【エッセイラジオ】第37夜:山本 ふみこさんのエッセイ「艶!」(読み手 スタッフ鈴木)
編集スタッフ 鈴木
今日も1日おつかれさまでした。
皆さんこんばんは。日曜日の20時、いかがお過ごしでしょうか?
週末でリフレッシュされた方や、明日からの一週間に備えて気持ちを整えている方、思い思いの時間が流れていることと思います。
そんな誰もがほっと一息つきたい時間に「おつかれさま」の気持ちを込めて、「エッセイラジオ」をお届けします。
思うようにいかなかった昼間の出来事や、いつも心の端に引っかかっている悩み事など。生活していると日々色々とありますが、このラジオを聴いているその時間だけは、一旦それらを手放して、ゆったりと声に身を任せていただけたら幸いです。
今夜のエッセイの書き手は、随筆家の山本ふみこさん。読み手は、当店スタッフの鈴木です。
ではさっそく、今夜のエッセイの世界へ、どうぞいってらっしゃいませ。
艶!
山本 ふみこ
「何かが足りない……!」
いまから5年くらい前でしょうか
(当時のわたし50ン歳)、
自分に何かが不足しているような気がして、
わたしはもやもやしていたのでした。
そうしてある日、ひとつのことばが、
頭のなかではじけました。
「艶!」
書くものにも、話すことばにも、
はたまた料理にも、文字にも、佇まいにも、
自分というひとの全体に足りていないのは、
艶!と気がついたのです。
さて、どうしたら艶は出せるのでしょう。
友だちに打ち明けたら、
「恋をしたら艶は出るんじゃないの?」
なんてはなしになったりして、
いやいやそういうことじゃなくてさ……、と
あわてました。
恋のはなしは、
このたびは、ちょっと置いときましょう。
わたしは考えて、顔、髪、手足に
クリームやオイルを擦りこむことにしたのです。
長年無頓着でしたから、
顔たちは「いまさら」と驚いたことでしょうが、
よろこんでくれました。
「艶」と書いた小さな紙片を、
机の隅っこに貼りつけたりもしました。
それを見るたび、「艶」を思いだすわけです。
おもしろかったのは、
おもてにあらわれるものと
内面とが連動しているという、発見。
「艶」を意識するだけで、
そうして見えるところに
クリームを擦りこむだけで、
書くものにも、会話にも、料理にも
ちょっと艶が出てきたかな、と思ったことです。
そのうち、だんだん身につけるものに
きれいな色を選んだり、
母や祖母たちからゆずり受けた
指輪やブローチをつけたりするように
なってゆきました。
白、黒、グレー、ブルー一辺倒、
ヒカリモノなしのわたしでしたから、
はじめのうち自意識過剰になって、
身をよじったりしていましたが、
すぐ馴染みました。
「そのブラウスのピンク、きれい」
なんて云ってもらうと、跳ねたくなります。
装いも艶も、自分のためのものだけれど、
場をつくるため、
「場」に贈るためのものでもあるのですね。
わたしは家の玄関に白百合を、
居間に花を飾ることにしています。
5年前のあの日から、家という「場」に
艶を贈る気持ちで生けるようになりました。
こんなことも、家とわたしとのあいだに、
艶やかに連動するのじゃないでしょうかね。
いかがでしたか?
ほんの数分ではありますが、心の緊張がほどけたり、すうっと眠りに入るきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。
次回の配信も、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
エッセイラジオを通して、このささやかなエールが届きますように。それでは、おやすみなさい。
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