【毎日の、ちょっといいコト】北欧生活で見たことを今の暮らしに。桒原さんが「楽しみ上手」な理由

編集スタッフ 二本柳

ちょっとの「いいな」を積み重ねること。

ただそれだけのことです。

身のまわりの生活が変わりはじめた昨年以降、ほんのささやかな「いいな」に救われた日がいくつあったことでしょう。

たとえば部屋に花を飾る日が増えたのは、きっと偶然ではないはず。

いまだから目を向けられる小さな発見、日々のよろこび。みんなが見つけた最近の「いいな」を聞いてみたくて、4名の方々とzoomでお話しさせていただきました。

1回目は、ライターの桒原(くわばら)さやかさん。

桒原さんは1年半のノルウェー生活を経て、昨年春に長野県・松本市の中古物件を購入。自分たちの手でリフォームを加えながら、スウェーデン人の夫と、2歳の娘、0歳の息子の4人で暮らしています。

旅好きの家族にとって、この一年半は家をととのえることが新たな冒険になっているそう。

「最近はトイレをどうにかしたくって!」と朗らかに話す桒原さんは、やっぱりどんなときも楽しみ上手。

そんな家族に最近の「ちょっといいコト」を3つ聞いてみました。

 

「最近新しく買ってよかったのが、ソファ横のウォールシェルフです。IKEAでひとつ1,000円くらい。大正解でした!

ソファは毎日の休憩スペース。本を読んだり、おやつを食べたりしてオフに切り替える場所です。だからパッと手に取れる本の置き場があるといいな〜と思っていて」

いわゆる本棚は、すでにぎゅうぎゅうに詰まっているから結局手に取らないことも多い。IKEAのシェルフには買ったばかりの本や子供の絵本など、すぐ手に取りたいものをラフに置いているそうです。

家の中の「ちょっと不便」「もっとよくしたい」をそんなふうに少しずつ更新する日々を、桒原さんは「冒険」と表現して楽しんでいました。

「最近、自分たちらしい家ってなんだろう?と考え始めていて。

これまで賃貸という制約があったけど、家を購入したらもうなんでも好きにできる状態。それならどうしたい?何を目指す?そう考えると、おしゃれにしたいというわけでもなくて。結局『自分たちらしい家』にしたいんですね」

桒原さん家族は、1年半ノルウェーで暮らしていました。そこでは現地の家に招かれる機会もたくさんあったそう。

「やっぱりどの家もセンスは抜群!本当に素敵だし、おしゃれだけど、それよりも大事なことがあると気がつきました。

それは、彼らが『自分のことをよく知ってる』ということ。

自分たちはどこで、どんな時間に、どう過ごしたいのか。そういったイメージを具体的に持ってて。それはもう『家のことばっかり考えてるんじゃないかな』と思ってしまうくらい、自然と家族の話題に挙がるんですね。

だから北欧のお家は、まず先に『こう過ごしたい』がある。それを実現するために家具を選んで、配置を決めて……という順番。

あぁ、インテリアってそうだよなぁ、そういうものだよなぁって気付かされました」

「私は自分の “センス” みたいなものは全然自信がないんです。

だけど『家でこんなふうに過ごしたい』のイメージをかためて、そのための家具とかモノを選べば、大きくは失敗しないんじゃないかな?と。自分たちらしい家になっていくんじゃないかなと思っています」

IKEAのシェルフもそんな考えから取り入れたアイテムのひとつ。

松本の家が少しずつ「桒原さんたちらしい場所」になっていくその過程が、私までたのしみになってきました。

 

私のイメージする桑原さんは、とにかく楽しみ上手な人。

ストレスがたまったとき、疲れたとき、どうやって心をまるくする?自分の機嫌をとる術を尋ねてみました。

「家族の時間を “意識的に” つくることですかね。

そのひとつが毎朝5分の集合タイム。まだ寝ぼけてる状態のまま、ベッドの端っこに家族4人集まるんです。

うちは夫婦とも在宅ワーク、常に一緒にいるスタイルだから『コミュニケーションは自然と取れてるものだ』と思ってたんですよ。むしろ『ひとりの時間が欲しいわ』って。でもね、そんなこと全然なくて」

