【ケの日のこと】娘が苦手な野菜を食べるようになったワケ

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第30話:季節の野菜があるケの日


 

去年の秋から、ご近所の農家さんに家まで野菜を届けてもらうようになりました。

今住んでいる里山には、有機野菜を作っている農家さんがたくさんいます。畑を耕して、野菜を育てて、種をとって……と丁寧に作られる野菜たち。すごい仕事だなあと思うのですが、そんな野菜は大量に作ることはできないから、大手の流通に乗せることは難しく、仕事として成り立たせるには課題もたくさんあることを知りました。せっかく近くにいるのだから、ぜひそんな人たちが作っている野菜を買いたい!と思っていたところ、ある農家さんの野菜を週に一回届けてもらえることになったのでした。

初めて届いた日、娘が「あの優しいおじさんが作った野菜食べたい!」と言って、自ら包丁を持ってカブを切り、そのまま食べ始めたのでびっくりしました。だって娘は生のカブが苦手だったのです。モリモリ食べながら「美味しい〜! どうしてこんなに美味しいの? きっと気持ちをいっぱい込めてるからだよ!」というから更にびっくり。それ以来毎週「野菜きた〜?」と届くのを心待ちにしている娘。ちょっと苦手な野菜でも「おじさんの野菜だよ」というと頑張って食べるようになりました。そんな姿を見ながら、作る人の顔が見えると、自然と感謝の気持ちも湧くのだなあと思います。

もうひとつすごく良かったな、と思うこと。それはその時その時にとれる旬のものが届くので、我が家の「ケの日」の食卓に自然と季節の野菜を並べられるようになったことです。冬は毎週大根やサトイモやキャベツ、ニンジンなどが届きますが、本当に美味しいので飽きることはありません。

季節の移り変わりの中で芽を出し、花を咲かせて、実がなる。そんな自然のサイクルの中で野菜は育つものなんだな、という当たり前のことを改めて感じます。

夏野菜のトマトが来ることはないので、お弁当の隙間をミニトマトで埋め、彩りも加える……なんてことはできなくなり、なんともくすんだ色ばかりのお弁当に苦笑いしてしまう時もありますが、そんな時は赤大根の赤で乗り切ることも覚えました。少しの不自由さの中に新しい学びや発見もある。野菜を通してそんなことを感じている最近なのでした。

 

 

【写真】中村暁野

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、2歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。『家族』2号が1/14に刊行。現在販売中。http://kazoku-magazine.com

 


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