【フィットする暮らし】第3話:無理なくできることしか、続けられないとわかった。
編集スタッフ 田中
写真 鍵岡龍門
自分らしく心地いい暮らしをつくっておられる方を取材し、お客さまにお届けするシリーズ「フィットする暮らしのつくり方」。Vol.11は、菓子研究家・いがらしろみさんにお話を伺っています。
今日は、いがらしろみさん(以下、ろみさん)の笑顔の素となる考え方が息づく「暮らし」をお届けします。鎌倉の中心部からすこし離れた高台にあるお家からは、清々しい山が近くに見えました。
この心地よい空間で営まれる暮らしや子育てについてお届けします。
第3話:無理なくできることしか、
続けられないとわかった。
子育て、家事、無理しないで続けられる方法をさがす。
ろみさんは現在、ご主人と娘さんとの3人暮らし。しかし、ろみさんも経営者として多忙、ご主人も同じくお仕事が忙しいため、幼稚園にかよっている娘さんの育児や家事まで、二人ですべてをこなすのは難しいそうです。
そこで、東京にお住まいのご両親に相談し、月曜から金曜まで鎌倉に滞在しサポートしてもらい、週末は3人で過ごすという生活になったのだとか。
いがらしろみさん:
「東京に住んでいたときは、お昼過ぎで終わってしまう幼稚園の後にもうひとつ保育園に行ったり、幼稚園への送迎サポートのある英会話教室に行ったりと子育てと仕事の両立には手を尽くしていました。
鎌倉に来たときも、今のようになるまではいろいろな方法を駆使して、両親にはたまにお迎えを頼むというくらいでした。けれどお店の移転後という忙しいときに、いよいよ家事・子育て・仕事……すべてをこなすのは無理かもしれないと感じてサポートを頼んだんです。
娘が小学校にあがるまでの期間限定とはいえ、かなり変則的な生活ですが、私の場合は力を貸してくれる人がいて幸いでした。両親とは率直になんでも言い合える間柄なので、甘えすぎていたら叱られます」
今の自分を取り巻く環境をみつめて、家族の在り方に最適な方法を探したのですね。
ろみさんのある1日
ろみさんの暮らしを紐解くべく、ある1日のスケジュールを聞きました。
6:00 起床 朝ごはんとお弁当の支度
7:20 朝ごはん
7:45 身じたくなど
8:40 子どもを幼稚園へ送る
9:30 オフィスへ着き、仕事を開始!
13:30 幼稚園のお迎え(両親や自分、どちらかが向かう)
18:00〜19:00 帰宅して夕食
19:00〜21:00 子どもと遊ぶ、入浴。
21:00 娘さんの寝かしつけ(絵本を読みながら)
22:00〜23:00 メールをチェックしたり、幼稚園のお知らせを読んだり。帰宅した夫と話すのはこの時間。
23:00ごろ 就寝
いがらしろみさん:
「だいたい寝かしつけするときに、一緒に寝てしまうんですが、23時ごろにまた起きて、メールチェックなどや家事ができるときと、そのまま寝てしまうときと、どちらもあります。
寝ちゃったときは、朝4時ごろに起きて本を読んだり、スケジュールを確認したり、洗濯物をたたんだり。ここが自分の時間かな」
▲娘さん用のコーナー。似顔絵や写真などが飾ってあります。
幼稚園のお迎えのあと、娘さんは習い事に行ったり、お店で過ごしたり。その時々によってろみさんかご両親、どちらかがお迎えにいくそうです。
たとえ人とは違っても、続けられる方法を探し、立ち止まって考える。つい「こうあるべきだ」と思ってしまいがちなことも、やわらかく解きほぐしてくれるようでした。
▲子育てにも「無理しない」という考えは共通。バレエは楽しく続いている習い事だそうです。
忙しくてもわたしができることって何だろう?
