【頑張らないおもてなし】前編:椅子不足から玄関の匂いまで。おもてなしの悩みはこれで解決!

おもてなしというと、ご飯や準備をつい気負ってしまいがち。でも、食器や椅子が揃ってなくても、飲み物やメニューが特別でなくても大丈夫だそう。ホームパーティーやおもてなしをグッとラクに楽しむためのアイデアを、フードプロデューサーのまきあやこさんに聞きました。

編集スタッフ 糸井

 無理せず、おもてなし上手になりたくて

出会いが増える4月、そしてGWに向かって、自宅に人を招く機会が増えるという方もいるのではないでしょうか。

ゲストに喜んでもらえるようにと意気込む反面、「こんな場合はどうしたら……? 」という不安も多いもの。

たとえば準備、片付け、当日の段取り。頑張りすぎず、ラクにこなせて、だけど自信を持っておもてなしできたらいいのだけれど。

そこで相談に伺ったのが、当店の社食を担当してくださっている、おもてなし上手のフードプロデューサー・まきあやこさん。

お話を聞いてみると、自宅に友人を招いてごはんを振る舞っていた経験が、今の仕事にも繋がったのだそう。

訪れたのは穏やかな午後、スタッフから寄せられた「おもてなしの悩み」を打ち明け、アイデアを教えてもらいました。

 


こんなときどうする?

もっとラクに楽しめる! おもてなしアイデア


「はじめの雰囲気づくりに悩んでいます」

▲右の瓶は、柑橘やジンジャー、スパイスをあわせた自家製シロップ

まきさん:
「みんなが揃うまでは、どこかそわそわしてしまいますよね。このとき後から来た人が『待たせちゃったかな』と気を揉まないように、着いた方からウェルカムドリンクを出すことが多いです。

お茶を淹れたり、クラフトビールを冷やしておいたり。女性がメインの時は、華やかな『苺のシャンパン』もよくお出しします。

グラスにシャンパンやスパークリングワインを注いだら、苺を切って浮かべるだけ。アルコールが苦手な方には、炭酸水にシロップを混ぜたものをベースにします

▲食用のお花を浮かべても。ソーダには、ミントやローズマリーで香りづけしても合うとのこと

まきさん:
「スーパーで簡単に手に入るもので、気楽につまめるものを用意してもいいですよ。サラミやチーズを並べたり、ピクルスやチョコもいいですね

 

「器がバラバラで、テーブルセッティングに
自信がありません……」

▲「私も器などは2つずつしか基本持っていないんです」とまきさん

招く人数に対して、食器やカトラリーが足りないことも多々あります。あるものを寄せ集めると、サイズも柄もバラバラで、テーブルセッティングをしようにも、統一感が出ないんです。

まきさん:
「そんな時は、ダイニングとは別のスペースに食器類をまるっと積んで、ゲストに器を選んでもらうセルフスタイルにしちゃいましょう。

ゲストも、お客さんとして座っているだけだと、緊張がほぐれないもの。各々が好きに選べるようにしておけば、自分の家のようにリラックスできる空間になっていきます。

誰でも自由に取れるから、もし途中で『本当はスプーンを使いたいけどホストに言い出しずらい……』と遠慮される心配もないですよ。

不揃いなカトラリーはグラスに立てて入れておくと、取りやすく、見た目もかわいいです」

まきさん:
「お皿がそもそも足りなければ、使い捨てのものも有用です。ちょっとした紙袋にセットしておけば、見た目もワクワク。色味を合わせたり、紙ナプキンを添えたりすれば、それだけでも素敵です。

もの不足の悩みは、おもてなしにつきもの。いっそストレートに『グラスが足りないから、自分の好きなグラスを1つ持参してね! 』とゲストにお願いすることもありますよ〜」

他にも、スリッパの備えがなければ『履きたい人は持ってきてね』と伝えるのもひとつの手とのこと。そうしてゲストも自然に巻き込むのも、おもてなしをラクに楽しむコツかもしれませんね。

 

