【一杯のお味噌汁で】前編:忙しい日はお味噌汁だけ作れば、乗り切れる?

編集スタッフ 田中

食べ過ぎてしまう年末年始。助けてくれたのは、“一杯のお味噌汁”でした。

外食が多くなりがちな年末年始のお休みも明けましたね。「うーん、なんだか胃腸が重たくて、調子がわるい……」となった挙句、やっと時間がとれて自炊できても、簡単なお味噌汁とごはんだけということもありました。

こういうとき、お味噌汁ってすごくホッとするし、満足もするのですが、主菜がない献立で作ったと言えるのか?と罪悪感を覚えていたんです。ちょうどその頃、書店で『まんぷく みそ汁』という本に吸い寄せられました。

中をのぞいてみて「お味噌汁はメインおかずとしても、サブおかずとしても万能。お腹も心もしっかりと満たす“一杯”です」というような一節が、私の心にドンピシャに刺さりました。

おかずの代わりになるなら、忙しい日にもパッとお味噌汁を作れるようになりたいし、もう少しバリエーションも増やしたい!と、著書の料理家・堤 人美(つつみ ひとみ)さんを訪ねました。

 

忙しい日は、お味噌汁「だけ」作ればいい

料理家として、忙しい日々を駆け抜けている堤さん。毎日ごはんを作り続けるの、難しいときもありませんか?と聞くと、「お寿司などを買って帰る日もありますよ」という答えが。

堤さん:
「いなり寿司やカッパ巻きなど、素朴な味のお寿司と一杯のお味噌汁が、忙しい日の献立です。

味噌はミネラルなどを豊富に含んでいるから、疲れた日にもぴったりですし、何よりだしの香りで癒されます」

主菜のない献立に罪悪感を持っていた私は、この言葉が自分を肯定してくれているようで、安堵したのでした。

 

「だし」は簡単?ラクに続けられる方法

もうひとつ私が難関と感じていたのが「だし」。堤さんは忙しい日も丁寧にとるんだろうか? 疑問をぶつけてみました。

堤さん:
「私はだしの旨味が好きですし、仕事柄ていねいにとっている方かも。でも常備しているのは、水出しの昆布だしくらいです。

大きめの2Lボトルに水と昆布を入れておくだけで一週間くらい保存がきくし、お味噌汁にも、他の料理にもつかえて便利です」

簡単に本格的なだしをとる方法もあると教えてくれたのは、自家製だしパック。

▲煮干しは頭と腹わたを取った方が苦味が出ないそ

堤さん:
「市販のお茶パックに、小さくちぎった昆布、かつおの削り節、煮干しをいれて鍋で5〜6分ほど煮出すだけです。

もし家に材料が揃っていなければ、かつお節だけでもいいと思います。パックに入れると、だしがらを濾す必要がないからラクですし、味噌漉しにかつお節を入れて煮出すという方法もあります。

煮干しだけなら、鍋に入れて弱火で乾煎りし、あとは水を加えて普通にお味噌汁を作るだけ。煮干しさえ買っておけば、市販のだしパックを使うのと、そこまで手間は変わらない気がします」

これなら、時間のない日でもできそう。だしについても肩の荷が降りたところで、すごく簡単で食感も楽しい、分葱(わけぎ)だけのお味噌汁の作り方を教わりました!

 


超シンプル!
「分葱たっぷりお味噌汁」の作り方


材料と作り方の手順(約2杯分)

分葱…4本(ネギでも可)
煮干し…8尾
水…400ml
味噌…大さじ1と1/2

 

[1] 分葱を斜め切りにする

堤さん:
「斜め切りするのは、食べた時に口当たりが良くなるのと、食感もほどよく残って、葱のうまみがでるから。こうして包丁の刃先を使うと、細く切りやすいです」

 

[2] 煮干しのだしをとり、味噌をとく

堤さん:
「鍋に煮干しを入れて、弱めの中火で乾煎りし、香りがたってきたら水を加えて煮立たせます。そこへ味噌を加えてときます。

煮干しはそのまま具として食べてもいいし、苦手なら取り出しても、だしはしっかり取れますよ」

 

[3] 分葱を加えて、約1分ほどで火を止める

堤さん:
「シャキシャキ感を楽しみたいので、分葱を入れて約1分ほど煮たら、火を止めてください」

 

こんなにシンプルなのに、たった一杯で心が満たされた

分葱のお味噌汁をすすりながら、炊きたてのご飯をいただきました。こんなにシンプルなのに、たった一杯で心がホッと満たされます。

堤さん:
「分葱がシャキシャキとして、食べ応えがあるから満足するんですよね。くったり煮ても歯ごたえがやさしくなって、おいしいですよ。

今回は『四国御膳』という味噌を使いました。甘口で少量でも満足できる味です。疲れているときは、ちょっと多めに入れるのもいいですよ」

主菜がなくてもいい日もあるんだと思ったら、気持ちがラクになりました。お味噌汁がおかずの代わりになるなら、忙しくても、体調が優れないときも、自炊ができそうです。

つづく後編では、具材が多めで、お腹も満足できる、まさにおかずのような一杯を教えていただきました。また、お味噌汁の具材がマンネリになったときに役立つアイデアも、併せてお届けします。

(つづく)

 

【写真】濱津和貴


もくじ

 

料理家・堤 人美

料理家として、身近な食材や調味料を活用した、誰でも作りやすいレシピを提案し、テレビ番組や雑誌、広告など幅広く活動。今までに食べたことのない、新しいおいしさへの導くアイデアにも定評があり、心をぎゅっとつかむ料理の数々は、くり返し作りたくなるものばかり。著書も多数。

堤 人美さんの著書はこちら

 


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