【45歳のじゆう帖】「お金」についての雑感
ビューティライターAYANA
お金に無頓着だった若い頃
私はもともとお金について無頓着なほうだと思います。人のお金に対する意識というのは、それぞれにその人の生い立ちが関係しているのではないかと私は推測します。無頓着なのは、私は生い立ちにおいて、そこまでお金に困った経験がないからだと思います。
特に裕福な家庭に育ったわけではありませんが、たとえばどうしても欲しいものがあって、お金が足りないから諦めなければならない、といった経験はさほどないように記憶しています。
親はお金に厳しいほうで、私はお小遣いをもらったことがありません。ですが、親戚からお年玉をもらっていました。それを自分で12ヶ月分に分け、計画的に使うことで事なきを得ていました。当時の私の出費といえば、雑誌、CD、映画、文房具などでしょうか。今とさほど変わらない気もしますが、分不相応なものを欲しいと思わなかったことは幸運と言えるかもしれません。
高校生になるとバイトをはじめ「欲しいものがあるならお金を稼げばいいんだ」ということに開眼。稼いだぶんだけ使うし、お金がなければものを買うこともしない。なんとなく、そんな感覚で生きていました。
大学生のときは一年間バイトで学費を貯めて専門学校に通いましたが、やりたいことや欲しいもののためにお金を稼ぐことが苦ではない性質なのでしょうね。貯めることはできますが、その代わりに漠然と将来に備えて貯金するという発想はあまり持っていなかったと思います。
お金に無頓着、もっと言えばそこまでお金に興味がありませんでした。そこから私が変わったのは、35歳でフリーランスになってからです。
お金についてのイニシアチブ
お金を稼ぐということが、より自発的になるフリーランス。最初の頃は、確定申告やギャランティの交渉など、お金にまつわる業務がとても苦手でした。
フリーランスは基本給がありませんから、お金にまつわるセンシティブな事案が発生することがあります。
たとえば、お仕事の依頼をいただいて、ギャランティのことを取り決める前に案件が進行してしまうこと。こちらから切り出すべきなのか、ご提示いただくのをお待ちしていたほうが失礼がないのか、モヤモヤと悩んでしまうことがあります。
また、お見積りを提示しなければならない局面があります。基本給のない世界ですから、自分で相場を決めなければいけません。でも、それがわからない。同業の人に「いくらくらい貰ってる?」と訊くのも失礼な気がするし、どうしよう……となってしまう。
目安となる情報が乏しいなかで、あまり奢らずに金額を提示しなければ、と迷ってしまいます。
今思えば、会社員のころの癖が抜けていなかったなぁと思います。それに従うから、誰かが決めてよ、と思っていた。自分でイニシアチブをとるのが怖かったんですよね。しかし、お金に関するイニシアチブを取れることこそがフリーランスの醍醐味のひとつであり、あるときその事実に気づくことができました。
そして、無頓着だったお金との距離を縮めることをしました。お金を大切に扱う。財布のなかも整理するようになりましたし、お札の方向を揃え、使うときは惜しみなく、迎え入れるときは歓迎する。
そして、自分のギャランティの基準表を作りました。これくらいの仕事ならこれくらいの対価と決める。条件に合わないなら交渉すること。いずれにしても納得して仕事を始めること。
「本当はこのくらいのギャランティでお仕事をしたいけれど、言えない」みたいな気持ちで仕事を受けてしまうと、どこかでほんの少し手を抜いたり、後回しにする可能性が生まれてしまう気がします。自分にとってもクライアントにとっても失礼な結果になることがあるのです。だからそこは妥協せず、場合によってはお断りすると決めました。すると、本当にモヤモヤすることがなくなりました。
自分の持つエネルギーをどう使うのか
今の私は、かつてよりもお金と親しくなった意識があります。そして思います、お金はエネルギーだと。エネルギーとは、人の気持ちであったり、物質であったり、時間であったりします。それらと同じ価値を持つのがお金だなぁと思うんです。
この考え方に基づくと、たとえば想定よりギャランティが少なくても、ずっとやりたかった仕事だったり、自分のキャリアの助けになるようなものなら、そこには別の価値(エネルギー)が存在するということになります。
「お金」+αで総合的なエネルギー量を見て、見合うかどうかを判断すればいいのだと整理でき、自分のなかでストンと腑に落ちます。
「お金にがめつい」とか「金の亡者」なんて言葉もあるように、お金は何か汚いもの、競争社会の象徴、経済を回す得体の知れないもの、と思われることがあるかもしれません。お金は人の気持ちを狂わせることもあるものだと思います。
ですが、お金そのものに呪いや恐怖が付随しているわけではなく、お金は川を流れる水のようなものであって(流れかた次第で災害にも恩恵にもなる)、むしろ敬意を払う対象なのではないかと思います。
大切なのはどう取り扱うか、なのだと思います。そしてそれは人の気持ちや、さまざまな物質や、時間などをどう取り扱うのか、ということとまったく同じことなのではないかな、と。そのエネルギーを何に使うのか。世の中のためにどう使うのか、使うことができるのか。
お金を多く稼げる人、あるいは多く所有している人は、それだけ大きなエネルギーを扱える場所にいるということであり、ある意味では「お金はまったくないけど、時間だけはたっぷりある」という人と近いのではないでしょうか。自分の持つエネルギーを使って、世の中にどんなビジョンを描くのか。世の中のよい循環のために使うことで、個人にもいいリターンがあるのではないかと思っています。
人は、エネルギーの交流をもって成長したり、幸福を感じたりできる生き物です。自分と世の中の幸福のために、よいエネルギーを循環させていきたいものです。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
AYANAさんに参加してもらい開発した
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