【バイヤーのコラム】そうそう、この味だ。

バイヤー 石谷

同じ時間を過ごしていても、記憶の残り方って違うんだなあ。

そう思わずにはいられなかったキッカケは、「水出し茶」に挑戦してみたことでした。

 

「お茶を沸かす」という作業がどうも億劫で、わが家のお茶といえば市販の2Lの麦茶。

毎日出てしまうペットボトルのゴミを見ては、「なんとかしたいなあ」とは思いながらも……。

帰宅後ヘトヘトの体でキッチンに向かい、夕飯の支度をした後に、さらにきちんとお茶まで沸かしている自分の姿が、まだどうしても想像できないものだから。

これまでずっと手付かずの状態だったのです。

そんな私が、自家製お茶生活をスタートしようと思ったのは今年の5月。

季節外れの暑さで、いつにも増して喉はカラカラ。ペットボトルのお茶ストックが瞬く間に無くなってしまって。

「今の時期からこんな気温じゃ、夏が終わるまでにあと何回、買い足さないといけないんだろう……!」

そんな状況にお尻を叩かれるかのように、お茶づくりセットを探しはじめました。

が、灯台下暗しとはまさにこのこと。

当店でも販売している※ フィルターインボトルがあるではないかと!早速迎え入れてみたのです。

(※ 好きな茶葉+お水を入れて、冷蔵庫で3時間ほど寝かせておくだけで水出し茶がつくれます。)

スーパーへ向かい、直感でなんとなく美味しそう!と思って購入したのは「そば茶」。

家に帰って、楽しみにしていたそれを入れて、寝かせること約3時間。

飲んでみてびっくり。

すごく懐かしい味がしたのです。

偶然選んだ茶葉だったけれども、それは、私が小学生ぐらいのまだ幼い頃、実家で飲んでいたお茶に本当によく似ていた。

母が毎日沸かしてくれていたお茶。

今の今まで忘れていたけど、舌っていつまでも覚えてるんだなあ。

それから時は過ぎ、梅雨もはじまったある日のこと。母が東京にやってきました。

私の家に泊まるというので、これはしめしめ。

例のお茶を、母に出してみよう。きっと「懐かしい!」と、なるはずだ。

ソファーでひと休みする母に、お茶を差し出すわたし。

内心にやにやが止まりません。

しばらくして「このお茶どう?」と、母に聞いてみると「美味しいね、なんのお茶?」との返答。

 

…… 特に懐かしむ様子はありませんでした。(笑)

同じ時間を過ごしていても、記憶の残り方って人それぞれなんだな〜。

そんなことを思いながら、「そば茶だよ」と教える私。「へ〜美味しいね。いいね」と母。

簡単に作れるのでおすすめしていると、「試してみたい!」とのことだったので、実家にもフィルターインボトルを送りました。

けれども「茶葉」は添えずに、送ったのはボトルだけ。

新しい道具を手にしたときの、「これどう使おう?何入れよう?」と考えるのはきっと楽しい時間になるし、母が選んだお茶を飲んでみたい、と思ったから。

「懐かしの味」はずっと一緒でなくたってもいい。

また違った新しいお茶でも、これから実家に帰るたびに飲めば、それがこの先の私にとって「懐かしの味」になると思うのです。

 


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