【猫と暮らす日々】前編:元保護猫「こまお」を迎えて4年。OZ VINTAGEの鈴木里美さんに会いにいきました。
日本では約4人にひとりが、犬や猫などの動物と暮らしているそう。かくいう私も、動物保護団体から迎えいれた猫と生活していますし、これから動物と過ごす時間を持ちたいと考えている人も、おられるのでは?
特集【猫と暮らす日々】では、ともに暮らす猫のこと、家族、仕事、暮らしなどに起きた変化についてお聞きすべく、ヴィンテージショップ「OZ VINTAGE(オズ ヴィンテージ)」のオーナー兼バイヤー・鈴木里美(すずき・さとみ)さん宅を訪ねました。
鈴木さんは、元保護猫・こまおさんとの暮らしぶりがSNSでも評判です。前編では、猫を飼うことになったきっかけ、迎え入れた当初のこまおさんのことを中心に伺います。
子どもの頃から動物が好きでした。
鈴木さんは、都内でパートナーと8歳の元保護猫・こまおさんと暮らしています。こまおさんを動物保護団体から迎え入れたのは4年前のこと。それまでも動物と暮らしていたのでしょうか。
鈴木さん:
「もともと生き物が好きで、子どもの頃はおたまじゃくしを大量に孵化させて母を絶叫させたり、ザリガニを釣ってきたり、本や物語も動物に関するものにばかり触れていました。昔は今より野良犬も多かったので、2歳上の姉か私のどちらかが子犬を連れて帰ってきて、両親に泣いて頼んで飼わせてもらい、家にはずっと犬がいました」
鈴木さん:
「服飾系の専門学校を卒業し、働くようになってひとり暮らしを始めてからは、仕事がとにかく忙しくて……。都内のヴィンテージショップに10年ほど勤めていた間は、動物と暮らすことは全く考えられませんでした。
実家で飼っていた犬の最期をきちんと看取れなかったことへの後悔も抱えていました。実家を出ていたから仕方なかったのですけれど、私に動物を飼う資格があるのかな、と。
ですから20代、30代は、散歩している犬を見かけたら触らせてもらったり、SNSで犬や猫をフォローしたり。動物との暮らしは憧れでしかありませんでした」
コロナ禍で動物との暮らしが現実に。
転機になったのは、8年前に越してきた現在の住まいがペット可物件だったこと。たまたまだったそうですが、そうなると動物と暮らしたくなるもの。
鈴木さん:
「彼に、口を開けば『動物と暮らしたい』と言っていたのですが、買い付けのために出張することも多かったので、言うだけという状態が続いていました。
独立して始めた出店型のショップ『FUROL』から、実店舗へと移行した時期と重なっていたこともあり、やっぱり仕事に忙殺される日々が続き、またそれが当たり前だとも思っていました」
鈴木さん:
「動物と暮らすことを真剣に考えるようになったのは、コロナ禍で家にいる時間が増えたときに、近しい人たちから背中を押されたことが大きかったです。
猫と生活したことがあった彼も一緒に前向きに考えてくれましたし、私をよく知る友人にも『あなたは動物と暮らすべき』と断言され、踏み出す勇気をもらいました。
以前、保護動物について調べ、ささやかながら寄付をしたり物資を送ったりしていたんです。その現状を知れば知るほど、1匹でも迎えることができたら、その子にとって今より良い暮らしを提供してあげられるのは間違いないと考えるようになっていました」
希望者が少ない猫と決めていました。
そう決めたら、すぐにふだんから見ていた保護動物のサイトを開き、パートナーと考えを共有する日々が始まりました。
鈴木さん:
「保護団体から猫を迎えようとする方は、子猫を希望することが多いようなんですね。私は最初から、成猫や老猫、ハンディキャップのある猫など希望者が少なそうな猫をと考えていました。
そうしていろいろ見ていた中に、こまおがいたんです。4歳の成猫で、すごく体が大きそうなのに怯えたような表情が印象的でした。説明を読むと、ブリーダーのところで繁殖用として飼われていたスコティッュフォールドで、おそらくかわいがられてきてはいないのだろうと想像してしまいました。
片目が開かないような状態で、それも治療したら良くなるかもしれないのにと思ったら、もういてもたってもいられませんでした」
保護団体は、岡山県にありました。2020年の夏だったため、緊急事態宣言が発令されるなど気軽に会いに行くことができない状態。こまおさんへの申し込みはメールでのやりとりが中心でした。
鈴木さん:
