【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと。no.14:ラトビアの文様をお守りに
耳元で揺れる星が、五十嵐さんの旅のお守りです。
ラトビアの民芸市で見つけた、白樺で編んだ素朴な星のイヤリング。バルト三国やスウェーデンへと旅する買い付けの間、ずっと身に着けていました。
するとたびたび、「そのイヤリング、いいね!」と声をかけてもらえるのです。
「すてきね」という一言で、互いが笑顔になります。「わたしも昔、おばあさんにその模様が入った手袋を編んでもらったわ」と、そこからコミュニケーションが広がることもありました。
やがてこれが「明けの明星」を示す伝統文様なのだと知りました。
明けの明星は、夜明け前、東の空に輝く金星のこと。美しい朝の訪れを待つこの星は、ラトビアでは「光が闇に打ち勝つ、悪しきものから身を守る」という意味や願いを込めた象徴だといいます。五十嵐さんは、ますますこの素朴な星が愛おしくなりました。
ラトビアに古くから伝わる文様はさまざまにあります。家族のしあわせ、新しい季節の祝福や健康への願い、自然の恵みへの感謝。それは、いつの時代も変わりません。
さらに興味深いのは、若いクリエイターも文様をリスペクトしていることでした。手編みの靴下や手袋、手織りのバッグやラグなど、北欧らしいモダンデザインにも文様が積極的に取り入れられています。
ある作家を訪ねたときのことです。「ラトビアと日本は根っこのところが似ているね」と言われ、五十嵐さんはおどろきました。
自然豊かなラトビアでは、太陽や月、雨や風、動物、植物など自然界のすべてのものに神が宿ると信じられてきました。そういえば日本でも、「やおよろずの神」という考えがいまも根付いています。
人、自然、周囲とのかかわり。自分を取り巻くあらゆるものに感謝をし、願いを込める。ラトビアでは、その思いを手仕事に託し、人から人へ繋いできました。
文様をかたどったガラスのオーナメント、祈るようにつくる織物や編み物、そしてこのイヤリング。美しさの奥にある作り手の思いに触れるたびに、パワーがこちらにも伝わるようで、いっそう愛おしく感じるのです。
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Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto

五十嵐 綾
鎌倉にある雑貨店moln(モルン)の店主。洋服、陶器、紙雑貨などを、アンティークから作家さんの作品まで幅広く取り扱う。作家さんによる展示会、月1〜2回ほど音楽と本のイベント「貸切り図書館」、ワークショップなども開催している。
HP:
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