【ただいま、ワタシ時間】前編:夏希とは似たもの同士。『ひとりごとエプロン』松本妃代さんインタビュー
ライター 小野民
料理と音楽をテーマに、ひとり暮らしの団地を舞台にお届けしているオリジナルドラマ「ひとりごとエプロン」。
2年前にシーズン1が公開され、先日ファイナルシーズンを迎え、YouTubeでも公開されました。みなさま、ご覧いただけましたでしょうか?
観終わってみると、夏希がこの2年でちゃんと年月を重ねていた手触りに、心がほわっと温かくなりました。
今回は、シリーズとしては一旦一区切りを迎えたタイミングで、ドラマ唯一の登場人物である松本妃代さんにインタビュー。
「夏希ちゃんに出会えてよかった」と語る松本さんにとって、『ひとりごとエプロン』はどんな作品なのでしょう。 自身の2年も振り返りながら、夏希との出会いからの年月を振り返ってくれました。
「素敵」だけじゃない主人公に、ひそかに共感しながら演じていました
取材日に、春の空気をまとってふわりとやってきた松本さん。袖口のシャーリングのかわいさに心ときめいていたら、「こうした方がかわいいかなと思って、自分で縫ったんですよ」と教えてくれました。
そういえば、『ひとりごとエプロン』の中の夏希も、縫い物をしているシーンがあったっけ。以前ゲストで登場した当店のラジオ『チャポンと行こう!』で「夏希とは共通点もあって、自然体で演じられる」と語っていたことを思い出し、まずは共通点について聞いてみました。
松本さん:
「台本を読む前は、『ひとりごとエプロン』は、ていねいな暮らしを描くイメージを持っていたんです。でも台本を読んで、演じていくうちに感じたのは、『頑張れるときもそうじゃないときもあるけど、好きなことや熱意を持つことが、心を回復させるヒントになる』というメッセージ。
ちょっと弱った人にも寄り添うドラマで、夏希ちゃんも常にポジティブなだけではない。だからきれいに演じるというよりは、自分の素に近い表情やしぐさを出していきたいと思えました」
松本さん:
「夏希は、ベッドやソファの上に服を広げたまま出かけたり、雨の日に革靴で出かけちゃったり、もう何もできないくらいに疲れて帰って来たり……。そういう姿はリアルだと思うし、私もよくあることなので共感します」
たしかに、「私のお城」と呼ぶ団地の一室で暮らす夏希は、失敗をして心を乱すこともあるし、とびきりおいしそうに頬張る料理のつくり方や食べ方も、「お行儀がいい」とはちょっと違います。
▲シーズン1 第3話『思い立った朝の、豆乳お味噌汁』より
わたしも、夏希の部屋に影響されて…
▲シーズン1 第2話『千切り野菜の、春だけじゃない春巻』より
松本さん:
「夏希との共通点といえば、結構部屋も似ているんです。夏希の窓辺には、お気に入りのクロスがかけてありますが、私の部屋の窓辺にも自分が好きな布をつけて、そこに海外で買ったポストカードを飾っているんですよ。
部屋の中にも、個性的な雑貨を結構置いていて、そんなところも似ているかも。
それに、料理シーンを演じながらキッチンカウンターがすごく便利だなと感じていて、DIYでつくってみたんですよ。友達が遊びに来たときには『ここで撮影したの?』って言われます(笑)」
話を聞くうちにどんどん混ざり合っていく、松本さんと夏希の姿。「ここは違う」という点もあったのでしょうか。
▲シーズン2第5話『うしろめたさたっぷりトマトうどん』より
松本さん:
「うーん、そうですねぇ。シーズン2、第5話は真夜中にゲームをするんですが、実は私、普段ゲームを一切しないんですよ。友達にどういう感じでコントローラーを持てばいいのか聞いて挑みましたが、ちょっとぎこちなかったかな? と心配です。
難しかったのと同時に、夜更かししてゲームをして、カロリーたっぷりのものを食べる姿を見せちゃうのも、このドラマのいいところ。
ちゃんとしたいと思いつつも、抗えない誘惑と折り合いをつけながらなんとかやっていく。そんな日もあるよねと共感するし、観ている人も励まされるシーンになっているのではないでしょうか」
シーズン2は、夏希らしい「家時間」の過ごし方
