【自分サイズをさがして】第1話:きっかけは漫画の主人公。オーダー専門のシャツ屋を始めるまで

編集スタッフ 野村

日記を毎日つけようと真っ白なノートを買ってきても、最初の数ページしか文字が埋まっていない。学生時代から今に至るまで、一貫して続けてきた趣味や部活動は特になく、その時に興味を持っていたことにとりあえず手をつけてみては別のことにすぐ目移りしやすい。

これまで何かひとつのことを長く続けてきた経験が少ない自分のこれまでを振り返ると、「この先もこんな風でいいのかな?」と飽き性な性格が少し悩みのタネでした。

だからこそ、ひとつの仕事に熱意を持って取り組み続けている人の姿にいつも憧れを抱きます。どうやって自分にとって磨き上げたいと思うテーマを見つけて、生業として自分の中心に持ち続けているのでしょうか。

ひとつの事に長く熱心に向き合っている人として思い浮かんだのが、個人的にも活動を追っていたオーダー専門のシャツ屋「holo shirts.(ホーローシャツ)」を主宰する、窪田健吾(くぼた けんご)さんでした。

現在は「シャツ」のみならず、ジャケットやパジャマなどのアイテムも取り揃え、熱意を途切れさせることなくお仕事の幅も広げて活動されている様子。

目移りしやすい飽き性な私の姿は、窪田さんとは正反対かもしれません。そんな自分のことを見つめ直すつもりで、窪田さんにじっくりインタビューをしました。

 

「買えないなら、作っちゃおう」が始まりです

▲取材の日は、東京・祐天寺にあるギャラリーで「holo shirts.」のオーダー会が開催されていました

窪田さんが洋服作りを始めたのは、高校生の頃から。それから現在まで20年近く、服作りへの情熱はずっと続いています。

窪田さん:
「当時、ファッションが好きで雑誌もたくさん読み込んでいました。でも、いいなと思う洋服は高校生には手がでない価格のものが多くて。

それだったら、古着や父のお下がりを生地にして、家にあるミシンを使って似た形の洋服を作ってみればいいんじゃないか、と服作りを始めたんです。手を動かす工作全般が好きだったので、その一ジャンルという気持ちで始めました」

窪田さん:
「見よう見まねで作っているうちに、ただ布をミシンで縫い合わせるだけでは思い描いた形の服はできないんだな、と自分なりに理解して。どうすればいいんだろうと興味のスイッチが入りました。

大きな本屋さんで服飾の専門学校の教科書を買って勉強したり、手に入れた型紙をいじってリメイクしたりと、独学で服作りにのめり込んでいきましたね。

こんな風に服作りを始めたのは高校を卒業する間際のタイミングだったので、専門学校ではなく一般の4年制の大学へ進学しました。

大学生になるとアルバイトで貯めたお金で買える洋服も増えましたが、洋服作りは変わらず楽しくて、自分用や友人用の服作りを、趣味でずっと続けていたんです」

 

小さなきっかけをくれたのは、漫画の主人公

趣味で服作りを続けていた学生時代の窪田さん。就職活動のタイミングで、服を扱う仕事をしたい思いはありましたが、当時は具体的なことまでは思い描けていなかったそうです。

窪田さん:
「学生時代の僕は、仕事として服とどう関わりたいのか、うまくイメージできていませんでした。

でも、就職活動を始める手前の時期に、スーツを仕立てるテーラーを題材にした漫画『王様の仕立て屋』(大河原遁、集英社)にハマって、鈴木健次郎さんというパリで一流のテーラーとして活躍されている方の存在を知って、テーラーってかっこいいなという気持ちが芽生えたんです。

就職活動に着ていく服として、オーダースーツは値段が高くて手が出せないから、せめて『いいシャツ』を仕立ててもらいたくて、オーダーシャツ屋さんでシャツを作ってもらおうと思いました」

▲吉祥寺にある「若林ワイシャツ店」で、窪田さんが仕立ててもらったオーダーメイドシャツ

窪田さん:
「よく遊びにいっていた吉祥寺に、『若林ワイシャツ店』という老舗のオーダーメイドシャツ屋さんがあって。棚一面にシャツの生地がズラリと並んでいるお店の佇まいがかっこよくて、前を通りかかるたびに気になっていたお店でした。

緊張しながら扉を開けて、お店の人に話を聞くと、1万円ほどでシャツを仕立ててもらえるということだったので、お願いしました。

出来上がったシャツは、自分の体にぴったりあった着心地の良いシャツ。こんなにもしっくりくる洋服がこの値段で作れるんだ、と出来上がりにすごく感動したんです。

その時すぐにシャツ屋をやろうとは思いつきませんでしたが、振り返るとこの時が仕事の原体験になっていますね。

シャツ屋を始めるまで、4年間は会社員として働いていましたが、仕事着用のシャツは、ほとんど『若林ワイシャツ店』で少しずつ買い足していきました」

 

