【年内最後の店長コラム】愛おしくもあり手強くもある「責任感」との付き合い方。
店長 佐藤
クラシコムという会社をつくって13年目。会社設立よりは一年後輩である「北欧、暮らしの道具店」という店も12年目に突入しています。
兄とふたりだけで始めたクラシコムですが、ありがたいことに現在では60名弱のスタッフに囲まれて仕事をすることができています。
2人 →→→ 60人
この人数の変化を文字にすると「10年以上の時間をかけて地道にスタッフが増え、おかげでトライできることも増えてきたんだよなぁ」となるのですが、実はこの「→→→」のなかには会社としての成長だけでなく、自分自身の数え切れないほどの葛藤や喜び、迷いや揺れというものが詰まっていたりもします。
「→→→」のなかで、自分自身の弱さと対峙させられるシーンは山ほどありましたし、同時に強みを発見させてもらえることもありました。
特にマネジメントという仕事と向き合ってきた10年以上の時間のなかで、ひとりの人間として本当に多くのことを学ばせてもらっているように思います。
今年味わった考え方の転機。
「2018年を振り返って、わたしが一番学ばせてもらったなぁと思っているのは『スタッフを信じる』ということです」。
つい先日行われた会社の忘年会の締めに、みんなの前でわたしが話したことの一部です。
(会社の忘年会でケータリングメニューの説明を釘付けになって聞いているスタッフたち)
かなり酔っ払っていたし、感極まって涙があふれたりもしてしまったので、なんと言ったのか正確ではないかもしれないけれど、加えてこんなことを話したと記憶しています。
—————–
「もちろん、今までだってみんなのことを信頼していなかったわけではないんです。
わたしは責任感が強い人間で、関わっている仕事の成果にしっかりコミットしたい。みんなの努力を無駄にせずしっかりと成果や喜びに繋げなくては。
そういう責任感ゆえに、自分からして違うなという方向にみんなが行っているように感じられたとき、かなり早めに「違う違う」と正そうとしていたように思います。
でも、今年あるタイミングでそういう自分の責任感がボトルネック(制限)になっているなと気づく瞬間があったんですね。
そう気づいてからは、言い出しっぺは自分かもしれないけれど、それをみんながどんなふうに進めていくのか。失敗があったとしてもそれをどうみんなが振り返って違う方向に舵をきっていくのか。
それを待ってみることで、もしかしたら自分もまだ思い描けていない景色を一緒に見られるかもしれないと思うようになりました。
今年の後半、まさにそういうことが幾つか起きて、これまで以上にスタッフへの信頼が強まりました。
そういうふうに信頼できるみんなと働けていることを、幸せに思います」
—————–
「責任感」は決して無下にしていい資質ではないと思うし、自分の強みでもあると思うので、この先も否定するつもりはありません。
だけれど、その「責任感」がチームで仕事をするときに、マネジメントをする立場になるときにある制約を生んでしまうことがあるのかもしれない、と気づけたのはわたしにとってひとつの転機だったように思います。
そして「責任感」というある意味では良い動機ゆえにこれまではそうしていたんだと、過去の動機をいったん肯定的に見ることができたのも大きかった。
これまで力んでなかなか緩めなかったシーン。それらひとつひとつが「責任感」からだったのであれば、あれはあれでよかったのだと肯定できたこと自体が、次のステップに向かって力を緩めてくれることになるというのは自分でもとても意外な発見でした。
これまでの自分を「否定」してから次に向かうんじゃなくて、いったん「肯定」してあげられることが次なる変化に向けて足どりを軽くしてくれる。
今年発見した、このどこか身体性をもった気づきを、この先の人生でもずっと大事にしたいと思います。
「責任感」というグローブ。
思えば、この「責任感」というやつはなかなか愛おしくもあり、手強くもあり……。
スタッフから悩みを打ち明けられればなんとか役に立つことを返さなくてはとなる。
「こういうことに今モヤついているんです」と相談されれば「だよね、だよね。そういうふうにモヤつかせているのはちゃんと説明できてない経営にも責任があるよね」なんて、なんだって責任感というグローブでバシッと受け止めようとしてきました。
その場で言葉を探し、必死で答えようとしてきました。
相手の話を聞きながらも、次に自分が言うべき言葉を頭のなかではグルグルと探し回っていました。
でも、この責任感というものと、もっとチャーミングに付き合えるようになりたい。と願うようになってからは、本当に少しずつ少しずつですが、スタッフが話してくれることが本当の意味で聞こえるようになってきた気がします。
それは次になんて返そうか、とあまり考えていないから。
ただ、話す。ただただ、聞く。
最近、わたしの管掌部門のマネジャーとも時折集まって「ジャストトーク ノーアンサー」会という名の飲み会を開くことがあるのですが、「ただただ思ってることを話そう。この場には決定や回答はなくていいんだから」という場がわたしにとっても最高に楽しい場になっています。
もちろんひとりの経営者として、ちゃんと答えたり決めたりしなければいけないシーンはこれからも山ほどあると思います。
だけれど、自分にも今は答えがない、わからないんだ、と言うことは決して恥ずかしいことではないんだと、共に働くスタッフとの濃い時間から教えてもらいました。
意見を聞かせてくれ、助けてくれ、とお願いするのも「無責任」なことじゃないんだと。
これまでいつでも本気でボールを受け止めようとしすぎて、くたびれかけていた「責任感」というグローブも、これから先はいい具合にくったりと柔らかく、お茶目なグローブになっていけばいいなぁなんて思っています。
迷いの森から出たり、きっとまた入り込んだりの繰り返し
こんなことを書いていても、来年の年末にはまたきっと違う迷いの森に入り込んでいることでしょう。
会社の人数が「2人 →→→ 60人」の間に繰り返し同様の葛藤があったように、これからもそれを繰り返していくんだと思います。
迷いを抜けたと思ったら、また違うことで迷う。
でも、それらを共にできるスタッフがいることに加え、こうした私たちの試行錯誤のアウトプットをあたたかく受け取ってくださるお客さまがいてくださることにも心から感謝しています。
今年最後の店長コラムとなりました。
2018年も「北欧、暮らしの道具店」をご支援くださり、本当にありがとうございました。
昨年から各地をイベントで回ってきましたが、そこでお会いできたお客さまのことを思い浮かべながら、そして全国にはきっと同じような素敵なお客さまがたくさんいらっしゃるのだと想像しながら走りつづけることができました。
来年、そして実はすでに再来年のことなども考えて、引き続きお客さまに楽しんでいただけるよう様々な企画を仕込んでいます。
「どんなモノやコトが出てくるのかな」とご期待いただければうれしいです。
それでは、みなさまもどうぞ良い年をお迎えください。
2018年12月26日
北欧、暮らしの道具店
店長 佐藤友子
— みなさんへ追伸 —
今年チャレンジした仕事のなかでもインターネットラジオを始められたことは大きかったです。
「実は聴いたことなかったけれど初めて聴いてみたらハマっちゃいました」というお声をいただけることが多くて、女湯のようなゆるくも結構熱いおしゃべりを繰り広げる励みになっています。
ぜひ年末年始のおやすみにゆっくり過去の放送回も聴いてみていただけたらうれしいです。
・第11夜「大人の進路相談室。私が大切にしてきた価値観って?」
・第12夜「大人の進路相談はつづく。紆余曲折の人生、働くってなんだろう?」
の回は特に反響が大きかったです。
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