【至福のおやつどき】前編:焼き菓子の香りにうっとり。念願のお店にいるだけで、満足な日。
思うように軽やかに出かけられないけれど、近場でも初めての場所や大好物があったなら、小さな非日常を味わえます。
私・田中にとって、その場所はお菓子屋さんです。
ふんわり漂う甘い香りに、歯ごたえのあるクッキーやスコーン。おいしいコーヒーもあわせたら、最高のおやつどき。気持ちの高ぶりは何にも変えがたい。
この至福の時間を綴ってみます。
Episode 01.
大好きなお店にいるだけで。
「今日は、あのお店におやつを買いに行く」
それだけの日があってもいいと思う。
スマートフォンのマップ機能で道を調べつつ、本当にここでいいんだっけ?と覚束なさにドキドキする気持ちも、お店にたどり着いたらきっと何事もなかったかのようにケロッとするだろう。
あぁ、ここだ、ここ。
光の差し込むテーブルや、焼きあがったお菓子が並んだ様子が目に飛び込んで、SNSで見た景色と同じだという安心感。
答え合わせって言うのかな、それも悪くない。
足を一歩踏み入れると、こんな家具の配置だったのね、とインテリアを立体的に体感するのも気持ちが高まる理由。
すてきな什器にティーポットやかわいらしいアクセサリー。「わたしの好きな作家さんのものを置いてます」と、店主さんがさりげなく教えてくれる。
焼き上がりのお菓子の香りにうっとり。注文の順番待ちに並びながら、店内を見渡す。
時間の経過を感じさせる、古びた家具のもつ空気が好きだ。
ちょっと暗めで、照明を落とした店内も目にやさしくていい。
自分の家でぜんぶ実現するのが難しいからこそ、お店全体が好きなテイストだとその場にいるだけでしみじみ幸せなのだ。
私の番がやってきて、焼き菓子をピックアップしてもらう。いつも眺めていたから食べたいものは決まっている。
こっちのスコーンを2つ、あのクッキーをボックス入りで、レモンのパウンドケーキもください!と大盤振る舞いのオーダー。ついつい気が多くなる。
クロスの形が可愛いですと小声でつぶやいたら、店主さんが話しはじめた。
「クロス型なのは、このお店が10Fにある『十』っていう意味と、もう一個私の思いが詰まってて。
傾けると × にも + にも見えるでしょ。一回転んでも、くるっと回せば+になる。ポジティブにいこうよ、っていうおまじないのような気持ちです」
おいしさの裏には秘密があった。ちょっと勇気を出して話してみてよかった、と思う。
いつもお店の人と話すのを遠慮してしまうけれど、こうして聞いたささやかな小話のおかげでより一層おいしくなるのだ。
さて、かわいい包装にくるまったお菓子を家に持ち帰ったら、おいしいコーヒーを淹れよう。
(つづく)
■お店のDATA■
Chitosaji(ちとさじ)
焼き菓子を販売。2020年10月現在はカフェjiccai(じっかい)は営業しておらず、店頭販売のみ。不定期営業のためsnsにて告知。 instagram→@chitosaji
【写真】神ノ川智早
もくじ
Chitosaji (海老澤晴子)
近所の農家の野菜をつかってパウンドケーキを作り、友人知人に贈ったのが始まり。以来、お菓子をつくり続け、自身の趣味だったアンティークの家具や建具を使って、一年半前に店をもつ。2020年10月現在はカフェjiccai(じっかい)は営業しておらず、店頭販売のみ。不定期営業のためsnsにて告知。 instagram→@chitosaji
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