【スタッフコラム】港町に住む、バレリーさんの赤ニット

編集スタッフ 糸井

服や雑貨を買うときに、これがどこからどうやって運ばれてきたのかを買い手に聞くと、素敵なエピソードが埋まっている。最近よく行く古着屋の店主は、そんなエピソードを沢山持っている人。主にヨーロッパのビンテージをストックしていて、夜遅くまで開店していて、こちらが話しかけると丁寧に教えてくれる、けれどいつもは寡黙な店主が営む。とてもおしゃれな店。

聞けば、元々6年間教師をしていて、そこからの古着屋開店という。

近所なこともあり2年前からたまに訪れるようになり、それなりにその店の服も手持ちに増えて、ある日、レジの前であれ?と思った。遠いヨーロッパの土地を歩いて見つけたこの服、どんな想いで買い付けてきたんだ。それが売れたときはどんな心地がするのか?

折角買ってきた服が売れて、もう会えなくなるのは寂しくないのかと、聞いてみた。

うーん寂しさ、ありますね。夏の昼間、汗だくで迷いながら自転車漕いで、握りしめる想いで買った一着とか。なんてこと、みずからお客さんに伝えることはしていないけれど。ここに並べている服にはどれも思い入れがあるよ、売る前に写真に納めて、いつでも寂しさは胸に留めています。

 

それから、ここで買うときは買い付け話を聞くようになった。この前は、このバレリーさんの赤ニットだった。

これはハイキングニット。ウール素材でできているのが珍しい代物です。毛玉もできにくいと思うから、長持ちすると思うよ。パリの12区に、行きつけの古着屋さんがあって、自分、そのお店が好きだったんです。そうそう。ヨーロッパに買い付けにいく時は、毎回買いに行ってたんだ。しばらくして、店長さんと仲良くなって、「お前はよく来てくれるから、オーナーに紹介してあげるよ」って言われて、オーナーさんの連絡先をもらったんですよ。それがバレリーさんだったんだけど。

彼女、普段は「サン=マロ」っていうフランスの北の港町に住んでる方なんだ。サン=マロ、素敵な町ですよ。彼女、そこに倉庫を持っていて、パリのお店に置けない在庫分をたくさん保管していたんだ。

もらった連絡先を握って、すぐにアポをとったら「倉庫にあるもの、見せてあげる」って言われて、日取りを決めて見にいったんです。それからは年に2回くらいかな、倉庫を直接訪れるようになりました。この赤いニットも、そこで何着か買ったうちのひとつだと思う、確か。や、パリの方のお店で買ったんだっけ……。どうだったかなあ、だけどバレリーさんから買ったことは間違いないです。

 

バレリーさんの顔をイメージで膨らませる。素敵なぼやけた赤。だけどその日は他のシャツを買うことになって諦めた。

でも、夜のベッドで思い返してしまう。フランスの北の、港町か。今の季節、どんな風が吹いているのか寒いのか。瞬間、イメージで固めたフランスの乾いた風に吸い込まれ、昼間きいたエピソードがもう染みついてとれない。ああ。明日、お店をのぞいてあったら買うと決めた。売れていたらショックだから、ソワソワしながら寝た。

起きたら朝になって、二日連続で訪れるのが、ちょっと恥ずかしかった。「たまたまこの近くに予定があったんです」って顔を作り込んだ、踏み入れた店内には、嬉しいかな、赤いニットが残っていた。


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