【お坊さんのお悩み相談室】第26回:人のためにと思いつつ、つい自分よがりな考えになってしまいます
編集スタッフ 岡本
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしのお悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
自己中心的な考え方になりがちで悩みます。「人のために」と心では思っているはずなのに、ことあるごとに自分の希望を通そうとする嫌な自分が出てきて、そんな自分に悲しくなることがあります。(スタッフS)
「人のために」という言葉はまさに魔法の言葉ですね。私達は子どもの頃からあらゆる場面で「相手の気持ちになって」「人のために」と言われてきました。
仏教でも「忘己利他」(もうこりた)という言葉がよく使われます。これは仏教の基本精神を表している言葉で、「自分のことを忘れ、他の人々のために尽くす」ことこそが理想的な生き方だと言われます。
今回はこの言葉について、2つお話をします。
一つは有名な植木等さんのスーダラ節より「わかっちゃいるけどやめられない」という言葉について。人のために尽くすのは良いことだ。ちゃんとわかっている。でも、ついつい自分の我が出てきてしまう。そんなんじゃいけないと思いつつ、ついつい出てきてしまうのを止められない。そんな気持ちに対して「わかっちゃいるけどやめられない」と言っているわけです。
別の視点から見れば、相田みつをさんの「そんかとくか 人間のものさし うそかまことか 佛さまのものさし」も、実は同じようなことを指しています。どこまでいっても、結局は自分にとっての損得という身勝手なものでしか物事を見られない私たち。人間なんだもの、そういうものなのだと自らを認め受け入れることが大切です。
もう一つ。こちらも有名なダライ・ラマ法王の言葉です。利他についてこのようにおっしゃいました。
「自分の利益を満たすには、他者に奉仕するのが一番です」
そしてそれに続けて「だとすれば、それを踏まえて、賢いやり方で自分の利益を追求なさい」ともおっしゃっています。
人間は社会の中で生きる存在です。自分の幸せを追求したとしても、自分だけが幸せで他のすべての人が不幸だということはなかなか成り立ちません。自分の家族や友人といった近しい人がまず幸せであること。そしてその近しい人たちの周りにいる人たちもまた幸せであること。そうやって幸せが広く連なることで、自身もまた自ずと幸せになっていく。自分ひとりの力のみでは幸せになれないのが、私たち人間です。であれば、他者の幸せのために心を砕くことが、「賢いやり方で自分の利益を追求」することなのでしょう。
自己中心的な考え方から離れられない。人間である以上、これは仕方のないことです。けれど、自己中心が過ぎると、周りの人が離れていく。それはすなわち自分の不利益になります。自分にとって居心地のいいようにするには、周りに目をやり他者の利益を考え、真に賢く振る舞うことが必要なのですね。
自分ばかり、相手ばかりではなく、みんなでちょうどよく幸せになる。そのような考え方を、日本では「三方良し」と言い、昔から大切にしているのです。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
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