【壁の余白にポスターを】第2話:初めての1枚に迷ったら? インテリアに合うポスターを選ぶコツ

編集スタッフ 岡本

「アートは難しいもの」という思いから縁遠い存在だったこれまで。

けれど、ずっと気になっていた壁の余白に1枚のアートポスターを迎えてみたら、その自由度の高さから「これなら気軽に楽しめるかも」とますます興味が湧いています。

そこでこの特集では、壁を飾るのにぴったりなアートポスターの魅力や飾り方のポイントなどをご紹介。第1話では、わが家にアート作品なんて、と思っていたところからの出合いのエピソードをお届けしました。

第2話では、理想の1枚を選ぶコツについて、東京・参宮橋にあるアートポスター専門店「KNAPFORD POSTER MARKET」の井上恭太さんにお話を伺います。

井上さん:
「前回お話ししたように、『なんとなく惹かれる』という感覚が一番重要です。飾るのは自分たちの空間、ポスター選びも個性が表れるから面白いと思います。

その前提を大切に、迷ったときはぜひ参考にしてみてくださいね」

第1話を読む

 

2つのジャンルから
気になるポスターをいくつか選んでみる

▲作品を元にしたポスター。上から時計回りに、フォトポスター(Andreas Gursky / OCEAN Ⅲ)タイポグラフィーポスター(PLAY TYPE / ILWT-HQ)、デザインポスター(Rop van Mierlo / Bear)

井上さん:
「アートポスターは大きく分けると2つのジャンルに分けられます。

ひとつめは、『作品を元にしたポスター』。アーティストが書いた絵や写真をポスター化したものですね。

ふたつめは、『広告物としてのポスター』。展示会や商品の販促のために作られたポスターです。

はじめの1枚に選ぶのであれば、個人的には『作品を元にしたポスター』がおすすめかな。

エキシビジョンポスターなど『広告物としてのポスター』には、場所や日にちなど知らせるべき情報が文字として載っているため、そこに目がいってしまう場合も。

絵や写真など一つの作品として成立しているアートポスターならば、直感で選びやすいのではと思います」

▲広告物としてのポスター。どちらもエキシビジョンポスターです(左:Cy Twombly / Sensations of the Moment、右:Max Bill / Schlossgarelie der Stadt Argon 1977)

井上さん:
「でも逆に考えると、書かれている文字を自分自身の思い出に紐づけることで思い入れが強くなる場合もあるんです。

例えばこの写真の右側、Max Bill(マックス・ビル)のエキシビジョンポスターには、『17-23 September 1977』展示会の日程が書いてあります。

もし1977年が自分にとって節目の年だったら、不思議な縁を感じませんか?

パッと見たときのデザインに惹かれることもあれば、こういう細かい部分に心を掴まれることもある。いろいろなポスターを見ることで、自分がどんなところにグッとくるのかわかってくるはずです」

 

候補の中から、
自宅のインテリアに合う1枚を選ぶには?

モチーフや色など、全体のイメージで好きになる1枚もあれば、書かれた文字やさりげない模様など、細かい部分にピンときたり。アンテナを働かせながらポスターを選んでいるとあっという間に時間が経ってしまいました。

いくつか気に入ったポスターに出合えたものの、これが実際に自宅のインテリアに合うかと言われると自信が持てません。

インテリアとの相性はどうやってイメージしたらよいのでしょうか。

井上さん:
「どうしてここにポスターを飾りたいんだっけ、と考えることがヒントになる気がします。

色がない空間で寂しいと感じているのであれば、その部屋のメインカラーとは反対の色味やリズムのある作品を選ぶとアクセントになりますよね」

▲モノトーンの空間にオレンジカラーが目を引く一枚を飾った様子。

井上さん:
「一方で、落ち着いたインテリアのなかに馴染むポスターを探しているのであれば、壁紙や家具と同系色の作品をおすすめします。

選ぶ一枚によって、その空間をクールにもユニークにもしてくれるのは、存在感のあるポスターならでは。

どんな空間で暮らしたいのか、部屋にポスターが加わってどんな変化があると嬉しいか、といったことを考えるとぴったりの一枚が見えてくるかもしれませんね」

▲同じモノトーンの空間に馴染む色合いの一枚を飾ってみると。同じサイズのポスターでも雰囲気が全く変わって見えます。

 

迷ってしまったときは……。
シンプルな1枚ならどんな場所にも◎

▲デンマーク・コペンハーゲンで活動するクリエイティブスタジオ、ATELIER CPH(アトリエシーピーエイチ)のコラージュポスター。

井上さん:
「もし自分の好みが分からない、でも壁に何かを飾りたいのであれば、場所を選ばないシンプルなデザインがおすすめ。

淡い色味はどんな空間にも馴染むので、割と大きなサイズも手に取りやすいと思います」

井上さん:
「これは一見シンプルなポスターなのですが、布をコラージュした作品を高画質のプリンターを使ってポスターにしたもの。

よく見ると布の素材感や重なっている部分の奥行きまで伝わる、面白い一枚なんです。

シンプルなものもこういった一癖あるデザインを選ぶことで、眺めていて楽しいですし、インテリアの話の種になってくれると思います」

今回教えていただいたアートポスターの基本のキと自分の直感を合わせたら、またすてきな一枚に巡り合えそうな気がしてきました。

つづく第3話では、ポスターの印象をガラリと変える額縁選びや飾り方のポイントについてお届けします。ぜひお楽しみに。

(つづく)

【写真】上原未嗣

 

もくじ

井上 恭太

東京・参宮橋にある輸入ポスター専門店『KNAPFORD POSTER MARKET(ナップフォード・ポスター・マーケット)』のオーナー。20代前半から約20年ほど劇団にて俳優として活動後、兄弟でポスター専門店を始める。弟・慶太さんがバイヤーを、兄・恭太さんがショップマネジメントを担当している。HPはこちらhttps://knapford.com/


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