【余白のある家】02:うつわ好きだからこそ奥行きのない食器棚を。めざすは「寮の台所」みたいなキッチン
編集スタッフ 藤波
街と自然、どちらも満遍なく楽しめる住まいはどんなふうだろうとよく考えます。
東京・八王子市の築50年の賃貸一軒家に住む金子朋子(かねこ ともこ)さん、哲也(てつや)さんのご自宅は、そんな暮らしをちょうどよく叶えた家でした。
第1話では、ゼロからはじめたDIYや家庭菜園についてお話を伺いました。第2話ではキッチンとリビングについて詳しくご紹介します。
「寮の台所」みたいに気さくなキッチン
5年前に越してきてから、それぞれの部屋のインテリアの担当をゆるやかに決めているというおふたり。
哲也さん担当の客間に続いて、朋子さんが担当というキッチンにやってきました。広々として使いやすそうなシステムキッチンにはたくさんの調理道具が吊り下げられ、見せる収納が多い印象です。
朋子さん:
「こんな広いキッチンのある家に住んだのは初めてですが、ふたりで立つことが多いのでこのくらいあるとやっぱり便利です。
目指しているのは、『寮の台所』みたいに気さくなキッチン。家族や友人が遊びに来たときに自由に使ってもらいたくて、普段使うものは全部目に入るところに置いているんです。
実際みんな好きに道具や食器を使ってくれていて、勝手に棚から鍋を出して揚げ物をはじめる人がいたりも。そうやって遠慮せずに使ってもらえるくらいがこちらも気楽でいいですね」
朋子さん:
「ちゃんとしたダイニングテーブルも別にあるけれど、ふたりでご飯を食べるときはキッチンで作ってそのままこのカウンターテーブルで食べてしまうことも多いです。
ほかにも、収穫したにんにくの葉っぱや紫蘇の実をとったり、枝豆をひと房ずつ枝から外したり、夕食の後にお酒を飲みながら地味な内職仕事をするのもこのテーブル。
そう考えると家の中でかなり長い時間を過ごす場所かもしれません」
▲中央の食器棚は『仁平古家具店』で購入。右隣は食器棚と高さ・幅をぴったり合わせた哲也さんお手製のラック
哲也さん:
「黙々と作業するその時間が意外といいんですよね。自分たちの食べるものを採ってきて、その下ごしらえを家族でやる。
昔の百姓の生活ってこんな感じだったのかなと勝手に想像したりしています。
キッチンの吊り戸棚は元々黒かったのですが、少しでも印象を明るくしたくて自分たちで白に塗り替えました。細かいところを少しずつアップデートしながら付き合っています」
吊り下げ収納には理由があって……
朋子さん:
「こんなにどこもかしこも道具を吊り下げるようになったのは、実は引っ越してきた年の失敗がきっかけで。
当初は備え付けの棚に収納していたのですが、梅雨時期に窓を開けっぱなしにして過ごしていたところ見事に木製の道具たちがカビてしまったんです。
北向きのキッチンで日の光が入りづらく、近くに川もあるので、より湿気が溜まる条件が揃ってしまったんでしょうね。大事にしていた道具をだめにしてしまったことが悲しくて、そこから必死になって外にぶら下げはじめました(笑)」
朋子さん:
「次の年からは雨が降ったら窓をきちんと閉めて、除湿機も導入して。それからはカビの被害に遭わずに過ごせていますが、慣れてしまうとこの全部吊り下げ方式がすごく使いやすいです。
道具だけでなく、スパイスや出汁用の昆布・椎茸といった調味料もなるべくガラス瓶に入れて見えるところに保管するようにしています。しまい込むとどうしても存在を忘れて使いきれないことがあるので。
北向きで日中薄暗いのは少し残念だけど、逆に日がさんさんと入る方角だったら今の保存方法は難しかったと思うんですよね。そんなところも全部ひっくるめてこのキッチンが好きです」
器好きだから、増やしすぎないようにしています
朋子さん:
「そういえば、食器棚を選ぶときも似たようなことを考えました。奥行きがありすぎると食器がどんどん増えたり、重ねすぎて使う出番が全然ないものがきっと出てくるなと思ったので、あえて奥行きは20cmほどのものに。
食器が好きだからこそ、この棚に入る分だけと決めて意識的に増やさないようにしているかもしれません。お酒が好きなので、ビールグラスとかはつい増えすぎちゃうんですけどね。
棚の上のスペースは学生の頃から集めてきた雑貨やオブジェの中でも特に大事にしているものたちの定位置。飾り方に特にルールはありませんが、その時々のお気に入りを思いっきり飾ろうと決めています」
▲左手前から反時計回りに、ルーマニアの陶器、加地学さん(手前と奥の小さめの椀)、井山三希子さん(白いプレート)、山岸厚夫さん(赤と黒の漆器)の作品
▲大きな木のボウル:前田洋さん
朋子さん:
「大きくて割れにくいお椀や、土を感じるような作家さんの器が特に好きです。庭で大量の野菜が採れるので、サラダでも炒め物でもなんでもとにかくよく食べます。
小鉢はあまり使わず大皿にドバッと盛って、そこから各々食べるスタイルが定番。そんなわんぱくなところもどこか寮みたいですね」
雑貨は、メリハリをつけて好きに飾る
▲ダイニングテーブル:『仁平古家具店』、白い椅子『秋田木工』、奥の椅子『レットエムイン』
キッチンの先、こぢんまりとした窓側のスペースがダイニングです。
哲也さん:
「ダイニングテーブルは、学生時代に図工室にあったような丈夫で無骨な佇まいに惹かれて購入しました。恐らく何かの作業台をリメイクしたもの。
長く使うものだからこそ、ある意味雑に扱える方が良かったんです。友人たちが来たときはここで食卓を囲みます。
家中どこでも音楽を聴けたらいいなと思って、このちいさな部屋にオーディオ環境を整えているのもこだわりの一つです」
▲キャビネット:『レットエムイン』
▲キッチン〜ダイニングの壁は、毎年の正月休みに少しずつ漆喰を塗っていったそう。湿気も吸ってくれます◎
朋子さん:
「昔から雑貨やテキスタイルが好きでどうしても雑貨やオブジェが増えてしまうのですが、飾る場所とそうでない場所にメリハリをつけたいなと思っています。
玄関、食器棚の上、それからダイニングの鴨居の上が私の中で思いっきり飾ってOKな場所。ほかには特にルールを決めていないけれど、これを意識するだけでも、どこもかしこも飾るより空間に余白が生まれる気がしていて。
旅先で出合った絨毯などのテキスタイルも、部屋を彩るアイテムの一つ。床だけでなく時には壁にも飾って楽しんでいます」
▲朋子さん「いいスペースを見つけるとつい何かを引っ掛けたくなる性分みたいです(笑)」
足を踏み入れた瞬間体温が上がるような眼福のキッチン・ダイニングで感じたのは、隅々に生きるおふたりのモノ選びの視点。
ルールでガチガチに縛らず、余白があるからこそ生まれた心地よい空間が広がっていました。
続く第3話では、この家での暮らしを経て今感じていること、これからのことについてじっくり伺います。
【写真】メグミ
もくじ
金子朋子・金子哲也
東京都八王子市在住。朋子さんはグラフィックやWebデザイン、地域ブランディングなどを手がけるデザイナー、哲也さんは医療従事者。築50年の賃貸の一軒家で家庭菜園やDIYを楽しみながら暮らしている。Instagramは@cnc_ieから。
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