【すいとん、だんご、うどん。あったか汁物めしあがれ】 第1話:旬の野菜の甘みがたっぷり「すいとん」
ライター 片田理恵
白い湯気が立ち上る、大鍋にたっぷり入った熱々の汁物。何度も息を吹きかけて舌を焼きながら食べた小さい頃の思い出は、それだけで体と心をポカポカ温めてくれるようです。母や祖母が作ってくれた素朴なおいしさ、毎日食べても飽きない、大好きだったあの味を、今度は自分で作ってみたい。
私たちのそんなリクエストに応えて、これまでにさまざまな地域を取材し、ご当地の食材を生かした新しい料理を提案してきた料理家・minokamoさんが、寒い季節にうれしいあったか汁物の作り方を教えてくれました。全3話でお届けします。
初めて食べても懐かしい。もっちりつるんとやさしい味
全国津々浦々、ひとくちに汁物といっても種類は無数にあります。その中からまず取り上げるのは「すいとん」。似たような食べ方が各地で見られ、その呼び名は地域によって異なりますが、定義としては「粉と水を練った生地をちぎって、熱い汁の中に入れる食べ物」といってよさそう。
これ一品で食事になるくらいのボリュームと栄養があるのに、作り方はごはんを炊いて味噌汁を作るより簡単かも? minokamoさんのそんな言葉に思わず身を乗り出してしまいました。冷蔵庫のあまりもの活用にもぴったりで、野菜の切れ端はもちろん、少量残った肉や油揚げもおいしく食べられます。
minokamoさん:
「群馬県で地元のお母さんたちに教わりました。あまり知られていませんが、群馬は小麦の生産量が国内4位という名産地。県内の各地で独自の粉もの文化が育まれ、すいとん、おつみこみ、ねじっこなど、さまざまな名前で広まってきました。とにかく生地がおいしいんですよ。私は薄めの生地のツルっとした食感が好き。食べる人の好みで具や味を変えられるところも、作りやすくてすごくいいと思います」
材料は「うどん粉」? いえいえ、薄力粉で大丈夫です
すいとんの作り方を検索すると、材料で真っ先に出てくるのが「うどん粉」です。これは「中力粉」と呼ばれる小麦粉のこと。小麦が多く取れる地域ではスーパーでも普通に売られていますが、例えば東京でこのうどん粉を探すのはなかなか至難の業。手に入らない場合はどうしたらいいのでしょうか。
minokamoさん:
「小麦粉には薄力粉、中力粉、強力粉の3種類があります。すいとんは中力粉で作るものだといわれますが、薄力粉でもおいしくできるんですよ。薄力粉だけで作ってもいいですし、薄力粉と強力粉を混ぜて使うと、中力粉に近いもっちり感が再現できます」
汁物に入れる具材は何でも合いますが、今日は同じ群馬県の特産品であるこんにゃくを投入。食べ応えがあって野菜や油揚げとの相性もよく、すいとんにはぴったりです。
野菜たっぷり、あったかヘルシー!
翌日の朝ごはんにもおすすめ「すいとん」
大鍋でたっぷり作り、フウフウ息を吹きかけながら食べたいすいとん。今回はあっさり醤油味に仕上げたこともあり、合わせるおかずにはきんぴらごぼうなどしっかりした味付けのものを選びました、とminokamoさん。普段の食事に取り入れるならすいとんを汁ありの麺と捉え、食卓を整えていくのがよさそうです。
材料(汁椀4杯分)
すいとんの生地
・薄力粉 90g
・強力粉 10g
・水 50cc
※小麦粉はすべて薄力粉でも可。その場合は100gを用意する
汁物
・こんにゃく 1/2枚(150g)
・好みの野菜(今回は人参1/2本、ごぼう1/2本、大根5cm)
・油揚げ 1枚
・白ねぎ 1/2本
・生姜 1/2片
・水 800cc
・煮干し 2尾
・醤油 大さじ2
・みりん 大さじ2
・米油 大さじ1と1/2(オリーブオイル、サラダ油でも可)
作り方
1. 小麦粉と水をボールに入れて手でこね、ひとまとまりになったら生地を丸めて10分寝かせる。
2. こんにゃくはスプーンで一口大よりも少し小さめにちぎり、沸騰したお湯に入れて2~3分ゆで、アク抜きをしてざるに上げておく(アク抜き済みのこんにゃくであれば不要)
3. 野菜は皮をむいて食べやすく切り、油あげは熱湯をかけて油抜きしてから短冊切りにする。
4. 鍋に米油、人参、ごぼう、大根を入れて強火で2分ほど炒め、そこに水、煮干し、醤油、みりん、生姜、油揚げ、こんにゃくを加える。沸騰したら中火にして白ネギを加え、フタをして煮込む。野菜に火が通ったら生地を長く伸ばして手でちぎりながら入れ、2分以上加熱したらできあがり。
minokamoさん:
「出来立てはもちろんおいしいですが、翌日の味が染みたすいとんも捨てがたい。ぜひ生地の質感の変化を味わってみてください。味付けは醤油ベースや味噌ベースなど、地域や家庭によって異なるのがすいとんの特徴。あっさり醤油味なら薄力粉が多めのなめらか生地、濃厚な味噌味なら強力粉の分量を増やしたもっちり生地というふうに作り分けるのも楽しいですよ」
心も体も喜ぶおいしさ。こんな料理が作りたかった
野菜や油揚げの甘みとうまみがきいたたっぷりの出汁と一緒にほおばる、熱々のすいとん。もっちりと弾力のある生地は噛むほどに味わい深く、おかわり必須のおいしさでした。つるんと喉越しがいいのにボリュームもしっかりあるから、満足度も抜群。
いつもの味噌汁やお吸い物に入れるという気軽なアレンジから、まずは楽しんでみるのがいいかもしれません。例えば家族がちょっと体調を崩した時。例えば木枯らしの吹く寒い寒い朝。こういう料理をささっと作れたらすてきだなと思うから。
次回第2話では、北海道のいも団子汁が登場。ご当地食材を使って北の味覚をお家で楽しむ方法をお届けします。
【写真】minokamo
もくじ
minokamo
料理家、写真家。岐阜県美濃加茂市出身。祖母と一緒に料理したことが料理活動のはじまり。日本各地の郷土食の取材にも力を入れている。近著に『料理旅から、ただいま』(風土社)がある。http://minokamo.info
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。暮らし、食、子育て、地域などをテーマに取材・執筆に取り組む。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
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