【ラジオ|チャポンと行こう!】第172夜:カゴ愛、再燃中! シルバニアや赤毛のアンなど、カゴ好きのルーツも紐解いてみました
【スタッフコラム】不自由な洋服えらび
編集スタッフ 齋藤
きっかけは、絵を描きはじめたこと、でした。
私は10代ずっと絵を描いて過ごしていたのですが、20代に差し掛かった頃に急に何も描けない気がしてパッタリ絵をやめました。
それ以来とんと遠ざかっていたけれど、30歳を超えた今急に、また描きたいなぁと思ったのです。はじめこそ長いブランクを前にたじろいでいたのですが、描きはじめたら体が水を求めるように自然と、けれどぐいぐい描きたいものが出てきて、いつの間にか部屋には小さな作業スペースが出来上がりました。
そしてそれに合わせて着るものも、自然と変化して行ったのです。
絵を描き始めるまで、私は「何を着たら良いのかさっぱりわからない」という状況にいました。
自分で稼ぐようになった20代の前半の頃は、似合うものなんてわからないからとにかくあれやこれやと試せればそれで良かったのです。一度は着てみたいと思っていたブランドを着てみたり、今思い返すと動きづらくてしょうがないのによく着ていたなと思うような装飾のある服を着てみたり。
それはそれで楽しかったのですが、試し続けるということは自分の可能性がどこまでもあるような気分になれて楽しい反面、ずっと正解のない日々を生きるようなもので、正直つかれたなぁとも思っていました。そもそも試していた理由は自分だけのスタイルを探すためだったのに、気づけばどんどん迷宮入りをしていたのです。
そんな状態で、またまた試着したりヘアスタイルを変えてみたりメイクを変えてみたりしていたのですが、やっぱりどれもこれも「違う」と感じてしまう。
ですが絵を描くというライフスタイルができてから、どの洋服を選べば良いのか明確にわかるようになったのです。
▲ユニクロのエクストラファインメリノセーターとスウェット。洗濯機で洗えるしすごく重宝しています。ゆるっと着たいので最近はメンズものばかり
すごく単純な話なのですが、絵を描くと服が汚れます。下描きで使う木炭はチョークのように粉が飛ぶので、気づくと服がうっすら黒くなっている。だから基本の服は黒が良い。
ただずっと絵を描いているのであれば汚れても平気な黒の上下でひたすら過ごすのですが、私の場合会社があるわけで。
そうなるともうちょっと気をつかったコーディネートにしたいなと思い、上着やアクセサリー、靴などの小物は黒という選択肢を避け、私のブルーベースの肌の色に合うようにベージュやホワイトグレーなどの色で揃えるようになりました。
▲emmiというブランドとコンバースのコラボスニーカーと、evam evaのリネンコート。Link(リンク)というブランドの風呂敷は、最近スカーフ代わりにしています。
たまに街を歩いているとお店に並んだ服が目に入って「なんてきれいなんだろう」と飛びつきたくなることもあるのですが、「汚すもんな」と思うと手が出ない。ある意味、洋服選びがすごく不自由になりました。
でも、本当に自分に必要なものを選択できているような気がして、悪くないなぁと思っています。
「あれも違う、これも違う」と悩んでいた日々は服がわからないというよりも、根本にはどう生きたらわからないとか、何を大切に日々を過ごせばいいかわからないなんていう想いがあったのかもしれません。
自分に合った装いというものは、生活や価値観など、土台ができあがった後にはじめてわかってくるものなのかもしれない、ふと、そんなことを思いました。
昔のように「憧れのブランド」も「憧れの服」ももうありません。けれど、選択肢が減り不自由になった今の方が、私にはおしゃれがずっと楽しいのでした。
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