【彼女が旅に出る理由】不安も苦手も山ほどある。それでも何度だって旅に出たい(スタッフ田中編)

商品プランナー 斉木

ひとが旅に出る理由はなんでしょうか。

ひとの数だけ答えのありそうなそんな質問に、もし共通項を探そうとするならば。それは、日常に足りない要素を埋めに行っている、ということではないかなと思うんです。ある人にとっては刺激かもしれないし、またある人にとっては安らぎかもしれません。

本特集「彼女が旅に出る理由」では、暮らしを営むうえで “旅” を特別なピースとして捉えていそうな3名のスタッフに、その理由を尋ねます。彼女たちが旅(非日常)に求めているものをひも解くことで、その裏にある日常に託した願いも、ぼんやり透けて見えるといいなと思いながら。

 

誰よりも旅に出ているけれど、誰よりも旅に出たくなさそう?

第1話に登場するのは、編集スタッフ田中です。クラシコムに入って8年目。田中が入社した頃より、気づけばスタッフは10倍近くに。私にとっては入社後の教育係であり、何かと気にかけてくれるお姉ちゃん的存在です。

そんな田中に話を聞いてみたいと思った理由はただひとつ。日頃から「田中さんって、旅が好きなのか嫌いなのか、よくわからない」と思っていたから。

田中は、今おそらくクラシコムの誰よりも頻繁に旅に出ています。当店でも連載していた「35歳ヨーロッパひとり旅」は記憶に新しいですし、コラムでもたびたび綴っている山登りにも月に数回は繰り出している様子。

さぞ旅好きなのか!と思いきや、旅に出る前の田中は、それはそれは憂うつそうなんです。それも、出発する日が近づけば近づくほどに、その色は濃くなっていく。

彼女にとって旅って何なんだろう? その疑問を直接尋ねたくて、話を聞いてみることにしました。

 

“なくてもいいもの” が、決められなくて

「旅に出る前の田中さんを見て、本当は行きたくないんじゃ?と声をかけたくなったことが、何度かあります」。私がそう水を向けると、彼女は恥ずかしそうに頭をかきながらこんなふうに答えました。

田中:
「たぶん周りからはそう見えますよね。でも、旅が嫌いなわけじゃないんです。ただ、荷物を詰める、パッキングがとにかく苦手。一生好きにはなれないことな気がします」

元来心配性で几帳面な性格の田中は、パッキングは絶対前日に終わらせる、と決めているそう。使う可能性があるものをすべて床に並べ、その後、なくてもいいものを除いていく。この “なくてもいいもの” がとにかく厄介なのだと言います。

田中:
「荷物を詰めているときって、備えようと思えばいくらでも備えられるんです。いろんな可能性に向けて、想像力が無限に広がっていく。

アレはこんな時に必要になる “かもしれない” 。でも結局使わない “かもしれない” 。荷物に入れるべきか、入れないべきか、考えが頭の中で洪水のようになって疲れ果ててしまうから、パッキングはいつまで経っても好きになれません。

一歩でも家から出てしまえば、たとえ駅までの道のりで忘れ物に気づいたとしても、仕方ないと割り切れるんですよ。家のドアを閉めるまでが一番の正念場なんです(笑)」

 

気持ちがふぁ〜っと浮き立つ、その快感を味わうために

そんな苦手なパッキングを何度繰り返してでも旅に出る理由は、“日常がパッキング状態になる”  ことがあるから。

いろいろな情報が目に入り、それぞれに考えを巡らせてしまう田中にとって、東京で暮らすということが時としてきつい場面も多いのだそう。

日々生活するなかで大小様々な刺激にさらされ、その疲労から本来考えるべきことに集中できない。考えすぎたり、心配しすぎたり、うまく自分を使いこなせてないなと気づいたとき、彼女は旅に出ます。

田中:
「旅に出ると、見知らぬ土地にいることによる程よい緊張感があるからか、普段より周りのことが気にならなくなるんです。自分が見たいものに自然と集中できる。

そういう状態で『求めていたのはこれだ!』と思うものや景色が目の前に現れると、ふぁ〜〜っと気持ちが昇天するような快感があって。その場所が山だろうが、街だろうが関係ないんですよね。山から見下ろす景色でも、何気ない街の色合いでも、雑貨屋さんの棚でも、同じような開放感があります。

そこには普段の生活ではなかなか出会えない気持ち良さがあるから、どんなにパッキングがつらかろうが、やっぱりやめられないんですよね」

 

旅は、自分の「好き」を浮き彫りにする

おみやげはあんまり買わないけれど、代わりに写真を撮ったり、自分が行った場所をスマートフォンの地図に残したり。それも田中の旅の楽しみかたです。

そうやって記録した旅の記憶を、日常に戻ったあと見返しては、その場では気にも留めなかった些細な出来事を思い出したり、その土地に関する史実を調べたり。その写真を撮ったときの自分の気持ちや、訪れた場所が辿ってきた歴史や文化を “引いた視点” で眺めてみるのだそう。

田中:
「旅って自分の好きなものを浮き彫りにしますよね。いろいろな場所でバラバラに撮った写真も、カメラロールを俯瞰すると、共通点が見つかることもある。それを日常に帰ってから客観視すると、自分がどんな人間なのかのヒントがあるような気がするんです。

いつまで経っても、やっぱり自分ってものがわからない。それも旅に出る理由のひとつかもしれません。

程よい緊張感のなかで過ごす週末の小旅行と、その疲れがすこし残った水泳のあとの授業みたいな感覚で過ごす平日。力の入れ方と抜き方のそのバランスが、いまの私にはちょうどよくて、いいリズムを作ってくれてるんです」

 

「堂々とハメを外せる場所」だって、必要だから

田中は、クラシコムへの転職をきっかけに29歳で名古屋から上京しています。人間関係も環境もある程度かたまっていた場所を飛び出し、ゼロから積み上げていくと決めた。

そこには、自分の身体やこころのコンディションを整えることに人並み以上に敏感にならざるを得ない緊張感もあったのではないかと、今回話を聞きながら感じました。

そして、キメ細やかに神経を張りめぐらせている彼女だからこそ、それを開放し、ある意味「ハメを外すための場所」をつくることが切実に必要だったのだろうとも。毎回パッキングに涙目になりながらも、やっぱり旅に出てしまう、その理由がすこしだけわかった気がしました。

次回は、編集スタッフの齋藤のひとり旅のエピソードをご紹介します。“クラシコムの旅好きの代名詞”、今までそんなふうに思っていた彼女の、また違った横顔が見つかりました。

(つづく)

 

【写真】安川結子


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