寝ぼけ眼で話すのは、日常のシェア。「下の子、3回起きました」「今日は寝不足なんだね」……そんな具合に。

ときには「最近、私ばっかり子供と遊んでるよね?」という不満を投げかけることもあるそうで。

「それが理由で険悪になる日だって、もちろんあります(笑)でも、ふと気づくと夫が子供の歯磨きをしてくれたりして。『あ、拾ってくれてる』と思えることが大事なんですよね。

どんなに長い時間をともに過ごしていても、実は分かり合えていなかったことって沢山あると思うんです。家族でも」

桒原家では、ソファやダイニングテーブルもテレビが見えない配置にしてあるのだとか。

これも北欧の暮らしから学んだことのひとつです。

「北欧ではソファがテレビの方を向いてない家庭も多くてびっくりしました。私の実家はご飯を食べながらテレビを見てたので、この違いはとても新鮮で。

でもそうやって意識的に家族と話す時間をつくるのって大切だな、真似してみよう、と思ったんですよね。

夜にみんなでドラマや映画を楽しむこともあるけど、食事とおやつはスマホもふせて、みんなで会話するようにしています」

ステイホーム中、食事が日々のたのしみになった一方で、献立のバリエーションに苦労した家庭も多いのではないでしょうか。

桒原さんが住んでいたノルウェーは物価が高く、三食自炊が基本。だから元々、少しでも楽になるよう工夫がされていたようです。

「どの家庭も献立のルーティンみたいなものがありました。

たとえば金曜日は『タコスの日』、土曜日のお昼はミルク粥、といった感じ。上手に手を抜いていたんですね。

我が家も自炊が基本なので、この知恵を借りて、献立のルーティンをある程度決めるようになりました。

冬なんかは週2日は鍋!としたり、朝ごはんはオートミールに季節の果物をのせて、ブラウンシュガー、ココアパウダーをかけたものを毎日繰り返し食べています。

休日の朝だけはオートミールにプラス何かを足すことも。最近はカルディの冷凍クロワッサンがお気に入りです」

▲最近はじめて酵母パンにチャレンジ

でも一方で、自分の機嫌をとるために実践しているのは「新しいレシピにチャレンジする」ということだそう。

「ふだんは効率化のために同じものをローテーションしてるんですけどね、やっぱりそれだと自分も飽きちゃう。

そんなときによく手に取るのが栗原はるみさんのレシピです。身近な調味料で、必ず美味しくできて、そして華やかに仕上がる。『お、私いいじゃん!』って思えるんですよね。

忙しいときほど……と言うと大袈裟になっちゃうけれど、疲れたときほど新しい料理に挑戦したくなります」

献立のルーティンを決めておくのは、自分の心に真っ白なキャンバスを持っておくための下準備。

新しいレシピは、その上に絵の具で色を塗るようなこと。

桒原さんがいつも “楽しみ上手” に見えていたのは、自分のキャンバスを守る賢さと、そこへ色を塗る大胆さと、その両方を持ち合わせているからなのかもしれません。

次回は沼津の雑貨店「hal」の店主、後藤由紀子さんに話をうかがいます。

 

photo:桒原さやか、Maya Matsuura(2枚目)

桒原さやか

ライター。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていた元スタッフ。旅が好きで、冬の旅行で訪れたノルウェーの北極圏にある町、トロムソに一目惚れ。スウェーデン人の夫と共に、2016年6月〜2017年11月まで住んでいた。その後帰国し、現在は長野県松本に居を構える。2歳の娘、0歳の息子の4人暮らし。著書に『北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし』(ワニブックス)
instagramアカウントは@kuwabarasayaka


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