【スタッフコラム】真夜中の父と猫。夜中の2時に起こる、謎のできごと。
編集スタッフ 齋藤
▲年末年始といえば帰省ですね!
海外と同じくらい、実家も非日常だった。
お正月は海外、なんて夢のまた夢。私は毎年実家に帰省しています。帰省といっても都内を移動するだけなのでメリハリもつかず「九州の実家に帰る」なんていう友人を毎年羨んでおりました。
郊外の住宅地で父と兄、そして拾ったために年齢不詳の黒猫が暮らしています。
どうせ今年も代わり映えしないお正月なんだろうなぁなんて思っていたのですが、私も実家を出てかれこれ5年。そうなると同じ家族といっても生活習慣は大きく異なり、価値観も変わってくるようで……。
そうしたちょっと離れたところから実家の様子を観察してみると、まるで違う文化圏に旅行に行ったかのように謎に満ちていることに気がつきました。
例えばふたり暮らしにもかかわらず洗面台には6本も歯ブラシがあるし、冷蔵庫の中には0.7mmくらいの薄さにされた余りのご飯が詰まっている。(なぜわざわざこんなにも薄くしているんだろう?と思う厚さでした)
首を傾げたものの、私はもうこの家を出た身。彼らには彼らの居心地の良い暮らしがあるのだと何も言わずにおりました。
ただ唯一、唯一思わず口をはさみそうになったことがあり、それは夜中の2時に父と猫が繰り広げているとある習慣だったのです。
父と猫の、真夜中の新習慣。
猫という動物はどうやら夜行性らしく、実家の猫はみんなが寝静まってから廊下を駆け巡り、さらに鳴き出すという癖があります。
遊んで欲しいようなのですが、このお正月も例外ではなく眠いし寒いし相手になんてしていられない。気にせず寝ようとして再度眠気が訪れたのも束の間、今度は「はーい」という声が家の中に響きわたり、私をぎょっとさせました。
父です。
しばらく布団の中で様子を伺っていたのですが、続く言葉が「うるさいよ」だったので「なるほど躾か」と腑には落ちました。
ところが数日実家で寝泊まりをしていて嫌でも気づかされたのですが、このやりとり、私が知らない間に毎夜行われたらしいのです。「にゃー」「はーい」「にゃー」「うるさいよー」「にゃー」「もう寝るんだよー」以下略。
3日経ったくらいだったでしょうか、思わずとある気持ちが私の中で沸き起こりました。
うるさいのは猫ではなく、父ではなかろうかと……。
猫の可愛い声よりも、我が父ながら中年男性の声の方がよっぽど気になるわけです。
そもそも相手にしなければ猫もやらなくなるのではなかろうかとも思いながら「ここは異国の地なのだ」と「ここは文化が違うのだ」と「今はお正月の観光ツアー中なのだ」と自分を納得させ、この思い出を旅先の珍事件の引き出しに入れ私は実家を去ったのでした。
実家は不思議に満ちている。
ちなみにですが、猫の名前はキクといいます。けれども父は「つっつー」と呼んでいます。「つ」の字は一体どこから来たのだろうとその理由を聞いてみたところ「なんでもいいんだ」とのことでした。
都内郊外住宅地、そこは未開の地。理由の解明は文化人類学者に任せたいと思います。
とにもかくにも久しぶりに訪れた実家は、まるではるか遠くに来たかのように謎がいっぱいなのでした。
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