【44歳のじゆう帖】5歳の息子とのコミュニケーション
ビューティライターAYANA
息子との距離感、私の場合
うちには5歳の息子がおります。来年小学生です。
5歳ともなるとだいぶ意志の疎通(お腹空いてる?そうでもない、など)や論理的な自己主張(AだからBがしたいなど)もできるようになってきたなァ…としみじみしてしまうのですが、今のところみた感じ元気に生きているようです。
私は息子が生まれたときに「可愛くて可愛くて仕方がない」みたいには1mmも思えなかったタイプでして、人間として何か大切なものが欠けているのでは?と自分に不安を感じたものでした(ちなみにいまも不安です)。
可愛いと思えるようになったのは、カタコトの言葉を話すようになり、こちらの投げたボールにレスポンスがもらえるようになってからで、それまでは「この何を考えているかわからない危なっかしい生命体をどう扱ったらいいのか」みたいな緊張状態が98%を占めていたように思います。
いまでも息子に対して「母子の絆」や「絶対的な愛」みたいなものを感じたことはあまりなく、いちばん近くにいる存在でありながら、いちばん「わからない」存在です。
普通に可愛いですし、大切ですし、健康に幸せに生きていってほしいとは強く思うのですが、それでも、どちらかというとたまたま同じ宇宙船に居合わせた人という風情が色濃い。
そしてそれは彼が成長していくほどにますますそうなっていくのだろうな、と感じています。それは彼が私をどんどん必要としなくなっていくから、ということなのですが。
離婚について、息子が言ったこと
彼が3歳のときに勝手ながら離婚させていただきました関係で、母ひとり子ひとり猫ひとりという環境になって2年半ほど経ちました。
こういった家族形態の経験が私にないため、また私と息子では性別も異なるため、彼の心情を想像するには限界があります。
息子はどちらかというと静かな性格で、あまり不平不満を言いません。離婚した当初は彼のその静かさをよく不安に思い、なんとかしなくてはと思っていました。状況を察して言いたいことを言えずに抱え込んでしまっているのではないかとか、こちらの顔色を伺っているのではないかとか。
彼をどうケアすればいいのか悩みながら、離婚したけれども今の状況はネガティブな結果ではなく、これが私たちのスタンダードなんだ、とふるまうことくらいしかできませんでした。
「離婚」や「別れる」という概念を、3歳の子どもに言葉で説明するのはなかなか難しいものです。
ですが、離婚して数ヶ月たったとき、私にとってかなり衝撃的なことがありました。保育園へ登園した折、同じクラスの女の子が来て「○○くんってさ、お父さんいないんでしょ?」と聞いてきたのです。
そうしたら息子は静かに「いるよ。一緒に住んでないだけ」とだけ答えました。きっぱりと、かといって虚勢を張るでもなく、好きな色を訊かれたときみたいなテンションで。毅然と。
本当にパーフェクトな答えでした。離婚しているけれど、お父さんは息子のお父さんであることに変わりはない。その短い台詞にすべての情報が美しく集約されている。そのとき私は無言でしたが、心の中ではオペラ座の観客たちがスタンディングオベーションしてるような感じでした。
それ以来、息子のことを理解しよう、把握しよう、ケアしよう、と意気込むのはおこがましいのかもしれない、と思うようになりました。
教えられることなんて、少ししかない
相変わらず手探りの日々ですが、離婚して以来、息子と接するにあたって決めていることがあります。
それは我慢をしないこと。隠し事をしないという意味ではなく、嘘をつかない。カラ元気とか、変に忖度したりしない。疲れたら「今日もう本当に疲れすぎてて無理でしてご飯作れないのでピザとってもいいですかねすいません」と言う(ちなみに息子は喜びます)。
毎晩絵本を一冊だけ読むことにしてるのですが、生理痛でしんどいときなどは「今日は体調が悪いから読めないんだけどいいかな」と言う。すぐに弱音を吐くというのでしょうか。
ただし「離婚してごめん」とか「家が狭くてごめん」とか「こんな辛い思いさせてごめん」みたいなことは絶対に言わない。それに対する息子の返しって許しのようなものになってしまうからです。それを子どもに背負わせるわけにはいかないというか。
だからこそ自分にできる最高のことが今これなんだよね、というスタンスでいたくて、それには私が今の状況を幸せだと思っている必要が絶対にあると思っています。
息子の不満や不安を見ないようにする、ということではなくむしろその逆なのですが、そのためにも「今の状況は息子にとって不憫である」といった色眼鏡は邪魔なものだな、とも思います。
そんなことより、今日しかない息子の表情をきちんと見ようよね、というか。
そういうことを考えるとき、いつも3歳の息子が毅然として「いるよ。一緒に住んでないだけ」と答えていた態度を思い出し、そこに師をみるのです。
そして、きっとこれからも息子に教えられることなんて本当に本当に少しだけだけれども、息子が私に教えてくれることは計り知れないんだ、と気づくのです。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
▼AYANAさんに参加してもらい開発した、オリジナルのメイクアップシリーズ
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