シーズン2の公開は2020年の9月。家で過ごす時間が多くなった人も多い時期で、作品に向かう気持ちにも変化があったといいます。
松本さん:
「夏希をどう演じようか考えるというより、世の中の人に寄り添ったものができたらいいな、という気持ちでした。
私自身もそうですが、少し息が詰まりがちな日々だったので、『ひとりごとエプロン』を観る時間が、1日のちょっとした楽しみになったらいいな、と。
だからといってポジティブなメッセージを届けたいというわけではなくて、家の中でもいろんな楽しみ方があると感じるストーリーが多かったと思います」
たしかにシーズン2では、部屋を整理したり、旅先を思い出して料理をつくったり、夏希がこよなく愛する部屋で繰り広げられるドラマだからこそ、家のなかで楽しみ、思いを膨らませることへの発見がありました。
ちょうどその頃、松本さん自身は何をして過ごしていたのでしょう。
松本さん:
「友達が誕生日プレゼントに鋳物の鍋を贈ってくれたタイミングで、その鍋でつくる料理のレパートリーを増やしていました。
時間があったので、パンを発酵させて、焼いて、なんてこともしてましたね。もちもちのカンパーニュが焼けて、なかなかおいしいんです。材料が余らないようにどんどんつくってたら、一時期は家がパンだらけになっちゃいましたが(笑)」
定番料理になったお気に入りのレシピとは?
松本さんは、夏希を演じる前から料理好きだそうですが、ドラマを通してレパートリーが増えたそうです。
松本さん:
「シーズン1から3まで通して、どの料理も疲労困憊で帰ってきてもつくれるようなシンプルさが魅力でした。
おなじみのメニューでも素材の組み合わせが意外だったり、想像以上に簡単で驚いたり。つくってみるとどれもとびきりおいしくって。つくるのが楽しくなる料理ばかりでしたね。
たとえば、1人暮らしで揚げ物はめんどくさいと思っていたけれど、鶏胸肉を少しの油で揚げるレシピは、あっさりしていておいしくて、唐揚げのハードルもぐんと下がりました」
▲シーズン2 第8話『とっておきのわたしの唐揚げ』より
▲シーズン1 第2話『千切り野菜の、春だけじゃない春巻』より。千切り好きな夏希役のオーディションで、松本さんは大勢のスタッフが見つめる中での千切りを経験したそう
松本さん:
「登場した料理の中でも、千切り野菜の春巻きはすごくよくつくっていて、もはや私の定番料理です。家にある野菜なんでも組み合わせればおいしいし、本当におすすめのレシピです」
2年前の「夏希との出会い」から振り返ってくれた松本さん。『ひとりごとエプロン』さながらのくるくると変わるチャーミングな表情に見とれていたら、あっという間に時間が過ぎていきました。
続く後編では、先日公開されたシーズン3のお話を中心に。満開の桜と共にお届けしたファイナルシーズンでは、どうやら夏希にも変化があったよう。ドラマの主人公と共に2つ歳を重ねた松本さんの近況もうかがいます。
(つづく)
ファイナルシーズンはYouTubeで公開中です
ファイナルシーズンは全4話。 どうぞお楽しみください。
9話 :公開中 https://youtu.be/YpXWkE9h2ko
10話:公開中 https://youtu.be/z0v-9K76M-k
11話 :公開中 https://youtu.be/ceSORfIh1bc
12話:公開中 https://youtu.be/4o02Ike1NPA
公式プレイリストができました!
ドラマに欠かせない要素である音楽を、ぎゅっとひとまとめにした公式プレイリストもできました。ぜひこちらもお楽しみください。
【写真】鍵岡龍門
【ヘアメイク】藤原リカ
松本妃代
1995年、兵庫県生まれ。「北欧、暮らしの道具店」のドラマ「ひとりごとエプロン」に主演。ドラマ「おちょやん」「やんごとなき一族」などに
出演し、その他映画や舞台などでも活躍中。近年、絵画アーティストとしての活動も精力的に行なっている。
・オフィシャルサイト
・Instagram:@kiyomatsumoto
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