【訪ねたい部屋】第3話:暮らしながら変えていく。身近なものを使った、生活の知恵

ライター 藤沢あかり

友人の部屋を訪れたときの、わくわくするような気持ち。そこには、「その人らしさ」を知る嬉しさや楽しさがあるのかもしれません。

お宅を訪問し、インテリアを拝見しながら「その人らしさ」を紐解く特集「訪ねたい部屋」を全3話でお届けしています。

今回は木工作家のうだまさしさんを訪ね、古い木造の平屋を改装した、自宅兼ギャラリーを拝見。

最終話となる3話目では、住まいのあちこちに潜むアイデアや、ものづくりと家づくりの話をもう少し詳しく伺います。古い家を存分に楽しむアイデアは、きっと、あなたの暮らしも「ちょっとおもしろく」してくれそうです。

 

暮らしの助けとなる、ユニークな仕掛けいろいろ

見慣れた日用品や、ちょっとしたスペース。そんな当たり前の風景が、ちょっと見方を変えるだけで、大きく変わる、便利になる。うださんのお宅にある、そんな小さな「おや?」から、真似してみたくなるアイデアをご紹介します。

たとえば、玄関の天井からぶら下がっているのは、古いトタンのバケツ。

中には、外出用の家族の帽子が。

さらには、裏庭に面した仕事部屋の窓辺も、こんなふう。

壁にはピンチハンガーがずらり、天井からぶら下がるカゴに入っているのは、洗濯用のハンガーです。これなら、腰をかがめることなく出し入れもスムーズ。裏庭に洗濯物を干すので、洗濯グッズはここにあるのがベストなんだそう。

 

うださん:
「できるだけ床に置くよりも吊り下げることで、掃除をしやすくしています。それに、すぐに使うものは目に触れているところにあるほうが便利なんです」

ぶら下がっているといえば、仕事関連の書類や保育園からの手紙など、増えてしまう紙ものも、こんなふうにジャンル別に管理しています。仕掛けはシンプルで、壁に打った釘にクリップをかけるだけ。

無造作な生活感が、かえって重なる暮らしの厚みを感じさせてくれるようです。

 

一枚の板から生まれる、新しいスペース

うださんのお家のしかけには、あちこちに「板」が活用されています。たった一枚の板を取り付けるだけで、こんなにスペースの活用の幅が広がるなんて……木工作家ならではのアイデアには、取材陣も興奮気味。

その一部をご紹介したいと思います。

そのひとつが、リビングの柱。充電中のスマホを置く小さな特等席をつくりました。

さらにこちらは、窓の木枠のヘリをいかして、板を一枚固定。これだけで、ちょっとした収納やディスプレイのスペースが生まれます。天井を壁を見切るまわりぶちにも、フックや釘を打ち、書類をぶら下げる場所として活用しています。

うださん:
「暮らしながら、『ちょっとこうしてみようかな?』と考えるのが、すごく楽しいんです。

普段、仕事では自分のカトラリーを使ってくれているお客さまを想像しながら作っています。自分と妻と、子どもが暮らしている家では、家族それぞれのことを考えて、使い勝手を想像しながら手を加えていくんですよね。

家づくりに向き合ってきたことで、そうやって考えることが増え、視野も広がってきた気がしています」

 

受け継ぎ、思いや時間を貯めながら重ねていくもの

古い家屋を受け継ぎ、そこに自分たちらしい新たな価値を重ねて暮らすうださん一家。

「作ったものは、できるだけ長く使い続けたいですよね」と話す言葉には、うださん自身の若い頃のかけがえのない、でもちょっぴりほろ苦い経験がありました。

うださん:
「学生時代はデザインや舞台美術について学び、卒業後は大道具を手がける会社でものづくりをしていました。

大道具というのは、舞台やテレビの演出に使うセットです。大掛かりで華やかな世界ですが、反面、その場限りの大道具は、作っては壊される世界でもあるんです」

たくさんの人と一緒に作り上げる舞台やテレビの世界。その一瞬にかける情熱もすばらしいものですが、うださんは、その儚さに少し寂しさを覚えてしまったと言います。

すぐに壊されるものよりも、ずっと長く大切にできるものを作りたい。そう考えたときに、次に扉を叩いたのは、家具工房でした。

▲ギャラリー『Ūca(ウーカ)』には、うださんの作品のほか、友人作家の作品やセレクトした雑貨も並ぶ。

うださん:
「そこで、家具づくりを学びました。そのかたわらで、少しずつスプーンのような小さな作品もつくり始めたんです。

実は独立したときも、家具でやっていくつもりだったんです。でも、家具づくりって、1人でやっていても売れないんですよね。建築事務所や工務店などと一緒になって売り込んでいかないといけないんです。でも自分には、それがうまくできなかった」

そんな中、プライベートで続けていた小さな作品づくり。クラフト市で出店していたうださんのスプーンやカッティングボードを手に取ってくれる人が少しずつ増えていき、やがて導かれるままに歩んだ先に、今の暮らしがありました。

▲ギャラリーの一角に飾っている、スプーンを模したオブジェ。「アフリカの古いものだと聞いています」という、少し値の張るその品は、スプーンづくりを真ん中に据えてやってみようという決意を込めて買ったもの。念願のギャラリーが完成し飾られる姿は、じっと見守ってくれているようにも思えます。

カトラリーやお皿など、日常のすぐそばにある道具を作り始めて、8年が過ぎました。

うださん:
「大道具からスタートして、だんだんと人の手に近づいてきたな、という気がします。

ものづくりも、家づくりも、見た目だけじゃだめだし、使い勝手も含めて、いろいろな角度から見て考えることが大切です。使い手のことを思いながら、少し先のことを見据えてつくっていくことも、似ていると思います。

どちらも、すごくクリエイティブで、わくわくしますよね」

うださん:
「この家、昔は養蚕家だったそうで、蚕部屋だった屋根裏があるんです。いずれはそこをロフトにできたら楽しいなぁと考えています。ギャラリーをもう少し整えて、いつか予約制のカフェみたいなこともやってみたいですし、外壁も手を加えたいんですよね……」

まだまだ、やりたいことは尽きません。

木が、時間の経過やその人それぞれの使い方に合わせて、少しずつ表情を変えていくように、住まいも変化していきます。きっと、どちらも手入れをしながら長く使い続けていくからこそわかること。

住まいをクリエイティブに楽しむのは、作家さんだから特別だというわけではないはずです。わたしも身近にひそむ、「もっとこうだったらな」に、改めて耳を傾けてみたくなりました。

(おわり)

【写真】木村文平


もくじ

 

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卯田真志(うだまさし)

木工作家。1983年秋田県生まれ、千葉育ち。千葉県立市川工業高校インテリア科を卒業後、大道具会社に入社。壊される切なさを苦に、手仕事を生かせる道へ向かう特注家具を作る家具工房で勤務した後、鍛錬を重ねるため、城南職業訓練校にて学ぶ。2011年秋より「monom」として活動をスタート。現在は、展示会やクラフトフェアを中心に木の器・カトラリー・カッティングボード、ランプなど暮らしにまつわるものを制作する。http://monomusubi.com/

 

ライター 藤沢あかり

編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。

 


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