【店長コラム】「50人の壁」はいかに?スタッフとのコミュニケーションで意識していること。
店長 佐藤
クラシコムは今年の秋で創業12周年を迎えます。ありがたいことに、社員数も50人を超えようとしています。
「社員の方たちとどんなふうにコミュニケーションをとっているのですか?」「だんだん経営の意図が全社員に伝わりづらくなってきているのではないですか?」
お客さまが参加してくださるトークイベントや、仕事で知り合った方などから、このような質問を受けることも増えてきました。
「ですよね〜、そのあたり気になりますよね〜というか、わたしも誰かに教えてもらいたいくらいです……」
と言ったあとの次の回答に詰まることもあったので、最近の自分はどんなふうにスタッフとコミュニケーションをとろうと心がけているのか?整理して書いてみようかなと思い立ちました。
浅い穴を繰りかえし掘って、やがて深く。
つい最近、とある講座に参加させてもらったときに、とても面白い話を聞きました。わたしはそのお話に励まされてしまって。
「一度に深い穴を掘ろうとするのは限界がある。浅い穴を繰りかえし掘ることで、結果深い穴を掘ることができる」
というようなお話でした。
これはコミュニケーションについて語られた話ではないのですが、わたしは勝手にスタッフとのコミュニケーションにも適用して「そうか。大切なことを一度に伝えようとしなくていいんだ。浅いコミュニケーションだとしてもそれを繰りかえし根気よくやること、浅くでも伝え続けることに意味があるんだ」と納得しました。
あらためて整理して考えてみたところ、最近の自分は、いつか「深い穴」に到達することを目指して日々こんなコミュニケーション方法を使っているみたいです。
◎超雑談が、超大事
手を洗いに行く。お水を飲みに行く。キッチンにコーヒーを淹れに行く。打ち合わせや撮影のためにオフィス内を移動する。雨やんだかな〜と窓の外を眺めに行く。
書き出したらきりがないくらい、オフィスにいる時間は業務以外にたくさんの動きをとっているんですよね。
社内にはSlack(スラック)というチャットシステムも導入されているので、今や、ほとんど立ち歩かなくても誰とでもコミュニケーションがとれちゃうのですが、わたしはオフィス内をとにかく「歩く」ようにしています。
「犬も歩けば棒に当たる」じゃないですけれど、幸運に当たるほうの意味で、わたしも歩けばスタッフに当たるので、雑談が生まれる機会に恵まれる気がしています。
チャットで「了解〜」なんて打てばほぼ1秒ですむような場面もあるのですが、「あれさ、ちょっと思ったんだけど」なんてわざわざ席に行って話しかけることもあります。
コーヒーやお茶を淹れにキッチンに行ったときも、たまたまそこに居合わせたスタッフと髪型をかえた話をしたり、その洋服はかわいいけどどこの?と話したり、今日は気圧が低いからだるいね〜なんてお互いにボヤいたりも。
なんてことない雑談が実はものすごく大事なんじゃないかと思うことしかないので、これは創業当初から一番長く続けている方法かもしれません。
◎プロジェクトは直接伝えられる絶好の機会
短編ドラマの製作や、商品動画、SNSの運営、オリジナル商品の開発、書籍の編集、イベント運営などなど……通常業務以外に各部門を横断して動いているプロジェクトがたくさんあります。
各部門のマネジャーを介して他のスタッフたちに対してコミュニケーションをとる方法も増えてきているので、プロジェクトに関わる人と直接やりとりできるのは貴重な機会でもあります。
そのプロジェクトによって、進め方は異なるものの、どんなときも何に取り組むときもお店として大事にしたいことはほぼひとつ。一緒です。
プロジェクトに関わってくれるスタッフに、そんなお店として大切にしたいメッセージを言葉の端々に染み渡らせて伝えられればと願っています。
これ意識してないと難しいんですが(汗)
◎個人のSNSでの発信は自己紹介
これはあまり真面目にやっているほうではないのですが、なんとなく意識しているかなくらいのレベルで。
個人のTwitterやFacebook、Instagramのアカウントで、その時々の自分のテンション感だったり、考えていること、迷っていることなんかを発信しています。
自分自身もInstagramに向かうときのテンションと、TwitterやFacebookに向かうときのテンションが違ったりするので、それぞれのSNSにそれぞれのテンションで近況を投稿することで、それを見ているかもしれないスタッフに多角的な自己紹介をしているような気持ちがあったりもします。
◎定期的な1on1は楽しく、深く
1on1(ワンオンワン)はその呼び名の通り、一対一で行うコミュニケーション。
わたしが見ている部門は4つほどあって、その部門ごとにマネジャーがいるのですが、そのマネジャーと毎月一回ずつ1on1を行っています。
マネジャーから相談をもちかけられてそれに応える日もあれば、ただただ賑やかな雑談で終わる日もあります。
