【いそがない部屋づくり】第4話:役割をはっきりさせて、ゆったり暮らす。第2リビングに寝室、ランドリーのこと
ライター 長谷川未緒
設計士の友人と一緒にプランを立てながらリノベーションしたという料理家の柚木さとみ(ゆぎ さとみ)さん宅を訪問している、特集「いそがない部屋づくり」。
第1話では、築47年の古家との出会いからリノベーションについて、第2話では、家の中心ともいえるリビング・ダイニングについて、第3話では、真似したい工夫がいっぱいのキッチンについて、伺いました。
続く第4話では、くつろぎスペースの第2リビングの存在や、寝ることに集中できる寝室、室内窓が抜けをつくるランドリースペースなどを拝見します。
憩いの場、ロフトみたいな第2リビング
柚木さん宅は、寝室と、リビングふたつにダイニングとキッチンという間取りです。階段からあがってすぐの2階に、第2リビングをつくった理由は?
柚木さん:
「食事をするスペースにテレビを置く習慣がなかったこともあり、テレビを見る部屋にしようと寝室の隣りにつくりました。ここで仕事をすることもありますし、ピザパーティーをしたこともあります。
いざとなったら壁をつくって部屋を増やせるよう、第2リビングから寝室に抜ける入り口をふたつつくりました」
生活の変化に合わせて間取りを変えられるようにしておくというのは、未完成のままにしておいて、住みながら完成させる柚木さんらしい考え方です。
もともとあった梁と補強で入れた柱が多く、天井裏の隠れ家みたいな雰囲気の第2リビングは、階段側に壁がないので、ロフトのような構造になっています。
柚木さん:
「設計士から提案されたときは、『えっ? 危なくない?』と思いました。
壁をつくらないことでコストを削減するという目的もありましたが、要素が増えるとデザイン的にうるさくなりますし、動線もややこしくなるので、結果的には大正解でしたね」
第2リビングは、ソファーとテレビと猫グッズだけという潔さで、テレビ台は壁付になっているので床から浮いています。
▲「グリーム」にオーダーしたテレビ台。
テレビ台の下にはキャスター付きの収納ボックスを置き、動かしてテーブル代わりにするなど、狭いスペースを活かした多機能なつくり。中には、ご主人の趣味のDVDや友人が来たときのためのボードゲームなどがしまってありました。
「ゆったりと眠れる部屋」がほしかった
階段を上がってすぐと、第2リビングからと、ふたつの入り口から続くのは、「とにかくゆっくり眠りたい」を実現した寝室です。リノベーションで窓をつけ、自然光ですっきり目覚められるようにしました。
置いてあるのは、ベランダ(あぶなくないように猫仕様にしつらえてある)に出た猫を眺めるときに座る「オンウェー」のキャンプ用の椅子と、本棚とベッド。
寝室の壁は、自分たちで塗ったのだとか。
柚木さん:
「ビスをパテで隠し、地のでこぼこをやすりで削って平らにし、下地を塗って、ペンキを塗って、ととにかく大変で……。
塗装の職人をしている高校時代の同級生がいるので、手伝ってもらいながらひと月くらいかけて塗りました」
白い壁だけにせず、ヘッドボード側の壁は淡いピンク色に。インテリアのいいアクセントになっています。
▲「ROOMBLOOM」のショールームで見て選んだfig jamという色。ベッドフレームは「グリーム」のもの。
ヘッドボード側には文庫本が置けるくらいのスペースがあります。寝る前に読む本を置こうとつくってもらったものの、現実は本ではなく、猫がゆうゆうと歩くスペースになっているそう。
フレームが大きいので空間を贅沢に使っていて、高さが一般的なベッドに比べて低いのも特徴です。
柚木さん:
「ホテルの『星のや』さんみたいなイメージで、低くしたかったんです。デザインも、オーク材に白い塗料を入れた材も、気に入っています」
寝室の奥は、カーテンと壁で仕切ったクローゼットです。オールシーズンの夫婦2人分の洋服が約5畳にゆるやかに収まり、猫のくつろぎスペースにもなっていました。
非日常感のあるランドリー
クローゼットから続くのは、ご主人とふたり並んで朝の支度ができるように、と鏡もスペースも大きくした洗面所と、お手洗い、そしてランドリーです。
柚木さん:
「お風呂場は1階にあるので、脱いだ服は洗濯カゴに入れて、上に持ってきてここで洗濯します。
洗濯後は乾燥機にかけたり干したりして、クローゼットに収納と動線がいいので、洗濯が楽になりました」
お風呂場が隣接していないので、湿気がこもらないこともいいのでしょう。
洗濯が終わるのを待ちながらここで本を読んだり、猫仕様にしつらえたベランダで遊んでいるのを眺めたり。家の中にありながら、コインランドリーのように感じることがあるのだとか。
スイッチの位置が低めで、自然と手の伸びる位置にあり、目につかないのも生活感が出ずに非日常感があります。
また、このスペースでもっともユニークなのが、室内窓です。
柚木さん:
「外には出られない窓があるのって楽しいかなと思ってつくってもらいました。
この室内窓から第2リビングもリビングも見渡せるので、猫の様子を見られて楽しいんですよ。この家を建てたときにはまさか猫と暮らすことになるとは思っていなかったので、おもしろいものですよね」
おおらかに、住みながらフィットする家に
とにかく床さえあればいい、といった具合に、決め込まずにつくり、住みながら生活の変化に合わせてつくりあげていくスタイルの柚木さん宅。
「なんとかなる」と笑う大らかな人柄が、そのまま家にも表れているようで、どこにいてもリラックスできて、猫のようにごろごろしたくなります。
思いがけずはじまった猫との暮らしに合わせ、窓枠にキャットウォークをつけたり、クローゼットに猫用のハンモックをつけたりと、家が猫仕様に進化中。
柚木さん:
「片付けることは苦手ではないので、これからはもっと遊び心のある室内装飾をしていきたいです。インテリアとしても成り立つキャットウォークをつけたいな、とも思っています」
次にお伺いするころには、どんなふうに変わっているのか、これからも楽しみな柚木さん宅でした。
【写真】MEGUMI
もくじ
柚木さとみ
料理家。大学卒業後、カフェの総括店長を務め、カフェのプロデュースやメニュー開発、大手料理教室の講師などを経験。現在は古民家をセルフリノベーションしたアトリエで料理教室「さときっちん」を主宰しながら、企業やメディア向けのレシピ提供のほか、“食”を含んだ暮らし方の提案を行っている。https://yugisatomi.com
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