【おしゃれな人】第1話:40代で専業主婦からデザイナーに。(CHICU+CHIKU5/31デザイナー山中とみこさん)
ライター 長谷川未緒
「おしゃれな人」と聞いて、ぱっと思い浮かんだのが「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)」のデザイナーで主宰の山中とみこさんでした。
ゆるくパーマのかかったシルバーヘア、真っ赤なネイルポリッシュがラインを引くように塗られた爪、モノトーンのゆったりしたシルエットの服を着こなす凛とした姿は、リラックスしていながらも、格好いい。
奇抜じゃないのに、その人らしい個性が光る、シンプルで着心地の良さそうなCHICU+CHICU5/31の服は、周りにもファンが多く、私もいつかワードローブに迎えたいというあこがれがあります。
素敵な大人代表のような山中さんなら、きっとおしゃれについてあれこれ教えてくれるに違いないと思い、ご自宅とアトリエにお邪魔しました。真似したいヒント、盛りだくさんでお届けします。
専業主婦時代を経て、49歳ではじめた服づくりの仕事
山中さんのオープンクローゼットを見せていただいたところ、白、黒、紺と色別に気持ちよく分けられ、ブラウス、スカート、パンツと、種類ごとにきっちり並んでいます。服をかき分けると棚になっていて、帽子がずらり。こちらも選びやすく置かれていました。
山中さん
「子どもが小さかった頃は専業主婦をしていたので、自分のために使えるお金は多くありませんでした。それでも昔からファッションが好きでおしゃれをしたかったですし、限られた中で工夫をすることも好きなので、安い生地を買ってきては、子どもの服や自分の服を作っていたんです。
独学なので凝ったデザインではなく、直線断ちで作れるウエストにゴムの入ったスカートやパンツばかり。子育て中は動きやすいほうがいいですし、もともと体のラインがはっきりするフェミニンな服より、余裕のあるメンズライクな服が好きだったので、自分なりに着たいと思う服を作っていました」
子育てがひと段落し、インテリア会社の企画職や、古道具屋の店主、親の介護や障害者学級の補助職員など、さまざまな道を経てたどり着いた仕事が、かつて夢中になった服作りでした。
リネンやコットンの肌触りのいい生地を使い、色は白や黒などのベーシックカラー、動きを邪魔しないシルエットという専業主婦時代から続くコンセプトは、そのまま「CHICU+CHICU5/31」のベースになっています。
シンプルなパターンながら、細部のちょっとしたデザイン性がうれしい大人の日常着を颯爽と着こなす山中さん。どうしたら、自分らしいスタイルを見つけることができるのでしょうか。
ヒールよりローファー、色があるよりモノトーンが好き
山中さん
「若い頃から、ヒールよりローファー、ピンクよりモノトーン、ぴったりした服よりゆったりした服、と好きなテイストは変わらないものの、それなりに流行に左右されたこともあるんですよ。
小花柄の服やミニスカートなど、流行るとそれしか売っていないこともあって、着たこともありました。でも、しっくりこなかったんです。
やっぱりある程度は身銭を切って、失敗したなと思うような経験を積み重ねることかもしれませんね。失敗をくり返すうちに、だんだんと自分の好きなもの、似合うものが見つかっていくのではないでしょうか。
私は無彩色の服が好きですが、ピンクの似合う人はピンクにたどり着くと思いますよ。それには、客観性が大切だと思います」
自分のスタイルを確立するには、人からどう見えるか考える、客観性も大切、と山中さん。
じつは、お目にかかって意外だったのは、山中さんが小柄だったことです。お写真で拝見していたときには、すらりとした背の高い人だとばかり、思っていました。
おしゃれのコツは自分の欠点を知ることから
山中さん
「私は身長が151センチちょっとしかないんですよ。姉が美人だったので、子どものころから私は美人じゃない、とルックスにもコンプレックスがありました。
もともときれいで背が高い人は、努力しなくても何でも似合うし、おしゃれに着こなせると思うんです。私の場合はそうではないので、客観的に自分の欠点を見て、マイナスをどうしたら格好良く見せられるか考えるようにしています」
▲ゆったりシルエットの服を帽子やバッグでバランスを取るのが山中さん流。
山中さん
「たとえば、パーマをかける前は、帽子をよくかぶっていたのですが、中折れのメンズライクな高さのある帽子や、大きなぽんぽんのついたニット帽を愛用していました。おしゃれのポイントになるし、目線が上に行くので、背の低さもカバーできます。
着こなしを工夫すれば、元々の自分より素敵に見せることができるところも、おしゃれが好きな理由ですね」
自分らしいおしゃれを実現するには、たくさん失敗すること、そして、服を格好良く着こなすには、自分のマイナスを知ること、と山中さん。
失敗することも、自分の欠点に目を向けることも怖いけれど、おしゃれがもっと楽しくなるなら、チャレンジしない手はありませんね。
続く第2話では、バッグや靴も含めたトータルコーディネートや、ファッションのマンネリを打破する小物遣いのポイントなどについて、伺います。
【写真】大森忠明
もくじ
山中とみこ
1954年生まれ。専業主婦、古道具屋店主、小学校の特別支援学級の補助職員などを経て、2003年49歳のときに大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)をスタート。著書に『時を重ねて、自由に暮らす』(エクスナレッジ)がある。インスタグラムアカウント@chicuchicu315
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