▲ある日のお弁当のメニューは、ハンバーグ、うずらの煮卵、いんげんの胡麻和え、レンコンのきんぴら、メンマ、一口カレー。
ご両親のサポートを受けつつ、ろみさん自身が毎日続けている家事のひとつが、娘さんのお弁当づくりだそう。
いがらしろみさん:
「娘は家では甘えて好きなものばかり食べるんですよね。ところが、お弁当にいれると『残しちゃいけない』という気持ちになるのか、だいたいペロッと平らげてきます。
だから私もここぞとばかり、いろいろなおかずをいれています(笑)」
お弁当箱を通じて娘さんの様子がありありと浮かんでくるようですね。ろみさんが「ここだけは」と毎日続ける気持ちが伝わってきます。
また、娘さんが習い事の前に遊びに行くお家へのお持たせは、ろみさんのお手製お菓子。
どんなお菓子なのか気になって、取材の日に合わせて作っていただきました。この日は、甘い香りのするホール型のカステラ。ちょうど仕事で依頼されたレシピ提案の試作だったそう。普段からちょっぴり仕事も兼ねながら、お菓子をつくっては娘さんに持たせるのだとか。
▲レシピ依頼先の声もいれつつ、アレンジも。「もっとはちみつをいれてしっとりさせた方がいいかも」とろみさん。
いがらしろみさん:
「『私ができることで、喜んでもらえること』ってお菓子づくりかなと思って。子どもがお世話になっている方に、せめてものお礼の気持ちをこめているんです」
子どもたちの感想は、ときに仕事のヒントにもなります。一緒に作るレシピはどんなのがいいんだろう?子どもの味覚にあわせるには?と、興味はつきません。
忙しい合間のお弁当やお菓子づくり、そこには自分ができることにはしっかり力を注ぐ姿がありました。
無理して作りこまない、自然と今の形になったインテリア。
▲奥:お父様用に購入したロッキングチェア(haluta)。手前の革張りソファ:HIKE
度重なる引越しに、仕事面でも移動が多いろみさん。昨年越してきたというお家は、「まだ家具の配置がぜんぜん決まってない」と言います。
大きな革のソファ、あたたかみのある木のダイニングテーブル、チャーチチェア、かわいらしい布張りのスツールに、アイアンの脚のソファ。
それでも、私には集まった家具たちが仲間になっているような印象を受けました。なんとなく、雰囲気が統一されているのです。
▲ダイニングテーブル:STANDARD TRADE、椅子:haluta×ミナペルホネンのもの2つ、チャーチチェア2つ、その他アンティーク
▲毎夜ろみさんはソファ、娘さんはスツールに腰かけて入浴後の髪の毛を乾かしているそう。ソファ:TRUCK、スツール:haluta×ミナペルホネン
いがらしろみさん:
「家具は割とインスピレーションで購入しているかもしれません。HIKEのソファは、これをみた瞬間に『ここに座ってテレビをみたい〜!』と思って買いました。
あとで考えたら、ソファが来る以前はダイニングテーブルの椅子に腰かけてテレビを眺めていましたから、お尻が痛かったんですね。潜在的にそういう思いがあったのかも。
かわいい布張りの椅子はミナ・ペルホネン×halutaのもの。雑誌の対談で皆川明さん*とお話をしたときに、『これからは家具の分野もやってみたい』とおっしゃっていて、その後この椅子を見たんです。
ああ、皆川さん、少しずつ実現されているんだ!と嬉しくなって」
*皆川明さん…ブランド「ミナ・ペルホネン」デザイナー。
引っ越しを繰り返すうちに集まった家具たちは、「配置が決まらない」と少し心配顔のろみさんをよそに、今にフィットしているように見えました。リフォームもしたいと言っていたろみさんですから、次にお会いしたらガラッと変わっているのかもしれません。
それもまた、楽しみだなと思いながら、長く使われて愛されている家具たちを眺めていた私でした。
すべてを抱え込まず、自分ができることを探すろみさんの姿。仕事を応援してくれる家族や周囲の助けがあって、今の暮らしがあるとおっしゃっていました。
「あれも、これもしなきゃ!」と頭でっかちになりがちな私には、もっと自分に優しくして、周りを見渡してごらんよ、と言われている気がして、肩の力がぬけていったんです。
次回は、ろみさんのフィットする暮らしとは何か、その答えがありそうな「変化する日々」のことをお聞きしました。
(つづく)
もくじ
いがらしろみ(菓子研究家)
小さな頃からお菓子づくりが好きで、短大卒業後、フランス菓子店製造部に就職。その後パリに留学。ル・コルドン・ブルーでフランス菓子を学ぶ。帰国後、ル・コルドン・ブルー東京校事務局に勤務。2002年より菓子研究家・romi-unieとして活動をスタート、2004年に鎌倉にジャムの専門店「Romi-Unie Confiture」を開店。2008年に学芸大学に焼き菓子とジャムの店「Maison romi-unie」を開店し、お菓子教室も開催。ほかに、カップケーキ専門店「Fairycake fair」のプロデュース、商品開発や、アドバイザーなども務める。新著「いがらしろみのレシピノート」(2016年4月20日 NHK出版)が発売予定。
▽いがらしろみさんの著書
romi-unie books第1弾のレシピブック。ビスケットをテーマに、バターガレットやレモンクッキー、ショートブレッドなど全44種類のレシピを収録。(自主制作のため販売はwebshopか一部取り扱い店のみ。HP:http://www.romi-unie.jp/)
感想を送る
本日の編集部recommends!
冬のファッションアイテムが入荷中!
すっきりシルエットのニットパンツや、人気のコートやカーディガンなど、秋冬ものが続々入荷しています
【数量限定】当店オリジナルコスメの「お得なセット」が登場!
当店人気のリップバームや新作のネイルなど、選べる6種のセットをご用意。クリスマスのギフトにもおすすめですよ
お買い物をしてくださった方全員に「クラシ手帳2025」をプレゼント!
今年のデザインは、鮮やかなグリーンカラー。ささやかに元気をくれるカモミールを描きました。
【動画】夜な夜なキッチン
縫って、編んで、お気に入りの景色を作る(「HININE NOTE 」スタッフ・彩さん)