【ベランダが好き】第2話:様子を見て、声をかけて、世話をやく。家族と同じように
ライター 片田理恵
イラストレーターの谷山彩子さんに、ベランダで植物の世話をする楽しみについて、お話を伺っています。
ベランダで過ごす時間を言葉にするなら「あそび」がしっくりくるという谷山さん。1話では世話をしきれずダメにしてしまった最初のガーデンのこと、自分らしい園芸を始めるきっかけになったオリーブの木のエピソードを伺いました。
続く2話では、3年目を迎えた現在のベランダでの具体的な過ごし方について、じっくりお話いただきます。
植物の世話には椅子とコーヒーを
毎朝7時。夫の食事の支度を終えた谷山さんは、自分のコーヒーを持ってベランダに向かいます。ここからおよそ30分が、楽しい「あそび」の時間。
まずはほうきでベランダ全体を掃いてから、ホースを使ってたっぷりと水やりをします。
土をやわらかく湿らせたら、次は雑草とり。鉢植えの様子をひとつひとつ確認しながら必要な手を入れ、植木鉢に汚れがあったら拭き取る。
「おはよう、元気?」「今朝は気持ちがいいわね」と植物に声をかけながら作業に集中していると、あっという間に時間が経ってしまうといいます。
谷山さん:
「植物の世話で欠かせないものは、椅子とコーヒーかな。座ってのんびりやるのが楽しむコツですね。
私は花を咲かそうとか、実を取ろうとか、そういう成果を求めてやっているわけじゃないんです。もちろん花が咲いたら眺めて楽しむし、実がなったらおいしくいただくけれど、でも、それが目的じゃないっていうのかな。
世話をすること自体が楽しいからやっている。だから『あそび』感覚なのよね」
猫も植物も、私の中では同じ
実りを得る以上に、成長を見ることそのものが楽しい。こんな形の花が咲き、こんな風に種ができると知れることがうれしい。谷山さんが植物に惹かれる背景には、そんな思いがあります。
春夏は朝夕の2回に増える水やりも、植木鉢の中が窮屈になりすぎないよう定期的に行う剪定も、全てはそれぞれの植物が居心地よく過ごすため。そう、まるで家族にするのと同じように。
谷山さん:
「私にとっては、植物も猫と同じ感覚なんですよね。家族やペットのコンディションを見ながら食事を作ったり、部屋を整えたりすることってあるじゃないですか。植物にも日々それと同じようなことをしているんです。
だから成長を感じるとうれしいし、元気がないと心配になる。ようやくなった実なんて、あんまりかわいいから食べられないですよ、本当は」
見た目も使い勝手も大事な「お世話グッズ」
そんな家族同然の植物をいい状態でキープするためには、世話のしやすさも重要なポイントです。
数ある園芸グッズの中でも谷山さんのお気に入りはフェルトの植木鉢。軽くて持ち手付きなので運びやすく、丸い鉢だけでなくポケットが連なったタイプなど、さまざまな形状の商品が選べて便利なのだとか。
谷山さん:
「使い込むと味わいが出てくるところもいいんですよね。プラスチックをあまり増やしたくないなという今の気持ちにもしっくりくるし。
軽くて見た目がいいから、レイアウトの変更にも向いています。ちょっと元気がないものを日当たりのいい場所に移動させたり、ベランダの模様替えも気軽にできる。
それから、これはフェルトタイプに限らずですが、植物はひとつの植木鉢にひとつだけ植えるのがいいと思います。
土をたっぷり入れても、持ち上げられるくらいの大きさの鉢を使うといいみたい。そうすると自由に動かせるでしょう? 寄せ植えにすると、そのうちのひとつにだけ手をかけるってことがしにくくなるから」
見た目も値段も納得できる道具を探して
ほかにも谷山さんが愛用する道具を見せてもらいました。
植え替えをする時に使うプラスチック製の緑色のシャベルとサイズ違いの土入れ2つ、道具を入れているケースは100円ショップのもの。土をほぐしたり混ぜたりする金属製の細長いスコップは近所のホームセンターで購入しました。
ルッコラを育てている白いケースも100円ショップのもので、これは植木鉢ではなく収納ケースとして売られていたものに、キリで底に穴を開けて使っています。「柄や文字がプリントされていない、シンプルな白いものが欲しかったから自分で作った」のだとか。
谷山さん:
「買いやすい値段で気にいるものを見つけるって、けっこう楽しいんですよね。
1話でお話したように、私はベランダ作りを一度失敗した経験があるから、最初から上等なものを買うのは違うかなと思って。気負わずにどんどん使えるから初心者の私にはぴったりでした。
今かぶっている、つばの広い麦わら帽子もかわいいでしょう。これは旅先の農協で買いました。農家の方達もかぶっているもので、500円くらいだったかな。
ほかの小物も気づいたら緑色のアイテムが集まっていて、うちらしい統一感が出てきた感じがします」
空を近くに感じながら、せっせと「あそぶ」
椅子に座ってコーヒーを飲みながら、そばにある鉢植えの様子を眺める。声をかけながら雑草を取っては、いまにも咲きそうなつぼみを見つけて歓声をあげる。
気持ちのいい初夏の空の下、せっせと「あそぶ」谷山さんの様子を見ていると、私もやってみたい!と、体がうずうずしてくるような気がしました。世話をすることそれ自体がこんなに楽しそうだなんて、これまでのイメージがすっかり覆されてしまったみたい。
明日の第3話では、ベランダの植物を家の中でどう楽しんでいるのかについて伺います。料理上手な谷山さん、自らが育てたハーブでおいしいものをつくるのも大好きなのだそうですよ。
(つづく)
【写真】メグミ
もくじ
谷山 彩子
イラストレーター。東京都出身。セツ・モードセミナー卒業。HBギャラリー勤務を経 て、フリーのイラストレーターに。雑誌・書籍の挿画や広告の分野で幅広く活躍。近著 に『文様えほん』『十二支えほん』(共にあすなろ書房)があ る。https://www.taniyama3.com/
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