【スタッフコラム】上京10年、いまだから見えたこと
商品プランナー 斉木
「北欧、暮らしの道具店」がオープンして今年で10周年。
店長の書籍の発売やオリジナル手帳のプレゼントも始まって、社内では「10年」という言葉が至るところから聞こえてきます。
ふと、「わたしは、この10年で何が変わったかなぁ」と考えていたら、今年が上京10年目だということに気づきました。
一番変わったのは、なんだろう?
いま28歳のわたしは、10年前、片田舎で東京進学を夢みる高校3年生でした。
この10年で親元を離れ、住む場所も、やっていることも、あの頃は想像もできなかったほど遠いところにきたような気がします。
満員電車にオロオロしなくなったり、憧れだったお店にひとりで入れるようになったり、変わったことを上げ始めるとキリがないけれど。
でも、一番変わったのは、地元や家、家族に対する感じ方かもしれません。
わたしの実家は、曽祖父が建てた築60年近い古民家です。
冬は信じられないくらい寒いし(家のなかなのに0度近いことも!)、夏にはありとあらゆる虫がやってくるし、間取りが和室ばかりなのも、嫌でたまりませんでした。
小学生くらいまでは、新聞に折り込まれている住宅のチラシを指差して、「ココなんてどう?」と半ば本気で両親に勧めていたような記憶も。
でも、実家を出て数年、22歳を過ぎたあたりから、すこしずつ「古いもの」に惹かれていくようになったんです。
ヴィンテージの洋服に始まり、雑貨や家具。最近ではあんなに毛嫌いしていた日本家屋や古民家、民藝といったワードを聞くといそいそと電車を乗り継いで足を運ぶ有様。
好きだと思うものの延長線上には、自分が暮らした家があるのかもしれない。
住んでいた頃は嫌なところばかり目についていたくせに調子がいいなぁと、そんな自分がちょっぴり恥ずかしくもあります。
でもいまは、できる限りそのままのかたちでこの家を保っていきたい。帰省するたびに、両親とそんな相談をするようになりました。
そしてもうひとつ大きく変わったのが、両親に対する想いです。
我が家は自営業で、父と母が揃って休める日は年に数回しかありません。
休み明け、家族旅行の話で盛り上がる友達の輪に入れずさみしく思ったり、スーツをビシッと着こなすサラリーマンと、汗をかきながら走り回る両親を比べて、すこしだけ恥ずかしいと思ったこともありました。
でも、就職活動を始めたときや、実際に社会人になって働くようになったとき、真っ先に思い出したのは働く両親の後ろ姿だったんです。
商売がうまくいくときも、そうでないときも、あったと思います。
それでも、毎日楽しそうに働く姿や、自分たちの仕事が好きで、もっとこうしたいと前向きに話し合う姿。
そういう背中を子どもたちに見せることが、両親の仕事人としての矜持だったのかな、といまでは思います。
「社会人の先輩」として父や母を見ることができるようになったのは、わたしに訪れたとても大きな変化でした。
10年前、わたしはもっと広い世界を見るんだ!と、地元を飛び出しました。
東京という街の持つエネルギーや刺激に引っ張られ、まだ見ぬものに手を伸ばし続けられる。そんな東京が、わたしは好きです。
一方で、じわじわと滋味深く浸透してくる、地元や家族の強さ。地元を「狭い」と片付けていた高校生の自分を、若かったなぁと思えるくらいには、この10年で大人になりました。
離れたからこそ見えるものは、きっとこれからの人生で増える一方なのでしょう。
この先の10年、自分や周りにどんな変化があり、その時、いまの自分がどう見えるのか。
楽しみ半分不安半分ですが、日々感じたことをていねいにすくい取りながら、歩んでいけたらと思っています。
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