【スタッフコラム】京都からやってきた、素敵なカップル
編集スタッフ 寿山
私には、京都に毋のように慕う女性がいます。学生時代に染色を教わった、型染め作家の方です。二十歳そこそこの田舎娘の目には、京都で生まれ育ち、ひとり染色で生計を立てている彼女の姿は、すごく眩しく映りました。
母親ほどに歳の離れた彼女の生き様も考え方も、清々しいほどにかっこよくて、すぐさま大好きになってしまったのです。
すっかり彼女に懐いた私は、会える機会があればどこへでも飛んでいき、作品展の手伝いをしたり、自宅に泊まらせてもらったり、はしご酒にお付き合いしたり。着物を着付けてもらう機会なんかもあって、いつしか親しみを込めて彼女のことを「京ママ」と呼ぶようになりました。
京ママは毎年秋、展示のために上京します。
そのタイミングで必ず会いに行っていたのですが、私の出産後は2年ほど会えない時期が続いていて、今年の秋に久しぶりの再会を果たしました。
会った瞬間に「ん?なんかいつもと雰囲気が違うぞ」と感じた私は、京ママが履いていたシルバーのサンダルを褒めます。聞けば、最近お付き合いしてる彼に選んでもらったサンダルだというではないですか。私の知らない間に、なにやら生涯を共にしたい相手に出会ったのだそう。突然のことで、もう喜びと驚きに心が追いつかないと思っていたら、「今日迎えに来るから、紹介するわ」と京ママ。
展開の早さについていけないまま会うことになり、私(と同行していた娘も)は案内されるままカフェの席につきました。「私の娘と孫、みたいな子らよ」と紹介されて、京ママの彼と、たまたま居合わせた彼の息子さんも含め5人でお茶をすることに。
嬉しいやら緊張するやらで、ひたすら場を和ませる会話の糸口を探しておしゃべりをします。ちょっとテンション高めの私に、落ち着いて受け答えしてくれる京ママの彼は、現代アートの絵描きさん。共通の話題はあるかなぁと宙を見つめていたら、穏やかな口調で息子さんの話をしてくれました。
「息子は、私の誇りです」といったニュアンスのことを、言葉数は少ないけれど、ストレートに気持ちを表しながら話してくれたのです。隣で聞いている息子さんも恥ずかしそうにしながら、「父こそ僕の誇りです」というような言葉を並べています。
京ママいわく、京都で暮らす彼と、東京で働く息子さんが会うのも久しぶりのことだったよう。
それぞれの気取らない、でも心が込もった言葉に「なんて素敵な親子なんだろう!」と、感動してしまった私。歳を重ねてから、こんな風にお互いを認め合って、敬意を表す親子に初めて出会いました。
普通なら照れるか、謙遜した物言いになってしまいそうなもの。それをサラリと格好よくやってのけるあたりが、京ママが選んだ人だなあと。そんな人が彼女のパートナーになったんだと思ったら、泣きそうなほどに嬉しかったのです。
後日、私も人前で娘を褒めるというトライをしてみました。いきなり他人の前ではハードルが高いので、とりあえず祖母へのテレビ電話中に。
「〇〇ちゃんは、もう一人で身の回りのことは何でも出来るんだよね~」と。
そしたら、首を斜め45度くらいに傾けて、でへへっと照れた顔のままフリーズした娘。それまで保育園のことを得意げに喋りまくっていたのに、突然のことに言葉を失ってしまった様子。
娘に直接「よくできたね~」とか「お利口さんだったね~」と言葉をかけることはあるのですが、人前で褒めたのは初めてのこと。どうしていいか、わからなくなってしまったようでした。
そのときの娘の “でへへ顔” が忘れられず、つい思い出しては笑ってしまいます。
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