【星空を見上げてみれば】前編:人類の歴史はたったの2秒分。人は、いま一時を生きている
ライター渡辺尚子
どんなにささやかな毎日でも、悩みはなかなかつきません。ほんのささいな困りごと、ちょっと重めの悩みごと。
いくら考えても答えはなかなかでなくて、そっとため息をついたりして。
そんなときは、空を見上げてみます。
早朝だったら、淡く染まった東の空。仕事や家事の合間には、楽しい形の夏の雲。暮れるまで眺めていたくなる夕焼け空、そして1日の終わりには、どこまでも深い夜の空。
じっと眺めているうちに、さっきまで抱えていた悩みごとが広い空に吸い取られていくようで、気持ちが軽くなっているのです。
わたしたちは、特別な星に暮らしている
空を見上げる楽しみを教えてくれたのは、東京・渋谷の「コスモプラネタリウム渋谷」の永田美絵(ながた みえ)さんです。解説員として、来場者に天体や宇宙の世界を伝えています。
永田さん:
「ふだん、わたしたちは当たり前のようにしてこの地球に暮らしているけれど、実はこの広い宇宙を見渡しても、地球のような星はほかにまったくないんですよね」
地球のような星って?
永田さん:
「つまり、いろんな生きものがいて、生命にあふれている星。私たちの知るかぎり、そんな惑星は他に存在していません」
わたしたちの暮らす地球は、そもそもどうやって生まれたのでしょう。
永田さん:
「大昔、まだ地球や太陽が生まれるより前、とっても大きな星があったんです。その星がついに爆発して一生を終えたとき、宇宙にばらまかれたいろんな星のかけらが集まって、地球が生まれたんです。
星のかけらに含まれる、水素や酸素をはじめとしたさまざまな元素が偶然集まったおかげで、地球には、わたしたちをはじめ、こんなにもたくさんの生物が誕生した…地球上にあるすべてが、元素の組み合わせによってできているんです。
ちなみに太陽も地球と一緒に誕生しましたが、水素とヘリウムぐらいしかないので、生物が暮らせる環境ではなくて。地球みたいに、こんなにたくさんの元素が集まった星は他にないんです」
人類の歴史はたった2秒分
さらに驚いたのは、そのあとのお話でした。
永田さん:
「宇宙が誕生したのは146億年前で、宇宙の歴史を365日の年表にするとしたら、人類の歴史はたったの2秒程度。
人間は、ほんの一時を生きていて、一人一人の人生はさらに短い。そう思うと、いま一時を大切にしなくてはと感じます」
一瞬の人生を、笑ったり泣いたりしながら駆け抜けていくわたしたちって、なんとけなげで、いとおしい存在なんだろう…胸がいっぱいになってしまいました。
永田家のルール「悩み事は10分」
宇宙という長い時間をものさしに物事をとらえると、ふだんでも、ものの考え方が変わりそうです。
永田さん:
「永田家では『悩み事は10分』というルールがあるんですよ。要するに次の日に持ち越さないということなんです。
365日分の2秒のうち、さらに短い一生を考えると、今という一時を大切にしたいという思いから来ているのですが。
地球は常に、さまざまな可能性をはらんでいるんです。たとえば、隕石がいまぶつかってもおかしくない、とか。そう考えると、『今日家族と喧嘩してそのまま会えなくなったら』と思うから、喧嘩をしてもその日のうちに解決するようにしています」
天文学の裏付けがあっての家族ルール!
わたしもときに家族と口喧嘩することがありますが、つい意地を張ってしまったり、いつまでも空気がぴりぴりしてしまったり。そんなときには永田さんの言葉を思い出そう、とそっと心に決めました。
永田さん:
「あとひとつ、理由があります。思い悩んでいる時間ってありますよね。でも、結局は一生思い悩むことはできなくて、どこかの時点で必ずなんとかするでしょう。諦めるのか忘れるのか、もしくは話し合うのか。
どうせなんとかするんだったら、思い悩む時間がもったいないと思うんです。
とくに家族の喧嘩なんて、仲直りしないと前には進めない。ずっと一緒に暮らすというゴールは見えているんだから、ああだこうだと10分間言い合ったら、それでおしまいです」
大切な人と一緒に、空を見上げてみる
永田さんのいうとおり。たしかに、ゴールは決まっています。いずれは仲直りする、仲直りしたいのですから。
だったら早く終わらせて、残りの時間を楽しく過ごしたい。またたきするほどの限られた人生を、一緒に、大事に使いたい。
永田さん:
「同じものを見るって、大切だと思うんですね。家族でも恋人でも。そこに感動というものがプラスされると、より良いですよね。皆既月食みたいに一大天文ショーでなくても、夕焼けがきれいだったり、雲の形がかわいかったり。
こないだは、雨がたくさん降った後に、すごくきれいな虹が見えたんです。『あ、出てる!』って、思わず声がでました」
日常は、心の晴れる日もあれば、曇っている日もあって。でも、わたしたちの頭の上には、いつだって空があります。空を見上げてみれば、心に少しゆとりが生まれ、少しやさしくなって、歩き出せる。そんなふうに思いました。
◎おすすめ星座アプリ
スマホを空にかざすだけで、目の前に見えている星座について正確に教えてくれるアプリです。星空観察のお供に、ぜひと永田さん。
【写真】佐々木里菜
もくじ
永田美絵
「コスモプラネタリウム渋谷」チーフ解説員。NHKラジオ第一「子ども科学電話相談」では、天文・宇宙関連を担当している。「ときめく星座図鑑」(山と溪谷社)、「太陽系の不思議109」(偕成社)、「カリスマ解説員の楽しい星空入門」(筑摩書房)など、星空にまつわる多数の著書がある。
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