【お坊さんのお悩み相談室】第3回:大人になってからの人間関係ってむずかしい。
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
連載「お坊さんに聞く、くらしの悩み相談室」は、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく新連載。
クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。優しい笑顔が印象的な、3児の父でもあります。
家族や友人と、なんとなく言い合いっぽくなってしまった時、「こんなこと言っちゃったな~」という反省と、「そんな言い方しなくてもいいのに」という言葉が頭の中から離れなくて、悲しみや怒りが込み上げてくることがあります。
そもそも、悲しまない、怒らない、という境地に近づきたい場合、どうしたら良いのでしょう? 人間だもの、怒ったっていいと思うのですが、怒ると疲れますしね…… 難しいところです。 (スタッフA)
大人になってからの人間関係とは、たしかに難しいものです。人とのおつきあいは避けようがなく、それに伴って生じる怒りや悲しみもなくなることはありません。
だからこそ、いっそのこと「悲しまない、怒らない。という境地に近づきたい」という気持ちになるのもよくわかります。基本的にはいずれも人づきあいに端を発する悩みですから、相手との関係をどうにかすることに解決のポイントがあるように思われます。
でも、目を向けるべきは「自分の心」。なぜなら、後悔するのも、悲しむのも、怒るのも、疲れるのも、全て自分の気持ちの動きだからです。
相手をどうこうするのではなく、自分の心の持ちようによってこそ、はじめて悩みから本当の意味で解放されるのです。
人間には108の煩悩があると言われています。文献によっては、その数8万4千とするものも。人間の煩悩は限りないということですね。
仏教では人間を悩ます心の動きを「三毒」と言います。すなわち「貪(とん)」=必要以上に求めること、「瞋(じん)」=怒り、「癡(ち)」=無知、愚かであること。しかし残念ながら、お釈迦様の時代から今日に至るまで、わたしたち人間はこれらから解放される方法を発見していません。
さて、この中でも特に厄介なのが「怒り」ではないでしょうか。怒りのエネルギーはすさまじく、人やものにあたってしまい、結果として相手や自分を傷つけることもあります。怒りは自分で意識をしていても、ふとしたきっかけで湧いて出てきてしまいます。むしろ、自分がしっかりしていよう、きちんとしていようと思えば思うほど、自分の考えるとおりにならない周りの人や環境に対して怒りを感じてしまうのですから厄介です。
怒りの根本にあるものは「自分は正しい」という気持ちです。正しいのは自分なのだから、相手が間違っている、その思いが怒りにつながります。けれど、自分が正しいと判断する基準は、本当に間違いのないものなのでしょうか。自分ばかりに都合のいい理屈をつけてはいないでしょうか。
その相手にもまた、自分なりの理屈があるのです。自分が正しいと思うものが相手と違ったときは、自分もまた、相手の利益や正義を損なっている可能性があると想像を及ばせてみてください。
すると、逆に心無い言葉を投げつけられても「自分とは違うけれど、そういう考え方もあるんだな」と受け流すことができるはず。怒りを根っこから手放すのは難しい。だからこそ、まずは「自分が正しい」という考えを手放すように意識してみることから始められるといいのではないでしょうか。
青江覚峰
もくじ
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー。
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