校の最初の年が終わるんだなあと、この1年を振り返ると感慨深いものがあります。娘は赤ちゃんの頃からずっと、敏感で繊細、人見知りが激しく意思の強い、心配の多い子でした。
25歳のときになんの準備もないままわたしは母になりました。それでも「おかあさん」になれた喜びや期待でいっぱいで、最初の数年は触れるもの、食べるもの、着るもの、娘にいいと思うありとあらゆるものを手渡そうとしていました。子供を持つまで、何かを頑張ったら頑張っただけの結果がでるものだと思っていたのです。まさに努力は実る精神。子育てに関しても、わたしの頑張りが娘に影響するのだわ、と表面上は穏やかに、しかし内心はねじり鉢巻きに前のめりな姿勢で、「おかあさん」を全うしようとしていました。
ところが、そんなわたしをよそに、娘はいつも想像の斜め上をいく子でした。市の検診に行けば大暴れするのは毎度のこと。保育園ではいくらたっても先生とお話が出来ないまま。幼児期になっても夜泣きがひどく近所の人に通報されたことも一度ではありません。スムーズにいかないひとつひとつに当時はひどく悩み、打ちのめされていました。
そんな気持ちが変化したのは娘が4歳を過ぎた頃です。ある日、娘とぶつかっては怒っていたわたしが珍しく心穏やかに過ごせたと思い、ふと「今日は仲良くできたね」と声をかけると、娘はサラリと「全部がママの思う通りにいったからじゃない?」と返したのです。ドーン!と衝撃が走りました。
思った通りに物事が進んだらそりゃあ安心です。気持ちも良いです。思い通りにいかないから苛立って不安になる。それはまさにわたしの子育ての状況そのもので。
あれもこれも出来ない……と思っていた娘は、観察力とユーモアがあり気持ちをしっかり言葉にできる、わたしにはないものをたくさんもった女の子でした。
人はちがうから面白い。そう思っているはずなのに、実際は違いを認められなかったり、同じであることを求めてしまったり。親子であっても娘とわたしは違う人間で、わたしが求めるものを娘が形にする必要なんてないんだ。そう思えたら、わたし自身も決して何かが足りない母親じゃないんだ、と思えるようになりました。あの日の娘の言葉がそれを教えてくれたのです。
とはいえ、頭でわかってはいても予想外の出来事が起こるたびにびっくりおののき、心配で心が吹き荒れるのは止められない。きっと新しい1年も、斜め上をいく娘に振り回されてわたしは息切れするのだと思います。でも、不安でいっぱいなはずの、そんな未知なるケの日々がなんだか楽しみでもあるのです。
【写真】馬場わかな(1枚目)、中村暁野(2枚目)
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、1歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com
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