【店長コラム】ひと足早いメリークリスマス!『スーツケース・ジャーニー』前編、後編ともに公開しました。
店長 佐藤
お客さまに宛てて「新しいドラマができました」と書くのが2年ぶりなので、とてもドキドキしています。
オリジナルドラマとしては3作品目となる『スーツケース・ジャーニー』。
前編と後編にわかれた2話構成になっており、クリスマスウィークの二夜連続(12/21火、22水)での公開です。
このドラマがしっとりとした味わいのクリスマスや年末年始の時間のおともとなることを心から願いつつ、送り出したいと思います。
今回は「非日常」を描きたかった理由
このような時勢となる以前の2019年の春先。わたしは家族と一緒に大洗海岸沿いのとある温泉宿にいました。
息子の「潮干狩りをしてみたい!」のひと言で出不精の我が家にしては珍しい行動力を発揮して行き先や宿を調べ、次の週末には海岸沿いに身を置いていたのです。
寄せてはかえす海の波の音。図書スペースにある暖炉で薪がパチパチ燃える音。本棚から選びとった村上春樹のエッセイ本のざらざらとした手触り。本を読みながら飲んだコーヒーの香り。全館畳張りのインテリアでスリッパではなく靴下で歩き回ることができる心地よさ。夕食や朝食に出てきた海の幸に家族で唸ったりも。
温泉にゆっくり浸かる喜び以外にも、こんなふうに五感いっぱいに「居心地」の良さを味わいました。
居心地に興味があるわたしはこんなことを考えました。
「いつかこんな宿をつくってみたいし、こんな居心地を誰かに贈る側になってみたいけれど、旅をテーマにした物語をつくって擬似体験をしてもらうことならばできるかもしれない。たくさんの時間や費用や移動距離を経なくても擬似的に『行ける』物語をつくってみたいな」
その後、世の中に大きな変化が起こり、気軽に旅をすることさえ困難な日が来るなんて、その時の自分には知る由もありませんでした。
次は日常ではなく「非日常」を扱ったドラマを。つくることができる日が来たら、本当に旅している気持ちになれるように映像の光や音にまでこだわって五感で味わえるものにしてみたい。新ドラマの小さな種はこうして生まれました。
こうして『スーツケース・ジャーニー』は出来上がっていきました
『ひとりごとエプロン』シーズン1が完成し、公開準備をしていた2019年末。私たちは初めてご一緒する映像制作会社さんと出会うことになりました。
『青葉家のテーブル』『ひとりごとエプロン』のもしかしたら次の作品になるかもしれないドラマのイメージを深く話し合い、扱ってみたいと思っていた「非日常」「ひとり旅」を物語にしてみようということで意見が一致し、その時点ではずっと遠くにあったゴールを見つめて新たなドラマ制作チームが立ち上がった瞬間でした。
様々なご縁があって最初のお話は「山の上ホテル」という素晴らしい場所を舞台として撮れることに。個人的にもとても思い入れのある大好きなホテルで、ここからなにかが始まっていく予感がして、それはもうドキドキしたのを思い出します。
そしてひとり旅の相棒といえば、本。
繰り返し読んできた小説を旅のお守りのように鞄にしのばせていく人もいれば、買ったばかりの一冊を旅の途中で読むのを楽しみにスーツケースに入れる人もいるのではないでしょうか。
ひとり旅。山の上ホテル。小説。
新ドラマの3つの柱が決まったあと、私たちが真っ先にしたのは自分が「ひとり旅」に出ること。
監督の大釜さんはすぐに山の上ホテルに泊まりに行き、一泊二日のひとり旅を通し館内でさまざまな体験と時間を過ごしました。
時を同じくしてわたしは逗子にある海沿いのホテルへ。ひとりきりのショートトリップのあいだ、ホテルの中での自分の行動や旅先で考えたこと、お気に入りの本を読んではその本に登場する心に響いた一節を事細かに記録する旅日記をつけました。
この時の監督やわたしの体験記をもとに、尊敬する作家の土門蘭さんもお呼びし、いよいよ『スーツケース・ジャーニー』の脚本づくりが進んでいったのでした。
脚本づくりを進めているあいだに世の中はコロナ禍に。まさかの旅に出ることは難しい状況になっていきました。
ドラマを公開できる頃に世の中がどのようになっているかは分からないけれど、「旅」や「非日常」を扱ったこのドラマをますます良いものにしよう、きっと意味のあるものにしようと心に誓ったのを覚えています。
撮影が実現したのは「やっと」と言ってもいい今年の8月。物語は秋ですが、猛暑の中での撮影はかなりハードなものに……
今回のドラマは美術も衣装もロケーションも「クラシカル」をキーワードとし、それぞれの分野のプロフェッショナルが集結しクラシカルな雰囲気の映像美を目指して惜しむことのない力を貸してくださいました。
わたしも全てのシーン撮影に立ち合いながら、長い時間をかけて制作チームの皆さんと考えてきたあれやこれが、モニターに具現化されて映し出されている現実に興奮することになります。
栞がまた別の場所を、別の本を持って旅できますように
栞が旅先に持っていく『西の魔女が死んだ』(新潮文庫刊)。私も20代から繰り返し読んで元気を貰ってきた小説です
ようやく完成したこのドラマが「これまでの作品とテイストは違うけれど、やっぱり北欧、暮らしの道具店らしいな」と感じてもらえるなら、わたしはそれが一番嬉しいです。
そして「わたしの、居心地さがし。」がコピーでもあるドラマなので「なんだか居心地がいいな」と感じてもらうことができ、誰かにとっての居場所みたいな作品となれたなら、さらに嬉しいです。
モヤモヤザワザワとして心を静かに穏やかにしたいとき。
ほかの誰かと自分を比べて疲れてしまった日。
ほかの人は居心地良さそうだけど、自分にとってここは居心地が悪いなと変な罪悪感を味わってしまう日。
ひとり旅が叶わなくとも旅気分を味わって自分だけのパーソナルな時間をもちたいと切に願うとき。
この『スーツケース・ジャーニー』がささやかにでもお役に立てたらと願います。
そして沢山の人に見てもらえて、かつ寄り添える作品となれたとしたら、いつの日か、栞がまた別の場所へと旅ができる日が訪れるかもしれません。次はどこへ、どんな乗り物に乗って、どんな本とともに旅をしましょうか。
このドラマが当店からのクリスマスプレゼントとなり、引き続き変化の大きかったこの一年を振り返りお互いに「お疲れさまでした」の気持ちを共有できるものともなりますように。
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出演:在原みゆ紀、草村礼子、鳥谷宏之
監督:大釜友美
脚本:土門蘭・大釜友美
撮影:三代史子
音楽:世武裕子
エグゼクティブプロデューサー:佐藤友子
企画:株式会社クラシコム
製作:KURASHI&Trips PUBLISHING
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