ちょっと厳しめのフィードバックをさせてもらうことも時おりですがあったりもします。
この1on1で、最近特に心がけているのは、お互いの「心理的安全性」を高めるということ。
お互いのというところがミソでして、正直なところ、1on1てそれなりに上司側も緊張するんですよね。一対一で向き合うって、それなりにエネルギーも消費します。
だからこそ、相手のみならず「自分」の心理的安全性も大事だと思っています。
自分はどういう環境だったら、リラックスしてのぞめるのか。リラックスして臨むことができれば本質的な話に辿りつきやすかったりもします。
そのために、近所のカフェに移動してコーヒーを飲みながら話したりすることも。
1on1はある意味で逃げ場がない分、一度にかなり深いところまで穴を掘れる確率が高いコミュニケーションであると感じています。
◎ときどきお手紙コミュニケーション
「なんですか?お手紙コミュニケーションて?」と突っ込まれそうですが、今年に入ってから個人的にゲットしたポケモンです。
あるとき、オリジナルブランドでのものづくりにおいて、自分たちが大切にしたい「動機」の部分をどうやってスタッフに伝えようかと考えたことがありました。
ふと思いついて試してみたのが、関係するスタッフにあててお手紙を書くという方法。
お手紙と言っても、普通に考えがまとまった文章を、いつもより少しだけ語りかけ口調でパソコンでしたためてプリントアウトしただけなのですが……。
受け取る人によって反応の違いはあったと思いますが、わたしにとっては自分に向いているやり方かもしれないと感じました。
話すより、書いたほうが、より語りかけやすいこともあるなと。
受け取ったスタッフの側からも「なんども読み直せるのがよい」「線を引いたり書き込んだりしながら読めた」「一方的に話をされるより、自分で咀嚼しながら読み進められる余白がある」などの感想をもらうこともできました。
ここぞという時に、これからも時おり使ってみたい方法です。
◎ときどき飲みニケーション
わたしは元々いわゆる「飲みニケーション」が得意ではありませんでした。
酔っ払ったあとで出てくる本音に一喜一憂していたからだと思います。
でも、特に最近になって飲みニケーションにも役割があるなと実感することが多いです。そして、同じ仕事を共にするスタッフと飲むのは純粋に楽しいですし気分転換になります。
酔う。つまり参加メンバーが超絶リラックスしている。そこで仕事の本音や迷い、不満みたいなものがついつい飛び出してくる。
ずっと以前は、飲みの席でさえ出てきた本音を解決してあげなくちゃと責任感に苛まれていたのですが、今では結構笑って受け流している自分がいたりもします(笑)
「まあ、そうは言ってもさあ〜」みたいな感じで。
さらに面白いのは、こちらも飲んでいるとついつい熱くなってしまったりする場面が生じるということです。
スタッフの何気ないボヤキから「え?この仕事についてそんなふうに考えていたの?」なんてついつい熱くなってしまって「いやいや、そうじゃなくてこういうことなんだよ」なんて語っている自分がいたりするから不思議です。
なにせ、みんな酔って気分よくなっているので、翌日には「店長、なに言ってたっけ?」ってなってることも多いと思うのですが「なんか、また熱く語ってたなぁ〜」という記憶で十分かなと思っています。
「真摯」であることの意味を更新中
わたしはスタッフとなんてことない話で笑いあったり、時にふざけ合ったりというのが好きです。自分も楽しいんですね、そういう時間が。
対して、大勢の人の前に出てひとりで演説をしたりするのは、その日会社に行きたくなくなっちゃうくらい苦手です。
話すよりは、書くことのほうが好きです。
かしこまった話は得意ではないけれど、雑談なら永遠にできます。
質問されたことに即座に回答すると、たいてい「もっとこう説明すればよかった」と後悔するほうですが、もらったテーマをじっくりと自分のなかで内省してから話し合うのは大好きです。
以前はあの人みたいに自分もちゃんとできるようにならなくちゃと肩に力が入っていましたし努力もしてきたつもりですが、最近はよい意味で諦めがついてきたといいますか、自分の得意なコミュニケーションでスタッフとの関係を築いていこうと捉えられるようになりました。
仕事において大切なことをスタッフに真摯に伝え続けようと思うとき、その「真摯さ」には苦手な方法を克服することも含まれているとずっと思ってきました。
でも、もしかしたら違っていいのかもしれません。
スタッフが増えていくからこそ、細く長く続けられる方法を。自分にとって苦しくない「真摯さ」を目指したいと思います。
そこは健やかに開き直ったうえで、50人規模の会社で深い穴に到達することにチャレンジしてみるつもりです。
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