「保護団体によっては、譲渡の条件がものすごく厳しいんです。留守がちなことはマイナスポイントかもしれないので、熱心に履歴書のようなものを送り、怪しいものではないということをわかってもらうためにインスタグラムアカウントなども知らせたり。
熱意が通じたのか、『普通の生活を送れるだけで、こまおにとっては今よりずいぶん幸せになれると考えています』と言っていただけました」
巨大でマッチョにびっくり。
コロナ禍だったこともあり、岡山県ではなく、保護団体が提携していた東京の動物病院に迎えに行きました。1度も会ったことがない猫を引き取ることに、不安はなかったのでしょうか。
鈴木さん:
「一般的にはお試し期間のようなものもあるようですが、基本的には何があっても最後まで面倒を見るつもりで迎え入れました。先住猫などがいたら相性の問題などもあるかもしれませんが、こまおだけでしたし。
慣れてくれなかったらどうしようとは思いましたけれど、そういうこともあるだろうな、と。お膝に乗ってくれたりというのは憧れではありましたけれど、そうならなくても、全然いいなと思っていました」
鈴木さん:
「こまおに自由を与えてあげられればいいし、健康に過ごしてくれれば、それだけで十分。別にこうしてほしいとか、こうだったらいいなという期待は持たずに迎えました」
診察台に乗せられたキャリーの中にいるこまおさんと対面したところ……。
鈴木さん:
「思わず『デカッ』と声が出るくらい、大きかったですね。5.5キロと聞いていたので予想はしていましたが、それ以上。去勢もしていなかったので、すごくマッチョで顔もパンパン。こまおの入った猫用のキャリーケースを手に、『重い、重い』と笑いながら帰宅したことはとても良い思い出です」
譲渡後、すぐに去勢手術をする予定でしたが、お腹に虫がいてできなかったそう。そうこうするうちに、発情期が来てしまい……。
鈴木さん:
「夜鳴きがすごくて……。私か彼のどちらかがリビングにいないと鳴きっぱなしという時期がありました。
スプレーといって、おしっこでのマーキング行動も1、2回やられました。羽毛布団を買い換えることになりましたけれど、こまおが一番辛かったと思うので、買い直すくらいどうということもなかったです」
猫らしさはあまりなかったけれど。
猫といえば、家具で爪研ぎをしたり、高いところにのぼってはものを落としたり、といった行動がありがちですが……。
鈴木さん:
「猫としてはちょっと珍しいかもしれませんが、こまおは高いところにも登らないし、物を落としたりもしないんです。
インスタグラムでよく見ていたような、ダンボールや袋に入るということもないですし、キャットタワーも買わずに済みました。
つい犬と比べてしまうんですけれど、犬は全力でコミュニケーションを取り感情がまっすぐで、何を考えているのか手に取るようにわかりました。
ところが猫はちっともわからない。でもすごく不思議な可愛いさがある、噂に聞いていたとおりだ!と思いました」
鈴木さん:
「じつはこまおを迎えてわりとすぐに、父を亡くしたんです。末期がんだったのですが、病院と仕事場と自宅を行ったり来たりする期間が数か月続いていました。
覚悟はできていましたが、終わっていく命と向き合う日々は、さまざまな感情が生まれ、憂いを感じざるを得ませんでした。
帰宅したときにこまおがいてくれることで、家がとても暖かく感じて、そのときもその後も、存在に救われました」
人間のことは嫌いではなさそうだけれど、ちょっとした音でビクッとするほど臆病。抱っこもできない状態から、徐々に慣れてきたこまおさん。
続く後編では、こまおさんとの暮らしで変化したパートナーシップや仕事への向き合い方などを伺います。
(つづく)
【写真】井手勇貴
もくじ
第1話(9月2日)
元保護猫「こまお」を迎えて4年。OZ VINTAGEの鈴木里美さんに会いにいきました。
第2話(9月3日)
「こまおがいるから早く家に帰りたい」と思うようになりました(OZ VINTAGE 鈴木里美さん)

鈴木 里美
OZ VINTAGE オーナー。都内のヴィンテージショップで10年以上勤務したのち、出店型のショップ「FUROL」をスタート。2018年に渋谷にて「OZ VINTAGE」をオープン。買い付けから接客までひとりで行っている。
Instagram:
@oz.vintage
Instagram:
@komakomakomao
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