「椅子の数が足りない! どうしたら……?」

▲高さのあるプチテーブルがあるとより安心とのこと。手前のものは、ガラスの花瓶に木のプレートをそのまま載せた「即席テーブル」

まきさん:
「椅子やテーブルが足りない時は、思い切ってテーブルを端に追いやり、床に布を敷く『お家ピクニック』はいかがですか。

空いたテーブルの上にごちそうを並べてビュッフェ形式にすれば、動線もスムーズ。普段味わえないシチュエーションなだけにワクワク感もひとしおです。

ラグはもちろん、比較的洗いやすい大ぶりの布などでもいいですね」

 

「玄関の匂い対策、どうしていますか? 」

「家の匂いが気になる」と悩むスタッフは、実はかなり多かったんです。なにか香り対策で心がけていることはありますか?

まきさん:
「最初に匂いを感じられる玄関には、お気に入りのルームスプレーをひと拭きしておくことが多いですね。

私自身は、料理の香りに食欲をそそられるのが好きなので、リビングに入ったあとはごはんの匂いをいっぱいに楽しんでもらえばいい! と割り切っていて。それも、ゲストにとってはリラックスに繋がればいいなと思っています

 

「お開きのタイミングが
上手く掴めずにいます」

最後に聞いてみたかったのは「終わりのタイミング」の切り出し方について。お互いに「そろそろいい時間……」と思っている気がするのに、どちらも言い出せずにそわそわしてしまいます。

まきさん:
「気持ちよく終わりたいからこそ、タイミングを見つけるのって難しいですよね。

私もずっと悩んでいましたが、ある日『締めの一杯で、コーヒーを出せばいいのでは? 』と思い付き、これが良かったんです。豆を引いたり、お湯を沸かしたり、用意できるまでにゆるやかに時間が流れることで『あ、そろそろ終わりだな』という認識をシェアできるようで。香りで場面がうまく切り替わる効果もありますね。

それに『そろそろコーヒーでも飲む?』と切り出すと、『飲みたかったの! 』という方も多いので、満足感にも繋がっています」

▲お土産でもらったお菓子を付けてもおすすめのようです

 

『ホストとお客さん』ではなく『友人同士』という雰囲気づくりを

まきさん:
「お招きはしているものの、いつも大切にしているのは『ホストとお客さん』ではなく『友人同士』という関係性。もてなす時に悩みがあれば、言ってしまった方が相手も嬉しいと思うんです。この時間はみんなのための時間だから。

それにゲストも、ただ座ってるより巻き込まれた方が主体的に参加できて、自然とリラックスできる気がします」

そんなまきさんも、どうやら片付けは苦手のよう?

まきさん:
「お掃除がすごく苦手なんです。とはいえ、ある程度は片付けたいから『いつも掃除していないあそこを掃除できる機会だ! ラッキー! 』と気持ちを上げて掃除しています。

後片付けは、疲れていたら翌日にすることもあって。みんなで過ごした楽しい時間が疲れに変わりそうだったら無理はしない! がモットーです」

▲「普段は置かない洗面所にお花を生けるのは、自分へのごほうび感もあって、お気に入りのおもてなしです」と、まきさん

あれこれひとりで解決しようとすると、手が何本あっても足りないもの。ゲストに上手に頼り、みんなが気負わず楽しめるおもてなしのアイデアを、まきさんに伺いました。

無理のしすぎは禁物だけど、これなら私にもできるかもしれない。すべては、お互いが心地よく、一層朗らかな関係で過ごせる時間でありたいから。

次回は、社内のおもてなし経験者に、おもてなし力がなくても楽しめる「テーマのある会」について聞いてみます。

(つづく)

【写真】鈴木静華


もくじ

まきあやこ

料理家 Food producer / stylist、ケータリングチームPerch.主宰。テーマ性のあるオーダーメイドのケータリングやお弁当、イベントでのフードコーディネーションを手がける他、フードスタイリング・レシピ開発などを中心に活動中。

▼まきあやこさんの著書はこちら

 


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