【きっかけの一冊】迷ったときもポジティブに。気持ちをラクにしてくれる一冊。
編集スタッフ 二本柳
文・写真 スタッフ二本柳
暮らし × Book
仕事、暮らし、子育て。あらゆる場面で「きっかけ」を作ってくれた一冊を紹介する本特集。
連載第2回に登場するのは、今まさに子育て真っ最中の3名のスタッフです。彼女たちが、子どもを育てたり家事をするなかで、気持ちをポジティブにしてくれるきっかけとなった本をお届けしたいと思います。
01. スタッフ青木
この一節:
「こんなときも過ぎてゆくのでしょう。全てが過ぎてゆくのです。」
-よしもとばなな『ベリーショーツ』(ほぼ日ブックス)-p.216
はじめての育児にいつまでも慣れることができず、一日の大半を赤ちゃんと1対1で過ごす日々。寝不足が続き、抱っこで肩や腰がしびれっぱなし。ご近所さんに「赤ちゃん可愛いね」と声をかけられるだけで涙が出そうになるほど気持ちに余裕が無かった日に、本屋さんで目に飛び込んできたのがこの本です。
「この世は小さい面白いことだらけ。」という帯を見て、まっすぐにレジに向かいました。
この本には、仕事・家族・友だち・育児のことなど、暮らしの中の一場面を切り取った、短いお話がたくさん出てきます。
ぼんやりしていると見過ごしてしまいそうに小さなエピソードの数々は、ぷぷーっ!(笑)と笑えて、張っていた肩の力がフッと、いやガクーッと抜けていくものばかり。脱力系のイラストも見ているうちに愛おしくなってきます。
一見イラッとする出来事も、落ち着いて俯瞰してみると面白い要素が混じっている。毎日はそんなことの集まりなのかもしれないなと思えました。
足元しか、今のことしか見えていなかったその時の私に足りなかったのは、小さいことを面白がる余裕や笑いだったのでしょうか。笑うだけで、重かったはずの肩や腰がこんなに軽い!ちゃんとしなくちゃと頑張ることも大事だけれど、ハハハと笑うことの力を見くびっちゃいけないな。近くばっかり見てないで、遠くの景色を見てみようと思ったのでした。
日々たいへんだと感じていることも、終わってほしくないよう愛しい瞬間も同じように全ては過ぎていくのだから、ぷりぷり怒りながらも心の片隅では楽しもう、と気楽になれた本です。今年お母さんになったばかりの幼馴染みにも贈りたいなぁ。
02. スタッフ齋藤
この一節:
「焦らないで、だいじょうぶ。
悩まないで、だいじょうぶ。
子どもをよく見ていれば、だいじょうぶ。
子どもは子どもらしいのがいちばんよ。」
-中川李枝子『子どもはみんな問題児。』(新潮社)-p.10
大好きな絵本「ぐりとぐら」を生んだ中川さんが書いた、子どもについての本があると聞いて本屋に探しに行きました。
すると、あの見慣れた可愛らしい挿絵が表紙の小さな本を見つけました。
手にとってすこしパラパラとページをめくると、自分に語りかけてくれるような、力強くやさしい文章であふれていました。
この本を手にとったのは、確か息子が保育園へ行き出し、自分も仕事復帰をしてしばらく経った頃だった気がします。家で本を読む時間はとれなかったけれど、この本は、そばに置いておきたい。そう思ったんだと思います。
保育士さんを経験された筆者だからこその言葉は、新米母である自分の、日々「もっとこうできたらいいのに」や「なかなかうまくいかない」といった不安な気持ちをバーン!と背中を叩きつつ励ましてくれるものでした。
一つ一つの章が短く、寝る前のほんの1、2分にぱらっとめくっていました。
そうすると、子どもに対して大きな心で向き合えて、その日の良かったこともそうでなかったことに対しても「だいじょーぶ」という心にリセットできる気がしています。
03. 店長佐藤
時おり、仕事のことで気持ちがいっぱいいっぱいになってしまうことがあります。プレッシャーの大きなプロジェクトや組織の変化が重なったタイミングが大抵そうなりやすい。結局は乗り越えて結果をひとつひとつ出していくしかないのですけれど、その現実も重々分かったうえで、それでもいったん現実逃避をしたくなります。
わたしは「現実逃避」というのは「再び現実にうまく戻るための精神的療養」と捉えていて、そんな時必ず読むのが料理家高山なおみさん著の「日々ごはん」という日記本。
高山なおみさんと夫・スイセイさんのたんたんとした日常が刻まれた本なのですが、高山さんが料理をしながら、テレビを観ながら、スイセイさんと散歩をしながら、親しい人と呑みながら感じたこと考えたことが本当に面白い!一文一文を読みながらわたしも一緒に高山なおみさんの日常を味わっていくうち、自分の凝り固まっていた心がゆるゆるとほどけていくような感覚を味わうことができます。
読み終わった後は「さあて、元気な野菜や魚でも買いに行って素朴でおいしいご飯を作るとするか」という気分に。単純です(笑)でもそれくらい「単純」で「大切」な地点に自分の意識を戻してくれる良書ということだと思っています。
これがきっとわたしの現実逃避であり精神的療養になってるのではないかと。素朴でおいしいご飯を作って「よし、ひとつ私にもできた!家族も喜ばせられた」という体験が追加されると、次は「さあて、じゃああっちの仕事もまた頑張りますかね」という心境に。これで、現実と再び向き合う準備完了です。
「寝ながら、私はいくつも夢をみる。夢というかビジョンというか。その中に、誰かに説教されているというのがよくあります。言葉が耳の後の方から聞こえてくる。内容は具体的なことではなく、何かを暗示するような意味のことを、その声は延々と私に説教するのです。
今日もそうだった。けれどそれはとてもためになることだとわかっていて、寝ながら私はその通りだと思っている。そして起きてみると、何のことだったか忘れている。たとえてみると、その声はインディアンの長老のような感じなのです。けどそれが、私の中の頑固ばばあのような気もする。」
-高山なおみ『日々ごはん(1)』(アノニマ・スタジオ)-p.100
(つづく)
本日ご紹介した本の情報。
ベリーショーツ 54のスマイル短編 (ほぼ日ブックス) よしもと ばなな ほぼ日刊イトイ新聞 東京糸井重里事務所 2006-11-01 |
子どもはみんな問題児。 中川 李枝子 新潮社 2015-03-27 |
日々ごはん〈1〉 高山 なおみ アノニマスタジオ 2004-06 |
もくじ
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