【お坊さんのお悩み相談室】第21回:同居している母との関係性に、モヤモヤしてしまいます。
編集スタッフ 岡本
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしのお悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
母親と同居しているのですが、母と私は性格的に意見がかみ合わないことも多く、モヤモヤしています。そんな私の態度に母も同じような心情になっているようです。どうしたらお互い幸せに暮らせるでしょうか。(スタッフK)
母親と子ども。とりわけ子どもにとって母親は、生まれたときからぴったりいつも一緒にいた人です。でも全く別の存在、別の人間です。
物心ついてしばらくはまだしも、その後は別の人達に囲まれ、違う場所に住み、違う仕事をして生きていきます。そもそも子ども時代、青春時代、働き盛りを生きる時代が違います。価値観も生活スタイルも、何もかも違って当たり前ですよね。
さて、「諸行無常」という有名な言葉があります。すべてのものは移り行く。どんなものでも何も変わらないということは決してない、ということを教えている言葉です。
親も子どもも変わります。関係性も変わります。いつも自分を見守り、先回りし、察し、譲ってくれていた親を、自分はいつの間にか通り越しています。気がついたら自分のほうが頼られる存在になっている。その関係性の変化に、親も子どもも順応するのに時間がかかるのですね。
良くも悪くも、変化は避けられないものです。であれば、それでも心地よく暮らしていくためには、その変化を楽しむしかありません。あるいは、楽しめないまでも受容するしかありません。黙っていても変わっていく環境と違い、自分の気持ちを変えるには、すこしの努力が必要です。もちろん、そうとはわかっていても、簡単にはいかないからこそのお悩みなのでしょう。
一つ、いつでも心に留めておいて頂きたいのは、モヤモヤの原因はあくまでも人間関係だということ。うまくいかない原因はお母さんとあなたの「関係性」なのです。決して、お母さんが悪い、あなたが悪い、ということではありません。昔はこんなんじゃなかったのに、と過ぎたことを言っても詮無い(せんない)ことです。
いま、どんな関係なのか、どんな関係でいたいのかをよく考え、そこに至る努力をしてみてはいかがでしょうか。お互いに冷静になれないようでしたら、少し距離を置いてみるのも一計ですね。ちょっとした態度や言葉遣いで間合いを調節することでも、効果はあるかもしれませんよ。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
▼これまでの連載はこちらから
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