【特別じゃなくても】第2話:「ふつう」って、価値あることなのかもしれない

編集スタッフ 松田

特別なことばかりを追いかけてしまう日々に疲れたとき、松田が「ふつうでいいのかもしれない」と思えてホッとできた場所、「定食あさひ」。

第2話では、「定食あさひ」の日野夫妻に話を伺い、ホッとできる「ふつう」のよさや居心地のよさの理由を、ひもといていきたいと思います。

 

気合いを入れすぎると、相手まで緊張させてしまう

定食あさひの定番メニューは、唐揚げ、しょうが焼き、干物の焼き魚、そして日替わり。

外食であることには変わりありませんが、誰もがおなじみと思える料理ばかり。味つけも、家で作って食べるような味に近い、優しい味わい。珍しいメニューはひとつもありません。

「僕は、毎日ごちそうだとか、美味しすぎるものを食べることって、もしかしたら疲れることなんじゃないのかなって思うんです」と、店主の日野泰彦(ひのやすひこ)さんは話します。

泰彦さん:
「こっちも気合い入れて作って出すと、その分、お客さんもやっぱり緊張するじゃないですか。それより、食べてホッとするぐらいの味のほうが、ありがたいこともあるんじゃないかなって思っていて。例えば、ひじきの煮物みたいな。すこし肩の力が抜けるものをあえて出したい。だから、目新しいものはメニューにありません。

お店にきてもらって、気持ちのいい満足感で帰ってもらうのが理想なんです。緊張して疲れたり、胃もたれしたりして帰ってほしくないというか。とにかくホッとしてほしいっていうのが、一番でしょうかね」

 

毎日食べても飽きない。疲れない食事でホッとしてもらえたら

もともと、料理をつくるのが好きだったと話す泰彦さん。お店を始める前はカフェで働いていた麻子さんと夫婦二人三脚で、お店を切り盛りしています。

そもそもどうして「定食」だったのでしょうか?定食屋を始めた理由を伺いました。

泰彦さん:
「お店を始めたいと思ったとき、ワンプレートのカフェをやろうかと考えたこともありました。でも、お店のまかないで自分たちも毎日食べると考えたら、やっぱりごはんとお味噌汁中心がいいなぁと思ったんです」

麻子さん:
「ごはんとお味噌汁は、日本人みんなが毎日食べても飽きないもの。だから、幅広い年齢層の方にお店にきてもらえるんじゃないかって思ったのもあります。それで定食やに決まったんです」

▲撮影時には3歳になる息子さんも一緒でした。

 

「自分の子どもに食べさせたいか」を基準に

メインの料理だけでなく、小鉢の漬物やおかず、ごはん、お味噌汁が、どれをとっても美味しい。これが定食あさひの魅力でもあります。

その理由は、良い素材を使うこと、そして手をかけすぎないことにありました。仕入れに時間がかかっても、たとえ原価が上がっても、ここだけは譲れなかったのだそうです。

泰彦さん:
「出来るだけ良い素材を使いたい。お米は島根県の減農薬米、お肉はつくば鶏や北海道の放牧豚など、全て自分自身が食べておいしいと思えるものです。そうして仕入れた良い素材を、なるべく手をかけすぎず、シンプルに調理して食べてもらう。それは開店当時から変わりません」

泰彦さん:
「食べてくれるみなさんが健やかでいてほしいという願いもあって。化学調味料や既製品のものも、なるべく使わないようにしています。

自分の子供に食べさせたいかどうかというのが、ひとつの基準になっているかもしれません」

▲つくば鶏のからあげ定食は、小鉢とぬか漬けもついて850円。

麻子さん:
「良い素材は原価が高くなるけれど、お金儲けのためだけに始めたことじゃないから、しょうがないかなって。

いまは目の前のお客さんに気負わず美味しく食べてもらうこと、そのことだけを考えている感じです」

 

気負わないやさしさが、心地よい

注文したあと、決まってすぐに「どうぞ〜」とぬか漬けと副菜の小鉢が出されます。定食が出来上がるのを待つ間、お腹をすかせたお客さんがつまめるようにという、泰彦さんの心遣いから生まれたサービスです。

「小鉢食べながら待てるのが嬉しいです」と伝えると、「こっちも時間稼ぎになるしね」と照れるご主人。ですが、ぬか漬けも副菜も、手間のかかった心のこもる一品です。

「唐揚げ熱いので気をつけてくださいね」
「ごゆっくり召し上がってください」
「よかったらお茶のおかわりどうですか」

食事中、こちらの様子をみながら、ほどよい距離感で話しかけてくれる日野夫妻。その声はごく自然で穏やか。

「気負わず、美味しく食べてほしい」という思いがそのまま声に表れているようで、つられてこちらも温かい気持ちになれるような気がしました。

それもまた、この場所の居心地のよさの理由のひとつでもありました。

 

「ふつう」って、価値あることなのかもしれない

今回、日野夫妻にお話を伺い、お店にはじめて訪れたとき「ふつうでいいのかもしれない」と感じたわけが、ひとつひとつ繋がっていく気がしました。

定食あさひさんの「ふつう」は、「安心してホッとしてほしい」「日々を健やかに送ってほしい」という日野夫妻のまっすぐで温かい思いが形になったものでした。お二人のつくる空間や定食のさまざまな部分から、そんな想いが優しく伝わってきたから、気負わず美味しく食べることだけを楽しめたのだと思います。

同時に、自分がいつも「ふつうだなぁ」と軽視していたことにも、価値があるのかもしれないと思いました。

自分が素直に選んだものやことが、たとえ周りと比較したとき代わり映えのしない「ふつう」だったとしても。わたし自身が心地よいのなら、それでいい。そう思えたら、もう少し肩の力を抜いていろいろな物事と向き合えそうです。

 

大切なのは、何が心地よいのか考えること

とはいえ「特別」に憧れる自分はこれから先も変わらない、とも思います。だって特別なものはやっぱりキラキラと素敵にみえるし、そうした背伸びが自分を成長させてくれることや、新しい自分を発見できるときだってあるから。

「特別」があるから、「ふつう」のよさがある。

「特別」と「ふつう」とを行き来するなかで、いまの自分にとって居心地のよいのはどちらか。それを考えることが、大切なのかもしれません。

最終話では、ご主人が「定食屋をはじめる時、一番最初にやろうと思った」という定番メニューの生姜焼き、そして小鉢の副菜・おからのレシピを教えてもらいました。

いつもの定番料理にすこし自信をもてる、そんなレシピです。

(つづく)

【写真】木村文平

 

もくじ

 

定食あさひ

2014年開店。日野夫妻が営む定食や。
住所:東京都三鷹市下連雀2-23-15
電話番号:042-224-8071
営業時間:12:00〜14:00 L.O. 18:00~22:00 L.O.
定休日:火曜・水曜
アクセス:JR中央線三鷹駅南口徒歩12分

 


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