【スタッフコラム】わたしが本を読む理由
商品プランナー 斉木
バッグの中に入っていないと不安になるモノ第1位は「本」です。どんなに荷物が重い日でも必ず1冊、読み終わりそうな日は2冊入れているし、枕元の積ん読が30冊以下になったことはここ数年ない気がします。
本好きスタッフと、「あの本どうだった?」と話すこともしばしば。ですが、そんなとき途端に口が重くなってしまうのは、あらすじや細かい描写をほとんど憶えていないから。主人公の名前すら怪しいときもあります。
自分は、物語にどっぷり浸かったり、何らかの体系だった考え方を知りたくて本を読んでるわけじゃないのかもしれない。じゃあ何のために? そう考えたとき、本を好きになった頃のことを思い出しました。
▲グッときたフレーズは写真に撮って、アルバムにまとめています
母曰く、わたしは幼い頃から何事も自分で決めたがる子だったそうです。そういえば、「どれがいい?」と母に聞かれるのは子どもながらに誇らしいことで。
たとえば靴下を選ぶ場面。これを選んだのは白いからだけど、お気に入りのキャラクターのに似てるからな気もするし、裾のレースが気に入ったからでもある。そんないろんな気持ちを残さずちゃんと伝えたい。大人みたいに、理路整然と。
でも、満をじして声にした瞬間、「この言い方じゃなかった」と思うこともしょっちゅうで。自分の気持ちにピッタリの言葉がどうしても見つけられない。そうじゃない言葉を使って話すのは、相手にも自分にも嘘をついているようで、次第に「自分のこと」を話すのが苦手になっていきました。
▲今年、「読めてよかった!」と思った本たち
本を読んでいると、たまに「これはあの時のあの気持ちだ!」と記憶がフラッシュバックするようなフレーズに出会うことがあります。嗅覚のいい友達が、街で偶然かおった香水で思い出が蘇るというけれど、きっとあんな感じなのでしょう。
わたしが言葉にできずにいた気持ちを、まるで体験したみたいに綴っている人がいる。消化不良だった感情が、美しいフレーズになって目の前に現れたとき、大げさですが救われたような気持ちになるんです。
わたしが本を読むのは、きっとこんな奇跡みたいなフレーズにひとつでも多く出会いたいから。そして、いまだに得体の知れない自分の感情を、今よりは上手に話せるようになりたいからなのだと思います。
……といままで書いてきたこんなことも、実はあるフレーズに出会って考えたこと。
「言葉は簡単に嘘になる。そもそもひとときにひとつずつしか言えないのが言葉だから、どうしたって極端になる。
『嬉しい』と書けばその喜びの裏の哀しみは隠れてしまうし、『虚しい』と書けば、その言葉の底の生の意欲はかき消されてしまう。
本当は、この世の重要なものごとはほとんど、あるともないとも言い切れないようなものばかりなのにだ」
ー『数学の贈り物』森田真生著 p.42
自分の感情に一ミリのズレもない表現なんて、本当はこの世界のどこにも存在しないのかもしれません。それでもごくごく稀に、限りなく「本当のところ」に近づいてくれたと、感謝を伝えたくなるような言葉や物語に出会うことがあります。それがとんだ勘違いでも、自己満足でもいい。そんな本を一冊でも多く見つけたくて、きっと来年もこれから先も、探し続けてしまうんだろうなぁと思います。
今年、あなたの心に届いた本はありましたか?
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