【秋の夜長のオススメ本】日常がいとおしくなる料理とコトバ・高山なおみ「記憶のスパイス」
編集スタッフ 田中
文・写真 スタッフ田中
秋の夜長のオススメ本、最後のセレクトはBOOK TRUCKの三田修平さんにお願いしました!
私たちスタッフも大好きな高山なおみさんの本、旅と料理を結びつける、すてきなお話ですよ。
高山なおみ著「記憶のスパイス」
Story:全日空機内誌「翼の王国」に連載されたエッセイ「記憶のスパイス」に書き下ろしを加え、1冊になったもの。旅先で食べた味を、舌の記憶を頼りに作った料理の数々がすてきな写真とともに綴られている。
この本のミドコロ
自分のなかに眠っていた記憶を静かに呼び覚ます、高山さんの料理とコトバ。
高山なおみさんを一言で説明すると、食材や日常に潜んでいる<良さ>を引き出す達人といったところでしょうか。
その鋭い感性は、素材がもっている本来の美味しさを上手に引き出したシンプルで力強いレシピや、日常に潜むキラキラした瞬間をサッとすくい上げたみずみずしい文章を生み出します。
本書はそんな彼女の魅力である料理と文章を同時に堪能できる一冊です。
斎藤圭吾さんのしっとりとした質感の美しい写真とともに、自分の中に眠っていた記憶を静かに呼び起こしてくれるでしょう。
(ブックセレクト・文 三田修平)
スタッフ田中の「読んだあとに」
異国の地で支えてくれた味を、思い出しました。
この本を読んで、わたしの中に呼び覚まされた「味」がありました。
それは、これまでに旅した国や土地の名物料理などではなく、その地で私を支えてくれた味。驚くことに「日本のレトルト食品」だったのです。
▲思い出したレトルトおかゆのこと。
大学生の頃、夏休みを利用してモンゴルを旅したことがありました。滞在中、現地で頂いたヤクのチーズを食べお腹を壊して発熱。同行した私の友人も同じ症状がでて、二人して宿で寝込んでしまいました。
そんなとき外国人の体調不良をどう治してあげればいいか、困り果てた宿の方が「近くに日本人が営むパン屋がある」という情報をくれます。
少しずつ回復した自分も、まだ苦しむ友人のためにもなんとか食料を確保したい、とそのパン屋さんへよれよれの状態で向かいました。
パン屋のご夫婦、さぞかしびっくりしたことでしょう。
けれど、優しく迎えてくれて、私の持ち込んだ日本製のレトルト食品・おかゆを調理してくれ、さらに少し回復した私のためにパンをもたせてくれました。
そのおかげで私たちはなんとか回復し、ご夫婦にお礼を伝えて帰国することができました。
あのときのおかゆの味、さすがに覚えてはいません。呼び覚まされたのは、砂ぼこりのたつウランバートルの街中を、まだ微熱でぼおっとしていた私があたたかいおかゆとパンを抱えて歩いたときに感じた安心感。
これこそ、何物にも変えがたい「記憶のスパイス」なのでした。
本を紹介してくれるのは、BOOK TRUCKの三田修平さん。
秋の夜長のオススメ本を紹介してくださるのは、車でさまざま土地をまわり、移動式本屋「BOOK TRUCK」を営む三田修平さんです。
セレクトされた本はバラエティーに富んでいて、なかなか自分では見つけにくいものや、「この作家さんのこんな本が!」と新しい発見になる本などが揃っています。本屋さんで出会う、一期一会のきっかけを大切にされているのが伝わってくるようでした。
ここまで7冊をご紹介してきました、秋の夜長のオススメ本、いかがでしたか?
ご紹介させていただいた本との出会いになったり、みなさんの思う「秋の夜長に読みたい本」を本屋さんへ探しにいこうと思ってもらえたりしたら、とても嬉しいです!
今回ご紹介した本について
記憶のスパイス 高山 なおみ 齋藤 圭吾 アノニマスタジオ 2006-09 |
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