『細く長く続けられる』仕事がしたいと思って

窪田さんは、どんな仕事をしたいかを具体化するためにも、ファッション業界全体の仕組みを知りたいと、繊維やファッション業界に精通する新聞社を志望し、入社します。

窪田さん:
「新聞社では忙しさもありましたが、たくさんのメーカーさんや生地屋さんとコミュニケーションを取ることができるのは楽しくてやりがいがあって、とにかく一生懸命働きました。

一方で、業界の仕組みを知るにつれて、袖を通されることなく廃棄される服が大量にあることも知りました。

それで、もし自分が服を扱う仕事をするなら、たくさん作って売り上げは大きいけれど廃棄もたくさん出てしまう仕事ではなくて、一人一人に合った服を作るような『細く長く続けられる仕事』ができたらいいな、とイメージするようになったんです。

そのためにできるのは『服のオーダー』というスタイルかもしれない、とブランドの形を徐々に思い描けるようになりました」

ファッションが好きという思いから始めた窪田さんの服作りは、会社員として働いていた時期もずっと続けていたそうです。

窪田さん:
「仕事が忙しければ、できない時もあると自分に言い聞かせて、無理に服作りを続けようとはしていなかったんですよ。必ずしなければいけないと思い込みすぎると、もしかするとその作業のことが嫌いになっちゃうかもなと思って。

でも手を動かして作る工程は好きで、毎回違ったものが出来上がる喜びがあります。そんなことが支えになって、ゆるゆるとでも作り続けることができたんだと思います。

お店を始める前の1年間は、独学だった服作りが本当に正しいかの確認のつもりで、会社員をしながら週に2回、夜間の服飾専門学校に通っていました。

そうして学校で自分に足りていなかった知識や技術を補って、ブランドを始める準備を進めました」

 

普段のための「オーダー服」をつくりたい

窪田さん:
「自分でお店をやるならオーダーというスタイルだ、ということがだんだんと思い描けてきました。同時に、オーダー服を『手の届きにくいもの』にはしたくないなという気持ちも。

気負わず着たい普段着こそ、体にしっくりくるものが手に取れる。そんなお店ができたらいいなと思いました。

服の中でも『シャツ』は、カジュアルシーンにもフォーマルシーンにも、日常いろんな場面で着ることが多いアイテムです。

一方で、肩や袖丈、首周りや身幅といったサイズには人それぞれ好みがあって、そのどれもが合っていないと、いまいち気持ちよく着こなせない。合うものを探すのが難しいアイテムだなぁとも思ったんです」

窪田さん:
「だから僕が、普段着でぴったり合うものを見つけるガイド役になれたら、という気持ちで『holo shirts.』を始めました。

人それぞれしっくりくる服の好みは変わるので、僕の店でのオーダーは、なんだかカウンセリングのような時間になっちゃうんですよね。

お客さんに『いつもどんな服を着ますか?』と聞くことから始まります。採寸をしてサイズをきっちり合わせるのはもちろんですが、どんな服をどんな風に着たいのか、自分の中の『好き』を整理してもらいながら、その人にぴったりなシャツを提案したいと思っています」

ファッションが好きで服作りを始めたこと。漫画がきっかけになってテーラーに興味を持ちシャツを仕立ててもらったこと。新聞社の仕事を通して袖を通されないままの服が数多くあることを知ったこと。

そうしたこれまでの小さなきっかけや気づきを、窪田さん自身が丁寧につなぎ合わせてきたからこそ「holo shirts.」というお店の形が生まれたのでしょう。

私自身、色々な物事に目移りする自分の飽き性にどう向き合えばいいのか迷っていました。

でも、あちこち目移りしてきた中にも自分にとって大切にし続けられている何かがあるのかもしれない。そう思うと飽き性なことを悪いことと捉えなくてもいいと、少し心が軽くなった気がしました。

続く2話目では、窪田さんがお店を始めてからの歩みについてお話を伺います。

(つづく)

【写真】メグミ


もくじ

 

窪田 健吾

2014年11月にオーダー専門のシャツ屋「holo shirts.(ホーローシャツ)」を開業。「普段着のシャツをオーダーメイドで」という思いで、その人が気持ちよく着られる洋服を仕立てる。店舗を持たず、全国各地を巡りながら受注会を開き、オーダーを受けている。
HP:https://holoshirtsoando.square.site/  Instagram:@holoshirts

 


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